「…リウム?どうだ?」
「………………」
リウムの意識がなくなってから、およそ半日。ベッドで眠るリウムからは、まだ目を覚ます兆しは見られない。
「……ん………」
リウムは苦しそうに眉をひそめ、顔を背ける。悪い夢でも見ているのだろうか?その顔には悲痛の表情が見て取れた。リウムの動きに応じてつつ…と、額に浮かんだ脂汗が、赤く染まった頬を伝っていく。
リッチという種族の関係で、元から死人のように青ざめた肌を持つリウムだが、今日はその域を大きく外れていた。体はさらに青白く、首から上だけは酷く熱を持っていて、赤くなっていた。ハアハと吐き出される息も熱く、その息をすることさえ、苦しげだった。
「…リウム」
額の汗を拭き、濡れたタオルをかぶせてやる。
悔しかった。
自分の目の前で、自分が最も大切にすると誓った相手が、苦しんでいる。それなのに、俺にできることはこれだけだということに、やり場のない怒りがこみ上げる。
……告白だってしていなかったのに。先程そのことを考えていただけに、余計胸が締め付けられる。
「急に……どうして?」
こればっかりはまるで見当がつかない。リウムの研究の手伝いをしている最中は、わからないことはリウムに聞けば、適格な答えが返ってきた。しかし、今はそのリウムが床に伏している状態だ。聞けるわけがない。
ぎゅっ
今の俺には、こうやってリウムの手を握り、そばに寄り添ってやるのが精一杯だ。
「……クソッ」
畜生!畜生!心の中で悪態をつく。泣きそうだ。自分の無力さに情けなくなる。リウムのいない俺なんてこんなもんか。空いている手をギュッと、強く握りしめる。
その時、その手に何かが触れた。
「………ルー?」
「!?リウムっ!」
リウムだ。リウムの手が、俺の拳を包んでいた。小さくて、冷たくて、今にも折れそうな手だった。その手が俺をその手が俺をつかんでいる。なんて冷たいんだ!本当に死人にでもなってしまったような、ぞっとする冷たさだ。
「…リウム?」
「…………」
リウムはなにも言わなかった。微かに唇を震わせ、俺を見上げるだけ。そして俺に微笑みかける。その間も握った手は離さない。弱々しい細腕からは想像もできないほど、ぎゅっと、握ってくる。
「リウム」
握った手に、俺の空いた手を被せ、リウムの手をつつみこむ。
「大丈夫、な?」
リウムから、返事はない。代わりにその小さな頭がこくりと傾けられた。
「俺が何とかしてやる」
「………………」
「だから、もう少し頑張れ」
優しく頭を撫でてやる。手でも何処でもいい。少しでもリウムに触れていたかった。
リウムは気持ち良さそうに目を細める。俺は、リウムが再び眠り込むまで、頭を撫でていた。
………………
さて、どうする?このままだとリウムが危ない。魔物であるリウムが、病気などにかかるはずがない。これは恐らく精神的なものだ。例えば…呪いみたいな。
「でも、そんなはずはない」
生前から、リウムはほとんど外に出ることなく生活してきたらしい。そんなリウムが誰かから怒りを買うことがあるのか?絶対無いと言ってしまっていいだろう。
「じゃあ、誰が?」
研究仲間か?それも有り得ないだろうな。彼らが行方不明になってから、もうかなりの時間が経過している。未だに生きていたとしても、相当なシジババになっちまってる。
そんな状態で呪いを持続させるなんて、生粋の魔女なんかじゃないと難しい…と思う…多分。リウムから聞いた話が正しいとするなら、だけど。
「打つ手なし……か」
もう既に手詰まり状態だ。こんなことになるなら、リウムからもっと医学を勉強しておけばよかった。後悔と無力感で、体が重くなる。どうしたらいいんだ?
「……あっつ……」
気がつくと、体中が汗でベトベトだ。昨日リウムが倒れてから今まで、風呂に入っていなかった。
「……入るか」
もう少し落ち着いて考えよう。そう思った俺は、頭を冷やすのも兼ねて水汲み場へ向かった。
………………
バシャッと冷水を頭からかぶる。地下水の冷たさは今もまだなれることはなく、水をかぶった俺の体は、自分の意志に逆らうようにがたがたと震えだした。ここは水汲み場兼シャワールーム。シャワールームといっても豪華なんてものからは程遠い。もう使われなくなった古い井戸に横穴を通して、水を取り込んでいるのだ。ただでさえひんやりとした空間が、水のおかげで余計に寒々しさを感じる。
バシャッ
「……ッツ!!」
もう一度、桶に水を貯め、かぶる。冷たいというよりも痛い、に近いな。ジパ
ングとかいう島国には流水に打たれることで精神を鍛える訓練があるとか聞いたことがある。……実に納得がいった。これはすごい。
「………っはあ…っはあ…」
どこを見るわけ
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