第三章 〜日常と道場破りと

「おはようございます、カルマ様。」

「おはよう、クリス殿。今日もお早いですな。」

まだ薄暗い明け方、俺とクリス殿は朝の挨拶を交わす。

「そりゃ一番にカルマ様に挨拶しとうございますもの。」

明るく笑うクリス殿。どうやらクリス殿は私を兄のように慕ってくれているようだ。私もクリス殿を妹のように可愛く思っている。

俺の一日は早い。暗いうちに起き、井戸の水で身を清め、自身の稽古を始める。一旦落ち着けば朝飯を食い、それからは道場で門人に稽古をつける。昼からは、私の噂を聞きつけてやってくる道場破りの者たちの応対だ。それらが片付けば、夕飯の時刻まで自分の技の研究と門人の稽古。ざっとこんなところだ。

もう早10日が経った。
正直充実している。コジョウにいた頃よりも、今の生活が気に入っているかもしれない。
ただ一つ足りないとすれば......。
染射羅様に逢いたいと思う。お顔を見たいと思う。お声を聞きたいと思う....。
いかんな......。こんな弱音を染射羅様がお聞きになれば、きっと俺に愛想を尽かしてしまうだろう。とにかく今は強くならなければ。身も心も!!

「まずは素振り2000回!!」

「.......。」

いつもクリス殿は俺の朝稽古をじっと見ている。やはり参考になるのだろうな。俺も気合が入る。







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「お疲れさまでした、カルマ様」

朝稽古を終え、井戸で水をかぶっていた俺に、クリス殿が手ぬぐいを渡してくれた。

「忝い。」

笑顔で受け取り身体を拭う。

「おーおー熱いのーお二人さん。まるで新婚みたいやのー。」

どこからともなく現れたユライア殿。

「もう、おやめ下さい。お父上。」

赤い顔でクリス殿は怒るが、語気は荒くない。

「これでジパングさんが一人身やったら、クリスを嫁にしてもろて道場を継がせるんやけどなぁ。」

「お、お父上!!!」

とんでもないことを言い出すユライア殿。ほら、クリス殿も驚いておられるではないか。

「御冗談を。クリス殿もお困りではありませぬか。」

「ほう、クリスは困っとるんか?嬉しがっとるんやないんか〜?どや?」

ニヤニヤしながらクリス殿を横目で見るユライア殿。いつも思うが面白い親子だ。

「そ、そんな。わたくしは・・・。」

「ジパング先生!!おはようございます!!」

クリス殿の声を掻き消すように、門人たちと共に新たに入門したリザードマン11人がぞろぞろと現れた。


----先日の一件の後、アマンダ殿の指示で彼女の仲間のリザードマン達は武神館に入門する事となった。なぜ夜盗と呼ばれていたリザードマン達が入門できたかというと、彼女たちが主に標的にしていた者は、旧時代の所謂勇者くずれと呼ばれる彼女達よりもはるかにタチの悪い者達で、押込み強盗、殺人、婦女への暴行など同情の余地もない悪党だったらしい。そういった事情も鑑み、この地区の領主に届け出た上で、ユライア殿が入門を許可したという経緯がある。アマンダ殿自身は、一人修行がしたいということでどこかへ旅立ったらしい。


「おはよう各々方!!今日も元気で何より。今日はまず道場で座禅を…」

「え〜、ザゼンは退屈で好きじゃないよ。」

一番元気なリザードマン、クーニャ殿が口を尖らせる。

「暇なんだもんあれ。つまんないよ。スパって抜いたらビュンって飛んで切れるやつ教えてよー。」

スパって....ビュン?...。ああ、3日前の演武で見せたカマイタチか。あれはそう簡単には・・・

「何を戯言を!!カマイタチはカルマ様のような達人こそ使いこなせる技!!禅も理解できない貴方に使えるものですか!!」

いきなり大声で怒り出したクリス殿。

「あん?じゃあご高説を垂れるクリス殿は使えるってのかよ?」

「何を夜盗風情が....。」

クーニャ殿も思いっきり喧嘩腰だ。何故かリザードマン達とクリス殿は折り合いが悪いようで、俺の頭痛の種でもある。

「ほーほー女の闘いやなぁ。へっへっ。」

後ろで楽しそうに見ているユライア殿。先日の稽古試合でクーニャ殿に見事な一本を取られてからは、挨拶もされないほど存在感が薄くなってしまわれた...。

「落ち着きなされい。クリス殿も言われる通り、居合のみならず、剣には心の修練が大事でござる。力で振り回すのみでは、いつまで経ってもカマイタチは使えぬ。よろしいな。」

「分かってるよ....。」

「よろしい、では皆道場へ参ろうか。その前にユライア師範に挨拶をしていくように。」

俺はまだ怒りが収まらない顔のクリス殿と道場へ向かって歩き出した。後ろから「あ〜いたの師範?ちゃっす!」というとてつもなく軽い挨拶が聞こえた。






「甘い!!単調に攻めては意味がありませぬ!!」

「くそ
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