村正 -千子村正-
日本人の誰もが耳にしたことがあろう妖刀
舞い落ちる木の葉が村正に吸い付くように落下し、真っ二つに切れる。
血を吸う。測定器を近づけると目盛りがブレる。なぜか刃こぼれしない...
数えきれない逸話を持っている刀
室町時代に作成された日本刀である
この刀は古き日本の歴史の裏で常に暗躍していた
手にした者に揺るぎない力を与え名武将、将軍を屠り、名誉を我が物とするだろう
この刀の獲物となった者は破滅の運命を辿るのだ
そう、たとえ持ち主でさえも。
―妖刀よ、魔の現にても宵闇に赫を散らすか
ジパング、千子村
ここはせせらぎの村の反対の位置にある村
あまり裕福とは言えず、まだまだ古いしきたりがある
ジパングと言えば魔物に好意的であるが、この村は異界の者に厳しいままだ
あまり長く居座りたくはない
そんな印象を受ける
真久(まく)「桜〜お前何日同じ着物なんだよ〜」
凉灯(すずひ)「ふふっwしょうがないでしょwww」
秀(しゅう)「ああ!だって家無しだもんな!」
凛(りん)「私はぁまた新しい花輪の下駄を買ってもらっちゃったしぃ、かわいそぉ」
「「「「ははははは!!!!」」」」
桜(さくら)「...」
「...チッ五月蝿いガキ共が」
村の治安、雰囲気もせせらぎ村とは正反対だった
直接的な殺人や悪質な裏博打をするヤクザは居ないものの陰湿なイジメと怠け者な役人が
この反吐が出る環境に拍車をかけていた、学校の教師も見て見ぬ振りだ
優(ゆう)「お前ら!また寄ってたかって桜をイジめて!
やめろっつってんだろうが!」
俺、真田優はいつもいじめられるクラスの女の子、小松桜を助けに向かう
「あw出た出たw正義のヒーロー優くん!w」「わ〜かっこいいぃ〜」
「凉灯、凛ちゃん見ときなよ。俺の方がつえーから〜」
「凛!あとデートしようぜ!コイツをノシてからな!」
ポカスカ!ドタバタ!
ドッシ〜ン!!!
「イテテテ...ちくしょう...」
「「二人共かっこいいよぉ〜」」チュッ
「「はっはっはー!いこうぜ二人共!ダブルデートだ!」」
「...やっと終わったか、マセガキ共が」
役人がうっとおしそうにした後、また居眠りをし始めた
ボロボロの二人を一瞥することもなく
「真田くん...」「情けねぇ...ごめんな、桜」
「そんなっ!情けなくなんか...私なんて」
真田くん、貧乏で家もない私を気遣ってくれる男の子
私は彼が大好き
でも
「優っ!またこんな娘と絡んでっ!」「はやく向こうに行かんか!」
「母さん!桜は悪い娘なんかじゃ...」
ビシイッ!
「痛って...なんでぶつんだよ!」
「貧乏と言うだけで悪なのだ!負け犬!弱者!搾取される側の人間なのだぞ!」
「私達真田一族は勝つことを義務付けられた一族!こんな薄汚れた娘と遊ぶ暇はないのよ
あなたはその跡継ぎ、真田の長男。剣のお稽古とお勉強をしていればいいの!」
「さあこいっ!さっそく剣の稽古をするからな!」
「桜...」
私の恋は叶わないみたい
文無しと武家じゃ"人間の価値"が違うんだって、真田くんのお母さんが言っていた
私がいるから真田くんは傷つくのかな、私が居なければ真田くんは...
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無人の廃墟
「お父さん、ただいま」「おお、桜お帰り。学校はどうだった?」
「いつもどおり、楽しかったよ」
私のお父さん、とっても優しくて働き者
汗水たらして私を学校に通わせて、着物も買ってくれたお父さん
お父さんがチラリと私の着物を見る
「桜、ごめんな...とうちゃんが無能なばっかりに...
お前にこんな苦しい思いをさせてしまって」
顔を伏せて苦い表情をするお父さん
いつもそう、私がボロボロになって帰ってくるとこの顔を見せる
「そんなことない、私は優しいお父さんが大好き
それにお父さん、役人さんや学校の先生より一生懸命働いてる」
「お父さんばかりに大変な思いはさせないから
じゃあちゃちゃっと柴刈りに行ってくるね、すぐ帰るよ」
「桜...お前は...本当に椿によく似た娘になったな...」
椿、私のお母さん、3年前に病気で死んじゃった
お父さんと私は街中でお医者さんを探したけど誰も助けてくれなかった
地面に頭をこすり付けて泣くお父さんと私を煙たそうに見て
「よしっ、準備も出来たし行こう」
勝手に寝床にしている廃墟を出ると啜り泣く声が聞こえ始める
「椿ぃ...すまねぇなぁ...俺はあの娘までも不幸にしちまう...」
私がいるからお父さんは傷つく
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