アヌビスという魔物娘を想像した時、みなさんはどんな姿を想像されるだろうか。
煌々と太陽が照りつける砂漠で多くの臣下を引き連れ、ファラオの住む遺跡を守護する魔物娘。
このジパングではそうそう見ることのできないようなエキゾチックな顔つき。ジパングの住人にも負けず劣らない漆黒の美しい髪。露出の多い服から覗く褐色の肌。その気高い雰囲気とは対照的な可愛らしい獣耳と手の肉球。そして褐色の肌をさらに美しく魅せる黄金の装飾具。
これらがアヌビスとして知られている魔物娘の一般的なイメージではないかと思う。
「珍しく私が来る前に起きていると思ったら…。休みだからといってぼうっとするんじゃない!」
だがこのアヌビスという魔物娘は、実はこのジパングにも古来から住んでいたのをみなさんはご存じだろうか?
多くの豪族や有力者が小国を興し、武力を持って土地を治めていた時代がジパングにもあった。それらは諸説あるが、大和の大王だとかカリスマ的な政治力を持った女王だとかが統一するまで続いていたのだそうだ。
そんな混沌とした時代に、大陸に広がる『絹の道』を通って西にある砂漠の国からジパングにたどり着いたものたちがいた。
「おい、聞いているのか?服に着替えて早く顔を洗ってくるんだ!そして脱いだ寝巻は私に寄越せ!!」
最近の調査によって分かったことだが、西の砂漠の国を落ちのびた王が新天地を求めてこのジパングに訪れたのだそうだ。
その王が引き連れてきた配下の中に何人かのアヌビスがいた。
最初は王にしかアヌビス達は仕えなかったが、長い年月が経ちアヌビスの個体数が増えたことで、王以外のジパングの有力者の墳墓を守り始めたと推測されている。簡単に言えば土着したのだろう。
「ええい、相変わらずいい匂いの脱ぎたて寝巻め。今日は寝顔を堪能できなかったからせめて…わふん。何をじっと見ているんだ。さっさと洗面所へ行け!!」
確かに砂漠の国の様な世界遺産級の墳墓は無いが、このジパングには意外にも墳墓は多い。その存在は既に人の生活に溶け込んでいたり、元から自然の丘であるかのように思われているものさえある。しかし、その中でも『古墳』として古来より認識され、歴史に埋もれず忘れ去られていないものもある。
例えばその墳墓から歴史的な資料が発掘されたり、そこに眠る有力者がこの国を治める者の祖先である場合などである。
ただ、それは表側の真相。
その墳墓全てがアヌビスに守られ、後世に伝えられていたというのが本当の真相だ。
「ふう…堪能した。さあ、身なりを正したなら朝御飯を食べるぞ。お義母さ…叔母様が待っておられる。」
その事実は、現魔王が代替えするその時まで伏せられていた。
元来アヌビス達は墳墓に侵入するものには容赦がないが、無闇に人を襲う魔物では無かっただけに上手く人の社会に溶け込んでいたようだ。
そんな時代が続いた後、魔王が代替わりし魔物娘が大っぴらに人間と共存する社会となり、アヌビス達はこの国の人間にその存在を認知されるようになった。
ジパングのアヌビスが固有種と呼ばれるのには様々な理由があるが、その最たるものは容姿が違う事だろう。ジパングに住むアヌビス達の外見は砂漠の遺跡に住むアヌビス達とは一線を画している。それはジパングの温暖湿潤気候に適応し、進化した姿だというのが学者の定説だ。
では彼女たちはどんな姿をしているかというと、第一に褐色の肌は色素が薄くなり、黄色人種が日焼けした程度、健康的な小麦色になっている。
第二に山間部や森林が圧倒的に多いジパングでの戦いに特化するために、元のアヌビスよりも小型になったとされている(勿論個体差があるので一概に全てのアヌビスが小さいわけではない)。
第三に小型化により尻尾が短くなっている。またその影響で尻尾を支える筋肉が減り、ジパングのアヌビスはほぼ例外なく巻き尾である。
第四にジパングでは黄金の装飾は目立つため、身につけてはいない。代わりに翡翠などで作られた勾玉をしている場合が多い。
こうしてみるとアヌビスとかけ離れているように思うが、規則や約束にうるさかったり、人を徹底的に管理しようとする。様々な呪いや力を行使出来たり、理知的で高い知性を持つといった根っこの部分は変わらない。
ほとんどかけ離れた容姿だが、美しい黒髪も変わらず、美しい黒髪をしている。
ちなみにマミーの呪いは使えるらしいが、日本の湿潤な環境には適さないので使用しないそうだ。
「…先ほどからぶつぶつと、本当にどうしたのだ?ま、まさか病気か!?」
「大丈夫だから落ち着いて…おすわり。」
「わふん。って犬扱いをするんじゃない!何度言ったら分かるのだ!!」
そう、毎朝こうやって起こしに来る口喧しい彼女、柴守君代はジパング固有種のアヌビスだ。
これはそんな彼女とその幼馴染の物
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