柔らかな光を放つ間接照明が照らす真っ白なベッドの上に、正反対の漆黒を纏った美しい女性が座っている。
そのコントラストや女性が醸し出す色香に思わず見とれてしまう。ただベッドに座っているだけなのに、それがなんとも言えず魅力的に感じてしまう。
「さあ、可奈ちゃん。おいで〜。」
その美しさに釘付けになり寝室の入り口で立ちつくしていた私を彼女は無邪気に誘う。母と同じ年齢だと聞いているが、とてもおちゃめで女の私から見てもとても素敵だと思う。
「…はい。…隣、失礼いたします。」
私はそんな涼子さんの言葉に素直に従い、ふらふらとまるで夏の夜、街灯に集まる虫のように近寄っていく。誰でもこの甘く魅惑的な誘いを断ることは出来ないのではないだろうかと本気で思ってしまう。近寄っていくと動悸が激しくなっていき、頬が熱くなるのを感じる。心なしか呼吸さえも荒くなっているようだ。それを涼子さんに悟られるのがいやで、視線をさげながらおずおずとベッドに向かって歩き、彼女の隣に座った。
だが、はやる気持ちがありながら自分から膝枕をしてくれと彼女に強請るのも恥ずかしい。
「ふふ、そんなに緊張しなくていいのよ。これはあなたへの御褒美なのだから♪」
するとそんな私の心中を察してくれたのか、涼子さんは朗らかな笑顔を浮かべ私の肩に手を置き、私を膝に優しく誘ってくれた。
その行動を言い訳に、いつまでも恥ずかしがって彼女を待たせてはいけないと言う建前と、直ぐにでも誘惑に身を任せその柔らかな太腿に頭を預けたいと言う本音に突き動かされ、私はゆっくりと体を倒していった。
「は〜い。いらっしゃい
#9825;」
「ふぅあぁ…。」
太腿に頭をつけた瞬間、思わず声が漏れてしまう。
彼女が纏う服のすべすべとした上質な感触と、適度な反発がありながらとても柔らかい太腿の感触が後頭部を包む。それは何度味わっても我慢できないほどの気持ちよさと安心感を私に齎す。それまで強張っていた私の神経は一気に緩み、力が抜けていく。私の体はこの快感を堪能すること以外の行動を放棄してしまった様な錯覚に陥ってしまうほどだ。
「もう完全に力がぬけちゃって。そんなに私の膝枕はいいものなのかしら?」
「…はい。」
大きく豊満な胸越しに、覗きこむようにして見下ろす涼子さんの顔には聖母の様な笑顔が浮かんでいる。私はそんな彼女になんとか一言を答えるのが精一杯だった。今の私は最高に幸せ一杯で、その気持ちを少しも逃がしたくなかった。
「あの人もね、毎回膝枕をしてあげると可奈ちゃんみたいに脱力してしまうの。普段は大人っぽいのに、子供みたいになっちゃうからとっても可愛くって
#9825;襲っちゃいたい願望を抑えるのが大変なの〜
#9825;」
だが涼子さんが嬉しそうに夫の話をした瞬間、私の心には酷いエゴが巻き起こった。そして今の私の理性はその自己中心的な考えをどうしても抑えきれなかった。
「…ださい。」
「え?」
私は涼子さんに真っ直ぐに見られるのが嫌で、体を倒して体制を変えて彼女の腹部に顔をこすりつけるようにしながら、機嫌を損ねた子供が駄々をこねる様にぶっきらぼうに呟く。
「…しないでください。」
「…何をかしら?」
「涼子さんは今、私の御褒美をしてくれている最中です。旦那様とは言え、他の人の話は…しないでください。」
今はただ甘えているわけではない。
これは私への御褒美だ…。
こうして涼子さんに膝枕をしてもらっている最中だけは私に集中してほしい。
綾さんにも竜治さんにも嫌われるのを覚悟で…
あんな汚れ仕事を引き受けて実行した私をもっと可愛がって、労わってほしい。
そんななんとも稚拙で、あまりにも利己的な願いだった。
「ごめんなさい。可奈ちゃんの言う通りね。私が悪かったわ。お詫びに今日は目一杯甘えて頂戴、ね。」
だが、彼女はそんな私の願いを聞き入れてくれ、そっと頭を撫でてくれる。彼女の白くたおやかな指が、労わる様に私の髪を梳かしていく。
「…。」
それが嬉しくて、私はそっと彼女の腰に手を回して抱きつき、彼女の太腿や腹部に頬を力強くこすりつける。するとより一層彼女の体温と甘い体臭が感じられてさらに嬉しさが増した。
そして私は無意識のうちに涼子さんに対して微弱ながら吸精を行ってしまう。
腰に回した手から、彼女に触れている頬から、そして頭を優しく撫でてくれる彼女の手から…とても豊潤で濃い精が私の体に広がっていく。それは何十年も熟成させたような深い味わいと、甘味などを超越した様な旨味の様な味わいを私に堪能させる。そしてそれは遠い昔に口にした母乳のような安心感と母性を想起させた。
「本当に今日はお疲れさま。私の我儘につきあってくれてありがとう。だから、私の事は気にしないでいいから…可奈ちゃんが満足するまで甘えて頂戴。」
「…はい。ありがとう
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