薄暗い部屋で一組の男女が交わっている。
男女の喘ぎ声と激しく肉がぶつかり合う音がどっぷりと更けた夜の寝室に響く。
「おら、もっとアタシを満足させてくれよ…。」
「くぅ…激し、い!」
「まだまだ、お前には頑張ってもらうぞ。」
インキュバスである夫の上に跨り、激しく腰を振っている魔物娘は親魔物領の代名詞とも言われるジパングにおいても「怪物」として恐れられているウシオニ。見るものによっては嫌悪感すら抱かせてしまう禍々しい蜘蛛の下半身と腰につけられた髑髏、それとは対照的に緑色の肌をした美しい人間の姿をした上半身と端正な顔。人間型の魔物娘にはないその強烈なギャップや魔物らしさを見る者に印象付ける。
「アタシの、疼きを沈めてくれ…」
ウシオニはそのグロテスクな八本の蜘蛛の脚を器用に使って夫を圧倒的な力で組み伏せ、全身の筋肉を使って叩きつけるように夫の腰に自身の腰を押し当てる。腰がぶつかり合うたびに生々しい音と、溢れでる愛液がペニスによって撹拌される淫猥な水音が聞こえてくる。彼女の蜜壺に差し込まれたインキュバスの男性器が折れてしまうかのようなその強く激しい腰使いは愛情を確かめ合うようなものではない、ただ一心に己の性欲を解消するだけに行っているに等しいものだった。
「ごめっ…もう、出る!!」
「あぁん?相変わらず情けねえ…だが、出るってんならアタシが徹底的にしぼってやるよ…♪」
まるで嵐のように迫る快感と抗うことすら無駄だと悟らせる力で翻弄するウシオニに男は情けなく降伏を宣言する。
既に数え切れないほど褥を共にしていてもこの快感と人外の力にインキュバスが勝てるわけがない。情けないが性交が始まったその瞬間から人間であろうがインキュバスであろうが男は彼女たちが満足するまで精液を吐き出し続けるだけの存在、まるで捕食者と被捕食者のような一方的に貪られるような関係になってしまう。
一方のウシオニは愛しいオスを降伏するまで追い込んだことが嬉しいのか、見る者に恐怖すら感じさせる怜悧な笑顔を顔に張り付けながら上機嫌に腰をくねらせる。その動きに連動するように膣内はよりいっそうきつくペニスを締め上げ、夫の射精を誘う。その動きには一切の容赦は無くただただ組み伏せたオスから精液を搾り取ると言う目的のためだけに動いていた。
「あぁっで、でるっ!!」
びゅるっ…びゅくっびゅく
「はあ…お前はだらしねえのに、本ッ当に精液の味は一級だよ。うめえ♪」
ウシオニは目を瞑り剛直から弾けた子種を子宮で受け止めつつ、その味をかみしめる。愛する妻に魂まで吐き出したかのような射精を終えた夫は身動きの取れないままぜえぜえと荒い息を吐く。今夜七回目の射精を妻の胎内に終え、じんわりと全身に疲労が男を襲っていた。いくら性に特化したインキュバスにとってはいえ、常に人外の力にさらされ文字通り“犯され”つづけることで体力は確実に減っていた。
「よ〜し、アタシの体も温まって来たし、今晩も楽しもうぜ
#9825;」
だが、魔物娘の中でも並外れて強い性欲を誇るウシオニにとってこれくらいの性行為はまだまだ序の口。やっとエンジンがかかって来たにすぎない。その証拠に未だに一回も彼女は深い絶頂には達しておらず、夫の精液を楽しむ余裕さえある。むしろその性欲に火が付き、今まで以上に好色で嗜虐性に満ちた熱い視線を身動き一つ取れない夫に向けている。
「まあ、例えお前が嫌だと言っても無理矢理アタシが犯してやるがな
#9825;」
こうしていつものようにウシオニの激しい行為は一晩中続けられるのであった。
ドォンという低い爆発音が辺り一面に響き渡り、『銅島花火工房』と楷書で書かれた木製の看板がびりびりと振動する。工房の受付で書類をまとめていた銅島武志はまたかと思いつつ、目線を上げて窓から見えるプレハブへと視線を移した。
爆発が聞こえてきたのは年季の入った自宅兼販売所に使用しているこの建物とは違い、庭にいかにも最近建てられたといった風貌の簡易なプレハブからだ。そこは花火師であり妻である銅島葵の作業場である。
「あ〜ちっくしょう、またやっちまった!!」
プレハブから様々な色の煙と共に葵が元気な様子で出てくる。本来であればこのような爆発は危険な事故であるし作業者の安全や辺りへの被害を気にするものなのだが、いかんせん妻はこの程度の爆発で傷つく様なやわな魔物娘ではない。なんといっても葵はこのジパングでさえ恐れられることのあるウシオニなのだから。苦々しい顔をしながらこちらに向かって厳めしい八本の脚で歩いてくる妻はまるで何も無かったかのようだ。
花火師である銅島葵と武志が出会ったのは三年前の夏。
武志が何気なく遊びに行った隣の市で開かれた祭りで、葵の作った花火を見たのが切掛けだった。
ジパングでは魔物娘によって作られる
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