「…日差しが強いな」
空を見つめながら黒いフードを被った女性がつぶやく。時折覗く瞳は、見ているだけで吸い込まれそうな真っ赤な色をしている。所謂ヴァンパイアと言う魔物だ。
「シャーラ、無理はせず休んだほうが良くない?僕もう疲れちゃったよ。第一昨日の夜から歩きっぱなしじゃないか」
「だらしないな貴様は!こんなにも日が真上にきてるのに私はがんばって歩を進めているだろうが!それにあと少しで村につくだろう、グダグダ言わず黙って歩け」
「いや…あと少しっていつから言ってるんだよ、まだ朝日が昇る頃にその言葉を聞いたはずなんだけど?」
「なら貴様はそこの木陰で休んでいろ、私は先にいくからな」
「えぇ…そりゃないよ〜〜;;ってちょっと待ってって〜!」
先程から文句を垂れている幼さを残す青年は少し前を歩く女性より薄着、そしてひと際目立つ背中の十字架。そのサイズはこの青年には少々大きすぎて、ゆうに身長の約3分の2ほどの物を少し気だるそうに十字架の十字部分に×字で革製のヒモを巻きつけ片手に持っている。
「なんだ休まないのかクロス、私に構わずそこでゆっくりしていればいいのに。…ほれ、見えてきただろう?あそこが目的地のファニース村だ」
「おぉ、やっと見えたぁぁ!しかし真昼間だってのにシャーラは元気だよね、夜明けが来たらてっきり休むと思ってたのに…。」
「他のヴァンパイアとは格が違うなんてことは貴様が良く知っているだろう…。今の私にはうざったいだけだ。それよりさっさと村に着いて休もう。私だって疲れていないわけではないからな」
「ほんとに!?ようやく宿屋でのんびりできるぅ♪」
「全く、目的を忘れるなよ?」
「忘れない忘れない〜♪ベッドにごは〜〜〜ん♪」
嬉しさのあまり十字架をありえないくらいブン回す。知らないものが見ればあの十字架は何か軽い素材でできていると思い込むだろう。ところがどっこい純銀製で、マッチョな男性が二人でやっと持ち上がる重量をなんてことなく持ち上げるクロス。この男、実はシャーラによってインキュバスになっているのである。
「無駄に元気じゃないか…さて、まずは宿屋を探して休むか」
元気を取り戻したクロスに一瞬で近づき握り拳を頭に叩きつけ黙らせた後、ノビたクロスの足を掴み引き摺りながらゆっくりとファニース村へと向かった。
ファニース村には人間と魔物が差別なく共に暮らしている。それなりに活気もあり、この村特有の名物の食べ物も在り、土産に持ち帰る者も多い。
しかし最近になって不穏な事を耳にすることになった。どうも誘拐事件が多発しているのだ。しかも人間も魔物も無差別にされているので被害は相当な物になっているとのこと。こうして訪れてみるとまるでそれを感じさせないが、何件か店が閉まっているのをちらほら見るとあながち唯の作り話ではなさそうだ。現にこの村に観光にきた客達はおくびもせず買い物をしている。
「ハーピィから聞いた噂話だが信憑性が湧いてきたな、一応賑わってはいるが…あくまでこの村の者だけを誘拐している訳か」
「シャ〜ラ〜いい加減引き摺るのをやめてよ〜ぅ」
「…すっかり存在を忘れていたよ、珍しくおとなしかったんでな」
「なんだよぉ〜はしゃいだっていいじゃんよぉ〜」
「おい貴様、私らは観光にきたんじゃないんだぞ?…そういやこの村のはずれにデビルバグの大群がいるそうじゃないか、はしゃぎまくって目的を見失うヤツにはお仕置きが必要だと思わないか?ん?」
「わ、わかったってぇ〜悪かったよぅ…とりあえず宿屋ないの?早く休みたいや…」
「それなら目の前だ、さっさとそのバカでかい十字架を持って宿の手配をしておけ、私は少し村の者から話を聞いてくる」
「わかった、部屋は一応見通しのいい部屋選んでおくねぇ」
「…そういうとこは抜け目ないんだな」
「伊達にシャーラのインキュバスやってないよぉ」
「だったらいつもシャキっとしてろ!しかもよりによっていつも持ち歩くのはその『十字架』ときたもんだ、だから私は一族の中で変わり者とよばれてしまうのだ…」
「夜では後悔させてないよぉ?いっつもあ〜んな可愛い声で鳴いちゃってぇ♪」
「っっっ〜〜〜〜〜貴様!///」
「おぉ怖い怖い♪じゃ、宿屋に先に行ってるねぇ〜!」
「おい!まだ言いたいことが…相変わらず逃げ足の速い…」
帰ったらボッコボコにしてやろうと心に決めて、シャーラは村の商店へと歩いていった。
「こんにちわ〜!」
宿屋に入ったクロスはまだ見ぬ店主を呼ぶ為に声をあげた。
…まったく返事が返ってこない。どこかに出かけているのだろうか、とりあえず待つついでに宿屋からの外の景色を眺めるクロス。うん、眺めは良好だ、と呟きひとまず十字架を椅子代わりにして座り込む。どうや
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