第七章 〜獅子王

「ではここにてお待ちを。」

衛兵に案内され、俺と染射羅様は大きな広間に通された。真ん中にテーブルと呼ばれる巨大な文机のようなものがあり、その周りに大きな床几のようなものが並べられていた。

我ら武神館一行は、かつてのシャガース闘技場、現サラヴェリー国立闘技場にやってきた。シャガース闘技場の頃の規模はそれほどではなかったらしいが、現在では大幅に拡張され、何万人収容できるのか見当もつかないほどの広さだ。今日はここで闘技会が行われる。闘技会といっても、州同士の親睦会といった意味合いが強いと聞いているが....。


「これ一紗、早く妾の隣に座らぬか。」

さっさと床几(イスとか言うらしい)に腰かけた染射羅様が言う。

「しかし、このような公式の場で家臣が同座するなど....。」

「良いのじゃ。ここはジパングではない。早う座れ!」

結局手を引っ張られ隣に座らされた。

「......染射羅様。」

「なんじゃ?」

「お手をお離し下さりませ。もうすぐ叔母上様、いえラシュリーの領主様が見えられるのでは...。」

「ふふ、本当は離したくないくせに。よう言うわ。」

くすくす笑う染射羅様。図星であるが、このままでは困る。

「染射羅様、お頼み申しまする。」

「仕方ないのう。」

朝出発して以来、ようやく手を離してくれた染射羅様。手が寂しくなるが、暫くは我慢だ。

「....?」

ふと脚に違和感を感じた。目をやると、何かが巻きついている。
これは....昨日見たばかりの染射羅様の尻尾だった。

「これならば目立たぬし、良いであろ?」

にっこり可愛く笑う染射羅様。

「い、いけませぬ。これでは余計に目立...」

「お待たせしたわねー!あらーゾイラちゃんしばらくだわね。」

と、屈強な衛兵達を従えた小さな少女がやってきた。

「一紗、立つのじゃ。あの方が妾の叔母上じゃ。」

「は?え...。」


良くお言葉の意味が分からなかったが、とりあえず立ち上がった。この国では挨拶は立って行うらしい。間違っても平伏するなと、染射羅様に出発前に念を押された。思えばこの国に来て以来、ほとんどジパング式の武神館から出なかった俺は、頭の中もコジョウにいた頃とほとんど変わっていないのだ。

「叔母上、ゾイラ・フロスト・サガワにございます。ご無沙汰致しました。」

今まで聞いたこともない丁寧な言葉で挨拶し、お辞儀をする染射羅様。

「もうー。いちいちそんな挨拶要らないわよ。ますます綺麗になったわねー。そ・れ・で、そちらの素敵な方がゾイラちゃんの?」

いたずらっぽい目で俺を見た少女。

「は.....。」

「一紗、挨拶をするのじゃ。この方が妾の叔母上、二ーナ・フロスト様じゃ。」



エッ..........。どう見ても10歳ぐらいの少女にしか見えないのだが...。



ま、まあとにかく挨拶を。

「は、拙者、カズサ・ワタライにござりまする。佐川家の剣術指南役、そして....」

「ゾイラちゃんの許嫁なのよねー。いいなーゾイラちゃん羨ましい。」

「....はっ。」

無礼ながらよくお顔を見ると、染射羅様の顔立ちに似ておられる。髪は赤毛であるが、染射羅様の幼い頃はこのようなお姿.....というかこのお方はおいくつなのだろうか。

「ねえカズサちゃん、少女に興味はないかしら?少女とあんな事やこんな事〜♪興味ない?」

正確に俺の名を発音し、そして唐突に質問を投げかけてきたニーナ様。首を傾げるそのお姿はとても可愛らしい。
と、脚に巻きつく尻尾の締め付けがきつくなった!け、血管が圧迫される....。


「.....ござりませぬ。」

ふっ、と締め付けが緩められた。

「残念ねぇ。ま、聞くまでもなかったかな。ねえゾイラちゃん?」

「はい叔母上。一紗、我らの心は....」

「一つにござります。」

と、ここで合言葉を言うことになるとは.....。これは俺と染射羅様の合言葉で、間髪いれずに言葉を繋げなければならないのだ。ちなみに染射羅様の気の向くまま、平均一日30回は行われる。

「まあ!羨ましいわぁ。でもゾイラちゃん、魅了も何もしてないのね....。不思議だわ。」

「叔母上。魅了など必要ありませぬ。なぜならば、我らの心は....」

「一つにござります。」

「すごいわねぇ。おなかいっぱいになりそうだわ。あ、そうそう、カズサちゃんに紹介しておくわ。マリー、いらっしゃい。」

「はい、母上様。」

と、少女がトコトコやってきた。ニーナ様と瓜二つだ。双子だろうか?しかしさっき母上様と言っていた.....ということは....

「紹介するわね、娘のマリーよ。可愛がってあげてちょうだい。」


....何と。というか、このお身体でどうやって子を産まれたのだろ
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