「う、…ん、ここは…?」
ゆっくりと意識が覚醒していく。
目の前には見なれない天井が広がっている。
どうやら自分はどこか知らないベッドの上で眠ってしまっていたようだ。だが、思考が鮮明になっていく中ふと昼間に綾と二人で荷物を置くため入ったホテルの天井ではないだろうかと気がついた。しかし、先ほどまでパーティーに参加していたはずなのに何故自分は寝ているのだろう。そう思って起き上がろうとしたその時―――
「って、なんで僕は…縛られているんだ…!?」
ようやく竜治は自分の手足が布で縛られている事に気がついた。いくら平和なジパングにいるとはいえ、我ながら危機感が無いなと思いつつ、さらによくわからない事態に陥っている事を理解して頭が混乱する。一体自分はどうしたのだろうか。
「解けそうにはない、な…。」
それでもなんとか心を落ち着かせて縛られた手と足を交互に見遣るが、その結び目はきつく締まっており、簡単に外れるようなものではなかった。服装がパーティーに参加した時と変わりないので、恐らく自分はパーティー会場でなにかありこの部屋に運ばれた後、四肢の自由を奪われたのだろう。
「目が覚めたのね…」
「!!」
さて、これからどうしようかと思案していると突然声をかけられた。
なんとか体をひねり、慌てて声のする方を向くと妻である綾が悩ましげに体を椅子に預け座っていた。長い脚を上品に組み小首をかしげこちらを見るその様は何世紀も美しさを誇る中世の絵画を思わせ、頭がしびれる様な強い魅力を竜治に感じさせる。ただ、その前に置かれた机に様々な種類の酒瓶が所狭しと並んでいるのには、驚いた。長年彼女の側にいるが、こんな光景は初めてだ。
竜治が驚いて口を開けない一方、綾は音も立てずに立ちあがり、竜治が横たわっているベッドにふらふらと緩慢な動きをしながら歩いてきた。綾が近寄る度、アルコールの匂いが強くなっていく。
「おはよう、竜治さん。」
静かにそう言うと、綾は突然素早くベッドに飛び乗り竜治に覆いかぶさった。そして捕まえた獲物を甚振る肉食獣の様にゆっくりと顔を近づける。
「ぐっ…おはよう。」
みぞおちに綾の柔らかな臀部の、そして胸板に豊満で柔らかな胸の感触と重みが伝わり、思わず声が出てしまう。それでもなんとか挨拶を返すと妻は少しだけ口角を釣り上げる。逆光の中こちらを見つめる何時になく爛々と紅く輝いている瞳や、酒のせいで赤く染まったアンデットの肌、艶に濡れた形のいい唇に心が奪われそうになるが、なんとか理性を振り絞って質問する。
「ねえ、僕はなんで縛られてここに寝ているの…かな?」
「ん〜?」だが、綾はにこにこと笑うだけで答えない。それにめげず質問を続ける。
「というか、大丈夫?かなり酔っぱらっているみたいだけれど…ッ!!」
「うるさい…んちゅっ…ぅん…ぷちゅ」
…っちゅ…っちゅく…ちゅぅう…
だが、綾は質問に答えず、荒々しく竜治の唇にむしゃぶりついた。その勢いは凄まじく外周部から舌の裏まで一気に舐めつくされる。彼女の肉厚でやや体温の低い舌がたっぷりの唾液を纏って口内をくすぐっていく。そんな何時になく激しく濃厚なキスに竜治は面を食らってしまう。その間にも綾は舌を差し入れ、竜治の唾液を舐め取り、自信の唾液を口内に塗りこんでいくように執拗に攻めてくる。
「りゅう、じ…さん…はあ…んちゅっ…」
「(…牙に、触れないようにしなきゃ…)」
夢中でキスをしてくる綾とは対照的に、竜治は冷静にあることを頭の中で考えていた。
それはヴァンパイアの鋭利な牙に舌や口内が触れて出血してしまわないように気をつける事だった。これはヴァンパイアの伴侶だからこその必要なスキルなのかもしれないが、彼女たちの二本の牙を上手くよけながらキスをするのには中々コツが必要だったりする。竜治も綾と結ばれた当初はよくキスで出血してしまい、いきなり最高潮に達した綾と熱く激しい夜を過ごしたものだった。勿論、牙に触れて出血してもなんの問題も無い。彼女たちに血を吸われることは快感以外の何物でもないし、血を吸ったヴァンパイアはより一層好色になるだけだ。むしろ寝起きの時に体を起こす為わざと牙に舌や頬を突きさすことだってある。
「今日はあなたがリードして
#9825;」
「今日はゆっくり楽しみましょう?」
しかし、このようなリクエストをいただいた際にはこのスキルが重要だったりする。
いくら魔物娘とはいえ、いつでも同じシチュエーションでセックスを楽しんでいるわけではない。激しい時もあれば静かにじっくりと楽しむ時もある。魔物娘であるヴァンパイアも血と言う即効薬でギアを無理矢理上げるのではなく、ゆっくりと体をあたためてセックスに臨むときだってあるのだ。そんな時にキスが下手ではどうしようもない。だからこそ普段キスをする時からなるべくヴァン
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