眼を覚ますと、レイジの寝顔が間近にあった。
ふふ、こんな無防備な寝顔が見れるなんて嬉しいなぁ。
「目、覚めたか?」
「あ、起きてた」
レイジは閉じてた瞼を開く。ここはせめて微笑んでくれないかな。真顔のままって、ロマンないな〜。
「一時間くらい前にな。お前がずっと抱きついてくるから起きようにも起きられなかった」
あ、そう言えば僕、レイジに抱きついてる。
「ふふ、気持ち良かった?」
「……お陰様でな」
レイジは頭を掻きながらため息を吐く。そしてそのまま黙り込んだ。
「…………」
「レイジ?」
レイジは僕に向けてた体を仰向けにして口を開いた。
「……俺は、お前の事……好きなのかもな」
「え!?」
僕は思わず起き上がった。だって急に「好き」って言われたんだもん!驚くよ!
「もしかしてやっと僕の魅力が通じたのかな!?」
「……自分で言う事じゃねぇだろ」
呆れながらもレイジは話し出した。
「俺は、感情を表に出すのが苦手、と言うより感情が豊かじゃない」
確かにいつも無表情だけど……。
「でも、最近は……」
「最近はな。自分でも驚くほど叫んだり怒鳴ったりしたからな。お前と会った時なんかこんな声出せたのかって程叫んだし」
あぁ、可愛かったな〜、あの時は。
「でも、お前と会う前まではまるで動く人形みたいに無表情だった。周りで何が起こっても何の感動も抱けなかった。今思うと酷いもんだ。」
レイジは自嘲気味に笑った。
「それに……」
「それに?」
「俺の両親は、死んだんだ」
「え?」
「三年前に、交通事故でさ。そん時俺は泣いてやれなかった。……いや、悲しくすらなかった。悲しくて、泣いて当然の筈なのに。まるで他人事みたいに受け入れてた。たまに俺が生きてる意味って何だろうって考える時があった」
正直、僕はレイジの言っている事が信じられなかった。
だって、両親が亡くなって悲しくない人なんているとは思わなかったから。
「でもそんな俺が、アンの前だとなぜか感情が現れる。俺はさっき、それを『好き』なんだって自覚した。一目惚れしてたんだ。少なくともそう思う事にした」
レイジが一言一言紡ぐ度に、僕は胸が高まった。
「それ、本当……?」
そう聞くと、レイジは微笑んだ。
「あぁ、俺はお前が好きだ」
俺とアンが付き合い始めてから数日後、アンが「確かめたい事がある」と言って俺を近くの山へ連れ出した。
「元の世界に戻る手がかりでも掴んだのか?」
「ちょっとね。まぁ付いて来てよ」
どう言う事だ?
わざわざ俺を連れて行く理由が分からない。もしかすると俺に何かを見せたいのか?
取りあえず俺はアンに付いていく。
そして山の頂上付近にたどり着いた。
「着いた!」
「で、何を確かめたいんだ?」
俺を先導していたアンは振り返って俺に近寄り、俺の手を握った。
「レイジはさ、これからもこの街に住みたい?」
「は?」
いきなり何を言ってるんだアンは?
「僕は僕の世界が大好きで、早く帰りたいと思ってる。でも、レイジが好きだから一緒に居たい。だから、レイジと一緒に帰りたいんだ。レイジはどう?この世界が好き?」
「そんなの決まってるだろ。俺はここに……」
留まりたい、と言おうとした。でも、その言葉が出てこなかった。
俺は、ここに留まりたいのか?
郷土愛なんて誰にでもある。アンも、それがあるから今まで帰ろうとしていたのだ。
でも、それが俺にあるのかと聞かれると、正直分からなかった。
自分が何のために生きているのかと考えた時がある。それはつまり、何のためにこの世界に居るのか、と思っているのと同じことだ。
それって、この世界に思い入れが無いって事じゃないのか?
そう思った時だった。
「あ、出てきた!」
アンが崖の方を向いてそう言った。
俺もその方向を向く。すると、
「何だ、あれ?」
そこにあったのは、大きなトンネルだった。
「何で、こんな所にトンネルなんか」
「この洞窟だよ!僕が通ってきたのは!」
「え、それってつまり……」
「この洞窟は僕の世界と繋がってるんだ!」
アンははしゃいだ様子で言う。帰る術が見つかり嬉しいのだろう。
「でも、なんでいきなり……」
俺たちは黙り込み、なぜこのトンネルがいきなり現れたのかを推理する。
「多分、原因はレイジじゃないかな?」
「は?俺が……?」
嘘だろ?何で俺が?
「この洞窟は魔力で出来てる。それも特定の人間によって出来た魔力でね」
「その特定の人間が、俺って事か?」
「うん。前ここに来た時、一度この洞窟が現れたんだけど、その時感じた魔力がどこかに繋がってたんだ。そしてこの前告白された時にレイジからほんの微かな魔力を感じたからもしかしてって思って」
「でも、どうして俺がこんなもの……」
俺たちは二人そろって黙り込む。
だが、すぐにアンが口を開いた。
「多分
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録