婿入り.異世界ver

 ブラックに近いグレーな会社に勤めて早三年。週休二日なにそれおいしいの? とまぁ、そんな言葉が当たり前になる生活を続けていれば、心が疲れるのも当然なわけだ。
 そんな現代社会の闇に揉まれた疲労困憊な俺にとって、ネットサーフィンはその疲れを癒す優秀なコンテンツ。エロ、経済、政治、エロ、萌え、動物、エロと何をやらせても大活躍なオールラウンダー的存在である。
 いま俺はネットサーフィンならぬエロサーフィンをしていて、その対象はもっぱら二次元。電子の海をかき分け、お宝である0と1の集合体を前にして俺は、アヘ顔よりも酷い発禁顔を画面の前に晒しながら悶えているわけだ。

「ええなあ。ロリ巨乳は・・・・」

 画面の中では二次元美少女が、ビキニ姿で雪の中、小柄な身体のわりにこれでもかと自己主張する豊満な胸部を突き出して可愛いくポーズをとっている。いちいち指摘したがるやつは、季節感おかしくねとか身体のバランスおかしくねとかさんざん言うが、そんなことはどうでもいい。考えるのではなく感じるのだ。
 あぁ、癒されていく。俺の五臓六腑に染み渡るほどの暖かい何か。義務教育では教えてくれなかったのは確かだ。
 ちなみに言っておくとロリは好きだが、性的にというわけではない。俺自体はNOタッチの紳士である。というか普通に可愛いという感情しか浮かばない。
 しかしそれに巨乳が加わってロリ巨乳となってしまうと、俺はもうなんだか様々なリビドーが沸き上がってきてしまうのだ。まぁ一言で言えば巨乳好きってわけです。

 そんな二次元に傾倒している俺だが、別に三次元は嫌いではない。
 が、結局のところテレビに出るような美女達は、それ相応の努力をしなくては会うことすら叶わないのだ。この努力というのは金だったり、勉学だったり、果ては運だったりと安定しない。
 そして俺みたいな普通の人間が付き合えるのは、失礼な言い方だが、近くにいる手頃な女、ということになるのだろう。しかし俺は、女に対して口下手というべきか、女との会話より男友達とアホみたいな話してた方が面白いと思う性質だったというべきか、とりあえずそんなので中学高校とチャンスを逃していった。まぁ、目を見張るほどの巨乳がいなかったのも原因の一つだろう。
 高校出てから働いている会社では女っ気など存在せず、いたとしても噂話が好きそうな、旬を二周りくらい過ぎた掃除のオバチャンくらいだ。
 もともとオタクでもあった俺は、不細工やそこそこの女に金を使うくらいなら二次元の美少女に使うという生活を続けていたのである。

 そういうわけで毎日チェックしているロリ巨乳スレを徘徊していると、見慣れない広告が目に入った。

「なんだこれ」

 見たことのない文字。明らかに日本語ではなく、象形文字ともラテン語とも言えない、不思議な文字だ。もしかしたら文字ではないかもしれない。
 妙に気になった俺は軽い気持ちで、変なのだったら即ブラウザバックすりゃいいや、くらいに思いながらURLを踏んだ。

「うわっ!」

 突然画面全体に、でかい丸の中に六角形のようなものを描いた図形が現れる。それはディスプレイでは不可能なほどの青白い光を放ち、一瞬思考が情報を得るのを頓挫した。
 一コンマ、あるいは数秒かで我に返って、新手のウィルス踏んじまった? と思わず口に出しながら、咄嗟にディスプレイの横を右手で掴む。

「マジかよ・・・・」

 ノートン先生仕事しろ! と決して安くないセキュリティソフトに愚痴をこぼしながらディスプレイから右手を離そうとして、逆に、右手がずぶずぶと徐々に飲み込まれていくことに気づく。

「・・・・貞子!?」

 いや、貞子は出てくるほうだ、と心の中で自分にツッコミを入れながらも、俺の体は明らかに自分より小さいディスプレイに飲み込まれていった。

 

「・・・・で・・・・きた・・・・・・のよう・・・・・・愚かにして愛おしい人間よ、我、オリーシアの元へと顕現せよ!」

「おお、会長それっぽい! 魔法陣光ってる、無駄エフェクト!」
「雄呼ぶ、くらいなら成功するかもだけどー。人間何て出てくるわけないじゃーん」
「誰かつまみないから買ってきてー」

 俺がディスプレイに呑まれてすぐ、出てきた先は宴会場のようだった。あきらかな幼女が酒瓶片手に飲んでいる。幼女が酒飲んじゃだめだろ・・・・。

 ていうか、なんだこれ。

「あははー、やっぱり失敗だったのう。まぁこのようなことで人間来たら、誰も苦労し、な・・・・」

「え、つか魔法陣の上に誰かいるんだけど」
「ほ、ほんとに人間ー?」
「嘘でしょ!?」

 幼女達が一斉にこちらを見る。その目鼻立ちはやけにレベルが高く、とても可愛らしい。コスプレなのかハロウィンなのかはわからないが、顔がアレな人が付けたら相当痛い
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