日差しが暖かく朗らかな春の大安。
ホテルで結婚披露宴が執り行われている。
両家の間には実に良好で、二人を祝福する暖かい空気が流れ、式はスムーズに進行していった。
アマゾネスの新婦とその夫となる男性の馴れ初めや二人の人柄が親族や親しい友人から話され、二人は時折顔を赤く染めた。そんな二人からは実に初々しくも幸せそうな雰囲気が醸し出され、今後訪れる夫婦生活の順風さを表しているかのようだった。
そしてあっという間に式は佳境に入り、司会が新婦とアイコンタクトした後に口を開いた。
「それでは、新婦の香里様より新郎の智雄様へのサプライズが行われます。では演奏に参加されるみなさま、ご準備の程よろしくお願いいたします!!」
すると、先程まで料理や酒を楽しんでいた新婦の友人たちが各々に楽器を取り出し、年齢の低い子供たちは二人が座る壇上へと集まりコーラスの最終確認を行う。そして一人が合図をして演奏が始まった。
明るいメロディが会場に満ちていく中、サプライズというだけに何も知らされていない新郎は驚いて辺りをきょろきょろと見回している。
その様子を可笑しそうに見た後、新婦がそっと立ちあがり司会からマイクを受け取り、歌を歌い始めた。
お前を婿にもらう前に 言っておきたい事がある
かなり厳しい話もするが 私の本音を聴いておけ
私より先に寝てはいけない
私より後に起きてもいけない
飯は上手く作れ
いつも格好よくしていろ
出来る範囲で かまわないから
忘れてくれるな 強くもない女に
家庭を守れるはずなどないってことを
お前にはお前にしか 出来ないこともあるから
それ以外は口出しせず 黙って私についてこい
お前の親と私の親と どちらも同じだ 大切にしろ
舅 小舅 かしこくこなせ
たやすいはずだ 愛すればいい
人の蔭口言うな 聞くな
それからつまらぬ嫉妬はするな
私は浮気はしない きっとしない思う
その分全部
お前を愛してやるから
幸福(しあわせ)は 二人で育てるもので
どちらかが苦労して
つくろうものではないはず
お前は私のところへ 家を捨てて来るのだから
返る場所はないと思え
これから私がお前の家
子供が育って 年をとったら
私より先に死んではいけない
例えば僅か一日でもいい
私より早く逝ってはいけない
何もいらない 私の手を握り
涙のしずくふたつ以上こぼせ
お前の御蔭で いい人生だったと
私が言うから 必ずいうから
忘れてくれるな 私の愛する男は
愛する男は 生涯お前ひとり
忘れてくれるな 私の愛する男は
愛する男は 生涯お前ただ一人
子供たちのコーラスが会場に響く中、涙を流す新郎を抱きしめた後、涙に濡れる唇に新婦が口づけを落とした。
周りからわっと歓声や祝福の声が上がり、部屋には一段と明るい空気が立ちこめたのだった。
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