これより記された文章は科学者たちの著書からの抜粋である
■睦の月、始の暦
○ローチ氏の日記
本日、教団から魔物娘の生体実験の許可を頂いた。
人類のため、魔物たちから弱き民を守るため、と銘打っているものの
実際は倫理のカケラもない戦争の道具を作り各国に売りさばくためだろう。
しかしそんなこと科学者には関係ない
今回チームになった仲間たちも皆、知に貪欲な科学者であり
俺も高度な生命体の実験ができるならそれで良い人間なのだ。
...本題に入ろう、この実験の対象になる魔物娘はデビルバグという個体だ。
あらゆる環境に適応し、学習、繁殖をしていく。
なんでもよく食べ、空を飛び、素早い動きが出来る魔物だという
近々搬入される、顔合わせが楽しみだ。
■睦の月、央の暦
○ローチ氏の日記
ついにお目当てのデビルバグがやってきた、
想像していたよりは小さかったがかなり激しく抵抗している。
この魔物娘が監禁されている空間、壁に特殊な魔法を掛け中から外の様子は見えない。
が、科学者達からは筒抜けというシロモノだ、皆これを「鏡の虫籠」と呼んでいた
初めての籠に対するデビルバグの研究レポートはこれだ。
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研究レポートその1
被験体、鏡の虫籠の中に眠った状態で投入、数時間後に覚醒
彼女に現在の状況を説明、被験体は籠の中で30分程暴れまわる。
科学者メリアン氏が羽を使用せよ、走れ等の簡単な命令を出す
『だしてー!だしなさいよー!』の一点張り、コミュニケーションは不可。
魔界から取り寄せた果実(劇薬入り)を投入、人外のスピードで果実に接近、これを食した。
メリアン氏が「被験体、体に異常はありませんか?」と問うと
『わたしにはアイネっていう立派な名前があるんですううう!』と叫び、睡眠状態に入ってしまった。
毒霧の魔法を籠に放つも全く効果が無く、目を覚ます様子も無し
ここで実験を終了とする。
●メリアン氏のメモ
毒に対する耐性は非常に高いようだ、また瞬発力も飛び抜けている事が判明
人間や他の魔物と違い最初から全速力の移動が可能、壁に張り付く、滑空、滞空、旋回も羽によって自由自在。
睡眠中に血液を採取するもメカニズムは不明、魔力ではなく彼女自信が進化して
得たものなのか、それ以外なのかは現段階では判断しかねる。
そして今後は彼女とのコミュニケーションを円滑にするため被験体と呼ばず
「アイネ」という個体名で呼ぶこと。
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■睦の月、終の暦
◯ローチ氏の日記
メリアンとかいう女がかなり熱心に研究を進めている、それも強張った表情で
俺は「せっかくの美人が台無しだ」と軽く茶化してやると試験官を投げつけられた。
可愛げのない同僚の話はさておきデビルバグの実験結果だ
コイツはすごい、人間なら即死の劇薬を顔色変えずに飲んでしまった。
さらには陸、空どちらでも素早く動くことが出来ている。
こんな夢の様な肉体を人類が手に入れればきっと...
倫理観に反するがこのデビルバグ「アイネ」を研究し尽くし
擬似的な人体の錬成、改造、教育を施し量産すれば、神をも恐れる軍勢が作れるかもしれない、カサカサ鳴るのは勘弁だが。
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研究レポートその2
今回は知能実験を行う
まず、アイネの籠に子供向け、大人向け、専門学者の著書、魔道書等を数冊入れる
この時点では本には一切興味を示さない、メリアン氏は「そこにある本を全部読み上げてほしい、もし出来たなら君に男を紹介する」と発言。
アイネは意気揚々と音読にとりかかるが大人向けの本に躓いた模様
メリアン氏が基本的な単語と文法の教育を施すと、アイネはどんどん本を読破する
如の月の始まりには魔道書を音読し終わり、魔法の基礎を理解した
次の実験時には約束どおり男性を用意すること。
●メリアン氏のメモ
運動能力だけでなく学習能力も高いことが確かになった
特筆すべきはその速さ、10日程度で基本的な文法を理解し、魔法の知識も物にしている。
旧魔王時代からは考えられない、知への理解の飛躍
これは恐らく新魔王の影響と魔力の変化が原因だろう。
男が原動力と本人の言動から推察できるが...
同じメスとしては理解できない、原因は実験中にも茶々を入れてくるローチとかいう男だ、聡明な科学者とは思えない。
...私らしくもない、これ以上考えるのはやめにしよう
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■如の月、央の暦
◯ローチ氏の日記
どうやらアイネはメリアンの提出した無理難題を軽々と片付けてしまったようである。
俺達人間が数年かけて習得する魔法をこうも簡単
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