夜明け前、男は出会った。

「もし僕がこの世界でこんな事をしていたらなぁ……」

いつからだろうか、私は確か中学生の頃辺りからゲームで見た「魔物娘」にいたく心を奪われてしまい、魔物娘と人間が仲良く共存している世界に自分が迷いこみ生活する妄想をしていたのだ。

「剣をもったり魔法を使ったりするんだ〜!そうそう、ここでこの行動をして……」

妄想、自分の頭の中で冒険する行為。やはりそれはとても楽しいものであるが、現実世界で生きていかなければその妄想すら出来なくなってしまう。いつしかその頭の中での冒険は白く塗りつぶされてしまった事にも気付かず、その小さな冒険者はどこにでも居る普通の大学生へと成長した。成長してしまった。冒険者にはなれなかったのだ。

「そういやこれ良いよね」

「良き……」

その"元"冒険者だった大学生はある日、友人と何の気なしにだべっていた時に魔物娘の話で盛り上がっていた。大学生ともなると魔物娘スキーはもはや一般性癖である(はずだ)。

暫くの間会話を楽しみながら帰宅。趣味である模型制作に勤しんだ後にその男はふと昼間に友人と話した「魔物娘」について何となく、出来心で、導かれた様にパソコンの前に向かってそのキーワードについて調べたのだった。

「まーもーのーむーすーめ、と。よし。さて画像を見るかWeb漫画を探すか……ん?」

検索エンジンをスクロール、自分の直感を信じて幾年ぶりの魔物娘との(ネット上の)遭遇はどういった形にしようかと内心ウキウキ気分で調べていた男はページの下の方に表示されていた

[覗く]

と書かれたピンクと紫で(心持ち妖艶に)デコレーションされたバナーを見つけた。

「(いーやこれまた懐かしい感じの漂うバナーだこと)」

平成最後の年にもなると個人サイトのバナーを感じさせるそれは中々どうして懐かしさを感じさせるものであり、彼の[折角だから]ポイントを刺激するには十分すぎる結果だった。

「折角だし押すよね〜」

カチリ。

突如、PCのポップアップウィンドウが開いた。

「(やらかした!ウィルスだったか?ブラクラか??ホラーは苦手なんだって!頼むからちょっと工夫を凝らした個人サイトレベルに留まってくれよ〜?)」

不安に苛まれる男を尻目に、ウィンドウの中では黒かった画面がぼんやりと明るくなってきた。

「(ん?何か映像が流れてる感じかな?凝ってるなぁ〜)」

明るくなった画面の中では豪勢な装飾が印象的な大部屋と、その中を歩く[魔物娘]達が居た。

「CGにしては細かいし……野生のプロが作ったサイトか……?おお、魔物娘じゃないの……やっぱり久々に魔物娘の文化に触れるといいねぇ」

映像は切り替わる。

次に映されたのは開けた場所で木剣を手にして打ち合う首の無い騎士とトカゲを擬人化したかのような(可愛い)女性の姿だった。

「剣術の稽古……そういうのもあるのか。いやはや……そう言えば昔はいつもこんな感じの妄想をしてたよなぁ。ゲームに出てくる剣術とか真似したりオリジナルの詠唱を考えたり……」

また映像が切り替わる。

今度は打って変わって薄暗い、だが薄暗さがしっくりと部屋に馴染む洒落た部屋が映された。画面の向こう、ちょうどこちらとビデオ通話をするような位置にはこれまた美しい、下手したら並の美少女イラストでは歯が立たないレベルで[美女]が極まったような(角の生えた)女性が居た。

「(美麗な女性だわぁ……それにしてもCGにしてはリアルだよなぁ。まるでそう、画面の向こう側にそのままいる様な……!)」

その時、画面の向こうの女性が妖艶に、それでいて少女的に微笑んだ。

「楽しめたかしら?」

「(シャベッタァァァ……じゃなーくーて、折角だし返事するのも悪かないね)」

「ええ、とても良かったです」

「そう、それは良かったわ。貴方がこちらに来るのを楽しみにしているわね。うふふふふ……」

沈黙。少しの空白。そして驚愕!

「……え?………ええっ!?」

画面の向こうの女性は、あたかもこちらの様子が丸見えかのように語りかけてきたのだ。これで驚かない方が凄いだろう。

「ありゃま、ウィンドウが閉じちゃった……うーむ、何だったんだろうか……アレは……。」

「(こちらに来るのを楽しみにしているわよ……か。mmorpgの宣伝でもあるまいし……)」

語りかけられた男。普通の大学生になってしまった男。空想上の冒険者だった男。

その名も[好意 雪虎(すくい ゆきとら)]。
実家は普通の一般家庭。
趣味はロボットのプラモデル制作。
ただただ普通の大学生だった彼は、たった今普通では無くなった。

語りかけられてしまった。世界を跨いだコンタクトをとってしま
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