学校での授業を終え、一緒に帰宅した栗原麗は真っ直ぐに部屋に入り、ベッドに腰掛けながら周りを興味深そうに見渡している。
「はぁ〜…相変わらず清志の部屋はいいねぇ。」
彼女にそう言われ、改めて自分の部屋を眺めてみる。
大きめの勉強机、参考書や小説、辞書などがきちっと整理され収められた本棚、制服や私服が入っている箪笥、間接照明が置かれた小さめの卓袱台、そして低反発で寝心地の良いベッド。引っ越しが多いおかげであまり物は多いというわけではないが、それなりに色々なものがあふれるいつも通りの味気ない自分の、日野清志の部屋だ。
「そう、かな。」
「ああ。綺麗ですっきりしていて…とっても落ち着くよ。」
だがそんな自分の部屋に彼女が居るだけで、なんだか部屋全体が華やいでいるように感じてしまう。モノクロの部屋がカラーになったような感じだ。
「それになにより、部屋中に清志の匂いがしみついてるってのが最高なところだな。何度来ても、この濃縮されたお前の匂いを嗅ぐとむらむらするよ…ふふふ。」
妖艶に麗は笑う。
最近、麗は自分の家を毎日のように訪れていた。清志の両親は突然出来た息子の交際相手に最初はとても驚いていたが、今では彼女が訪れるのをむしろ歓迎するほど仲が深まっている。麗はすっかり日野家に溶け込んでいた。
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「初めまして、私は栗原麗といいます。清志さんとお付き合いさせていただいています。お義母様、お義父様…不躾で至らないところが多分にある私ですが、どうかよろしくお願いいたします。」
初めて対峙した父と母に、麗はこれ以上ないほどの好印象を与えた。
旧家のお嬢様といっても過言ではないほど柔らかで上品な笑みと物腰、そして言葉遣い。交際を始めた息子の相手が魔物娘であるマンティコアと知り、いくらばかりか緊張の色を見せていた両親は、彼女のそんな様子に半ば拍子抜けしたように驚きつつ、「こんなにいい人と一緒になれるなんて清志は幸せだな!!」と笑みを浮かべた。
しかも麗は何時の間に知ったのか父の好きな銘柄の酒や手に入りにくいことで有名な高級美容品を母への手土産に持ってきており、清志の両親からすこぶる高い好評価を獲得した。中でも母親は休日に麗と二人で買い物に行ったり、来る度に「日野家の味を教えてあげなきゃね」と言って一緒に台所で料理をするなどいたく彼女の事を気に入ったようだった。
こうして外堀は―――初日から完璧に埋められたのだった。
その時の彼女の変わりように驚き、あからさまにその感情が顔に出てしまったのだろう。
「お前を生んで、育ててくれたお二人なんだ。自分に出来る限りで礼を尽くすのは当たり前だろ?恥ずかしい事言わせんな、馬鹿。」
少しだけむすっと不機嫌さを浮かべながら、二人きりになった彼女はそんな表情を浮かべる清志にぶっきらぼうな説明をした。改めて、麗に惚れ直したのは言うまでもない。
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そんなこんなで、彼女が我が家にいる風景は日常となりつつあるのだが、今日はちょっとばかり違っていた。
「今日はお二人が居ないんだし、目一杯楽しめるから余計に興奮しちまうよな〜。お前も、そうなんだろ?」
そう、今日は両親が家を空けている。
栄転してきた父への接待があるらしく、泊まりがけで県内の保養地へと行ったようだ。なんでも有名な花火師のウシオニが花火をあげる祭りを楽しむそうで、父は非常に楽しみにしていた。いつもは父だけで行くことが多いのだが、その花火を見たいと母も思ったことに加え、「麗ちゃんが一緒にいてくれるなら安心だし、私はお邪魔だろうからお父さんと一緒に楽しんでこようかしら〜。麗ちゃんを泣かせる様なことをしちゃダメよ?」と妙な気を回してくれた御蔭で、こうして麗と二人で家にいる。両親がいる普段では、こうして麗が訪れ尻尾による性行為を楽しむ時、さすがに清志の気持ちをくんでくれているのか、彼女は部屋に防音の呪文をかけてくれている。しかし今日はその必要が無いと言う事で、清志から精を搾り取ることに集中できると言わんばかりににやにやと笑いながら意味深な視線と言葉を投げかけてくる。
「そ、それよりもさ。喉乾かない?お茶を入れて来るから待っててよ。」
決して彼女とそういう行為をすることが嫌なわけではない。
しかし改めてこれから自分の家で麗に犯されるのだと思うと、なんだか急に気恥ずかしくなった。だから飲み物を出すと言う言い訳を口にしてベッドで寛ぐ麗に背を向け、部屋のドアに手をかける。
「まあ、待てよ。」
だが、彼女は決して獲物は逃がさない。
先程の誘惑する言葉よりもたっぷりと色香や艶が込められた彼女の一言に、清志の体はびくりと反応してしまう。どうやら自分はこれから一生、彼女が放つ魔性
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