皆様、本日は当講義に御出席頂きありがとうございます。
人と魔物がより良い関係を築くための団体、『MAOW』。
我々が主催となって行う講義も、今回で早8回目となります。
これも皆様のおかげであります。重ねて、お礼申し上げます。
さて、御手元に資料はございますでしょうか。
もし見当たらないようでしたら、近くの係員にまでお知らせください。
今回の講義は、『デビルバグとの生活』です。
デビルバグといえば、皆様も一度は御覧になったことがあるでしょう。
ティッシュが詰まったゴミ箱を漁る彼女達の姿は、もはや馴染み深いものです。
彼女達は姿を消す魔術を用いて、色んな場所に潜んでいます。
食器棚の裏に、壁の隙間に、ベッドの下に。その数も人間とは比べ物になりません。
よく『一匹見たら、三十匹居ると思え』と言われますが、実際はもっと多いです。
資料の3ページをご覧ください。『MAOW』が調査した統計が掲載されています。
いかがでしょう。こちらに記載されているように、デビルバグの数は、
各家庭に平均して54匹はいるであろうという結果が出ています。
ただし、これはあくまで家の中に潜むデビルバグの数だけですので、
世界中にいる彼女達の数を予想すると、ざっと320億匹と云われています。
目玉が飛び出してしまいそうな数値ですね。ですが、本当はもっと多いかもしれません。
資料の5ページをご覧ください。
何故、そこまで彼女達は莫大な数を有しているのか。
それは彼女達の繁殖方法が、他の魔物と一線を画しているためです。
ひとつに、彼女達はハーレムを拒みません。
ラージマウスと同じ様に、一人の男性に複数のデビルバグが求愛するのです。
母体が多くなるため、必然的に子供の数も増えるというワケですね。
ふたつに、妊娠しやすいという点です。
人間ほどではありませんが、他の魔物と比べると、着床する可能性が非常に高いです。
これには多説ありますが、我々が最も有力と思える説を挙げますと、
細胞の構造が単純であるため、他の種を受け付けやすいのだと云われています。
みっつに、子沢山なことです。
一度の受精で、彼女達は多くの子供を身篭ります。
ほぼ双子か三つ子を授かり、一子の方が珍しいというくらいです。
最も多い例では、七つ子が確認されています。噂では、十三という話もあります。
先程お話した妊娠しやすいという特徴も合わせ、彼女達は多くの子宝に恵まれるのです。
よっつに、近親相姦に抵抗がないという点です。
親子間での性交は、魔物を妻とする家庭において珍しいことではありません。
しかし、性欲に従順な彼女達は、その中でも特に節操無しな部類に入ります。
両親のセックスを見れば、娘は自分も愛してほしいと、二人の間に割って入ろうとします。
母親の面影がある娘の若い肢体に、父親はたちまち虜になることでしょう。
そうして愛し合う父娘を見て、母親は娘に恋人を盗られまいと、激しく燃え上がります。
止める者のいなくなった乱交は、母娘に大量の精液を流し込む結果となるのです。
以上が、彼女達の繁殖方法です。
これだけ子を作ることに適した条件を持つ彼女達です。
320億という数字も、納得頂けるのではないでしょうか。
さて、デビルバグの数の秘密が見えたところで、次に移ります。
資料の8ページをご覧ください。彼女達の姿が掲載されたページです。
これは、愛する夫を挑発しているデビルバグの姿を描いたものです。
なんとも愛らしいですね。四つん這いになって、誘うような視線を送っています。
今更ではありますが、こちらが彼女達の容姿となります。
栗毛色の髪と瞳、長い触角、昆虫のような羽根と手足、そして煽情的な服装。
皆様の中には、この姿を毎日目にしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
彼女達には、個体差というものがほとんどありません。
身長もほぼ変わりません。せいぜい、胸の大きさと髪型くらいのものです。
これは先程もお話した通り、デビルバグは細胞の構造が単純なためです。
そのため、容姿、性格ともに、他と大きく異なるデビルバグは非常に稀です。
ある学者によると、これは彼女達が生物としての完成形であることの証なのだそうです。
皆様、一旦資料を置き、こちらをご覧ください。
こちらは視覚情報記録水晶『でーぶいでー』と呼ばれるものです。
我々『MAOW』と提携している、たんたんタヌキ商会より提供頂いた魔法具です。
『でーぶいでー』の詳細につきましては、資料末尾の広告をご参照ください。
今から、とある映像を流します。正面の白い壁に注目して頂けますでしょうか。
出ましたね。見ての通り、デビルバグがゴミ箱を漁っています。
これは、デビルバグが家庭に住みつく過程を再現した映像です。
…あ、いえ、違います。今のは別
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