今日は自由行動日!っと言う訳で私はワタヌキを連れ出して街を回る事にした。
本当はクレアと一緒が良かったのだが、彼女はカイルの買い物に付き合うと言うので諦めた。
「しかしオルガ殿。我々は何処へ向かっているのだ?」
ワタヌキの素朴な疑問。私は笑って答える。
「まぁまぁ、着いてからのお楽しみ」
しかし、ワタヌキは何を感じたのか少し怯えた様子だ。
「何よ?その暗い表情は?」
「……何だか嫌な予感しかしない物でな」
何か失礼ね。
「……っと、ここね」
私は下町のとあるお店で足を止めた。
「オルガ殿、ここは?」
ワタヌキは恐る恐る尋ねる。
「ふふふ」
私が振り返ると、何故かワタヌキは涙目で怯えていた。
まあ、良いわ。質問に答えましょう。
「ここはね――
――洋服屋さんよ」
自分の悪い予感は大抵良く当たる。
そして今回も、悪い予感が的中してしまった。
「これと……これも良いわね」
オルガ殿はそれは楽しそうに服を選んでいるが、今選んでいる服はフリルなどが付いた少々派手なドレスなどだ。
そして、それをオルガ殿は、
「ワタヌキ、これなんてどうかしら」
「却下だ」
「ええ!?ワタヌキに似合うと思うんだけど」
自分に着せようとしている!
……クレア殿が避けていたのも分かる気がする。
オルガ殿はどうも服選びが趣味らしく、さらにそれを人に着せるのが趣味なのだ。しかも彼女の趣向はほとんどが《ロリータ?》と言うのか?……とにかくフリフリの派手な物が多い。
恐らくクレア殿もこう言った派手な衣装は苦手なのだろう。さらにオルガ殿は選んだ服を着せた後何枚も写真を撮っているのだ。
……自分もオルガ殿が苦手になりそうだ。
「はぁ……」
「あら、深い溜め息」
自分の様子を見たオルガが近づいてくる。
良し。自分の意見はしっかりと言わなければならないな。
「自分はそう言うフリフリの派手な服装は苦手だ」
「あら、貴方の服装だってフリフリで派手じゃない。目立つわよ?」
伝統ある着物に何と言う事を言っているのだ、この女は!
「決してその様な事はない!ゆったりとしてはいてもフリフリとはしていない!」
「あ、でも色は地味ね」
「地味と言うな地味と!」
それはそれで傷つくぞ!
「良いじゃない別に。似合うわよ?」
「似合うと好みは違うのだ。それに何故男である自分が女装しなければいかんのだ」
「…………むう」
……そんな残念そうな顔をしなくてもいいではないか。
「じゃあ、ワタヌキはどう言う服が好みなのよ?」
「む」
そもそも洋服自体あまり好みではないのだが、仕方ない。オルガ殿が決めるよりはマシだ。
自分は店内を回り、服を選ぶ。
良く見るとオルガ殿が選ぶ様な服以外にも燕尾服だったり普通のTシャツやジーンズなど多種多様だった。中には和服もある。
やはりこう言う物が良い――
「和服は禁止よ」
「――――!」
何時の間に真後ろに!?いや、それよりも。
「何故だ!?」
「貴方の服があまりにも地味だからよ」
「だから地味などと言うな!」
全く、この女は和服を何だと心得ているんだ。
「大体、和服にも色々あるのだ。煌びやかな服だって――」
と和服について語ろうとした直後だ。
ある衣服が視界に入り、眼を引いた。
「これは……?」
「え、何?ジャンパーが気になるの?」
「《ジャンパー》と言うのか?」
自分はその《ジャンパー》を手に取る。黒く滑らかな革で出来ており、なかなかの厚みと重量感がある。
「これは、牛、いや、爬虫類か?……何の革だ?」
「それは合成樹脂などを使用した人工の革でございます」
「きゃっ!」
突然の第三者の声にオルガ殿が仰天する。
……気配がまるで無かった。
声の方に振り向くと、店内に並んでいるのと同じ様な服を綺麗に着こなした女性が微笑んでいた。
宝石の様に輝く翡翠の髪を後ろで結び、金の瞳は射抜く様に鋭い。
どうやら店員の様で、首に名札を下げている。
名札には《ジュディス・バートン》と明記されている。
「合成樹脂?」
「ええ。合成樹脂に石油を原料にした物など多く当てはまるのですが、その服の場合ですと、植物から出る油脂などから作られております」
「……凄いな」
動物の革とほぼ見分けがつかない。
「試着なさいますか?」
とジュディス殿が尋ねる。少し興味があるので頷くが、
「まさか和服のまま上に着る気?」
とオルガ殿が横から、何やら不満げに聞く。
自分としてはそれで特に不満は無いのだが。
「……確かにそうですね。和服の上に羽織っても違和感しかないです」
ジュディス殿はオルガ殿の言い分に納得した。
別に良いと思うのだが。
「っと言う訳でこのジャンパーに合う服を探しましょう!」
自分は上に羽織るだけで良いのだが。……誰も聞いてくれなさそうだ。
そして数分後。
洋服に着替えさせられ、似合
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