後篇

想いを伝えあった茜と洋輔はめでたくその場で結ばれ、他人の目など気にすることなく愛ある性行に精を出し……てはいなかった。

二人は現在、茜が根城にしているという場所へ向かっている。
てっきりその場で息つく暇もなく犯されてしまうと思っていた洋輔は拍子抜けしてしまったのだが、「確かに洋輔を犯して他人にその姿を見せつけるってのは魅力的だが、童貞のお前が初めてセックスをして、悶え震える姿を見ていいのは、ワタシだけだ。妻となるワタシだけが、その特権を持っているのさ。」と真顔で言われ、何も言えず耳まで真っ赤に赤面してしまった。

そんな気障なセリフを平気な顔で言い放つ茜は、移動しながら洋輔の唇にむしゃぶりつく。

「洋輔っ…ん、ちゅば、よう、すけ…むちゅ、んちゅ…」
「茜さん、激しい…ん、ぷ、ちゅぅ…落ち着いて、んちゅっ」
「それは…むちゅ、無理な…くちゅくちゅ、話だ。くくく、ようやく夫を手に入れたというのに落ち着いていられる魔物娘がいるかよ…んちゅくちゅ」
「ん、んむっ〜…んん!?」
もはやなんの遠慮もいらない。
そういわんばかりに茜は洋輔にせまり、キスをしてくる。一度火のついてしまった、体格でも性欲でも優るウシオニを止める術はなく、ひたすら彼女の行為を受け入れるしかない。茜は手始めに頬や首筋、耳など敏感な個所にねっとりと口づけを施した後、待たせたといわんばかりに洋輔の唇を味わっていく。唇を吸われ、熱い舌を絡め合う甘いキスも堪らなく気持ちいいが、敏感な場所に柔らかい彼女の唇が触れ、舌で舐められ、鼻から漏れる鼻息があたるのはなんともいえない快感を伴っていた。先ほどまでと違い、彼女の行為や愛を受け入れた今の洋輔にとってそれらの刺激は全てなんの抵抗もなく骨の髄まで浸み込んでいく。彼女から与えられる愉悦はまるで毒のように確実に心を蝕んでいき、より一層洋輔を魅了させていった。

「あ、茜さん…んちゅ、まってっ…むちゅ!?」
しかし、それでも未だに洋輔は無駄な抵抗をしている。
覆いかぶさるようにしてキスをしてくる茜の背中や蜘蛛の足を力の入らない手で弱弱しくぺちぺちと叩く様は、いかにも情けなく降伏する滑稽な姿なのだろうと思う。それでも抵抗せずにはいられない、理由があった。
「っちゅぷ、ぷはっ…さっきから何だ、そんなにワタシとキスをするのが嫌なのか?」
「んぷぅ…キスをするのは……嫌じゃないんだけど」
「ならなんの問題もない、続きをしようじゃ…」
「だ、だからキスはいいんだけど」
そう、キス自体はなんの問題もないのだが……

「僕を、下してくれないかな!?」

洋輔は現在、茜に横抱き…所謂“お姫様抱っこ”をされている。
茜は背中や足に回した太く強靭な二本の腕と、前方に生える他の足に比べるとやや短い二本の蜘蛛の足を使って器用に洋輔の体を支えつつ、少しの身動きもできないほど完全に洋輔の自由を奪っていた。漫画や映画などの映像作品で体格のいい男性が人間もしくは魔物娘の女性をそうやって抱きかかえているのを見たことはあるが、実際にそれをする側ではなくされる立場になって思う。これは想像以上に恥ずかしい。女性ならば男性の逞しさにうっとりとすればいいのかもしれないが、立場が逆転してしまった洋輔には彼女とのキスに集中できないほどの気恥ずかしさが募っていた。別に洋輔はアマゾネスが憤慨するような男女に対する差絶意識を持っているわけではないが、それでもそれまで生活してきた中で自然に形成した価値観に照らせば、どうしてもこの行為は男女が逆転しているとしか思えない。そんな既成概念が、洋輔をちくちくと苛んでいた。

「いやなこった。」
だが茜は解放してくれる気はないらしい。
少しだけ何故洋輔が恥ずかしがっているのか疑問に思うような素振りを見せたが、すぐにそれを意地悪い嗜虐的な微笑みに変えて否定の言葉を口にする。
「ワタシは…夫を手に入れたらずっとこうしたかったんだ。自分の大切なオスをこの腕の中に収めて、一心不乱にキスを堪能する。それはどれほど甘美で最高な瞬間なんだろうとずっと夢見てきたのさ。」
情欲をメラメラとその瞳に燃やしながら茜は熱く語る。
「むしろ何故お前はそんなに恥ずかしがるんだ?」
「へ?」
「ワタシは自分にできる、精いっぱいの愛をお前にぶつけ…お前はその愛を受け止める。それが他人と、世間と違うからと言ってそのことを何故恥じなければいけないんだと聞いてるんだよ。」
「………。」
「まあお前が何をいってもワタシの根城につくまでやめないから♪あきらめろ、洋輔…ちゅっちゅ
#9825;」
「んぐっ、むぅんっ!?」
話はこれで終わり、煩い口は塞げといわんばかりに茜がキスを再開する。
彼女の言葉を聞き、何故今までそうまでして抵抗してきたのかわからなくなった。彼女はまっすぐに自分への愛を向
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