…お婆ちゃんのメモによると。
牛の乳搾りは、次のように行うらしい。
◆◇◆◆◇◆牛のお乳の搾り方◆◇◆◆◇◆
・用意するもの
乳搾り用バケツ、ミルクタンク、タオル
・搾り方
1.お尻側の乳頭二つを掴む。
(慣れないうちは片側ずつで良い)
2.親指と人差し指で輪っかを作る。
3.輪っかを乳頭の根元に当て、握る。
(強く握らずに、固定する程度)
4.中指から小指まで、順々に握っていく。
(それぞれ半拍ほど間を置いて握ること)
5.ミルクが出るが、2,3度目までは捨てる。
お乳の中のバイ菌を洗い出すためである。
6.お乳の下にバケツを置く。
7.バケツいっぱいにお乳を搾る。
8.ミルクをタンクへと移す。
9.一つ隣の乳頭へ手を移す。
(頭側まで行ったら、またお尻側へと戻る)
10.適量が搾り終わるまで、7〜9を繰り返す。
(1頭につき、最大タンク1本まで)
11.最後に、乳頭を綺麗に拭う。
※牛をリラックスさせた状態で搾ること。
まめに身体を撫でたり、声を掛けるべし。
また、牛の体調が悪い時には行わないこと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以上が乳搾りのやり方だ。
少し説明が長いけれど、場面々々は想像に易い。
お婆ちゃんが搾っているのを見たことがあるし、
僕自身も、実際に何度か搾らせてもらったことがある。
思い出を頼りに、この手順と照らし合わせながらやれば、
まず失敗することはないだろう。それくらいの自信はある。
問題があるとすれば…。
「お待たせしました、ソラ様」
ぺこりと頭を下げて、準備が終わったことを告げるミーファさん。
僕はノートを閉じ、促す彼女の右手の先へと目を向ける。
彼女の手が示す先。
そこには…胸を剥き出しに、四つん這いになったももの姿があった。
胸の下には小さなバケツ。大きな字で『乳搾り用』と書いてある。
傍らにはタンク。なるほど、あれに搾ったミルクを入れるのだろう。
確かに、牛の乳搾りを行う際の準備だ。100点満点だ。
お婆ちゃんのメモに書かれた道具も、ちゃんと用意してある。
さすがはミーファさん。ベテランのメイドさんなだけあって、完璧だ。
…ももが、牛の姿であるならば。
「…お気に召しませんでしたか?」
分かってて言っているのだろうか。
お気に召すも何も、なぜ彼女をあんな格好にしたのか。
なぜかズボンまで脱がされて、すっぽんぽんのもも。
どう見ても恥ずかしそう。耳の先まで真っ赤っかだ。
いや、確かに全部が間違っているワケじゃない。
バケツもタンクも必要だし、脱がさなきゃいけないのも分かる。
僕が言いたいのは、どうして四つん這いになんてさせているのか、だ。
搾るだけなら、彼女は椅子に座っていたっていいのだから。
「…ですが、ソラ様」
思ったことをそのままに、ミーファさんへと伝えると。
彼女は困ったような表情を浮かべながら、指先で眼鏡を持ち上げた。
「私は、もも様にあの恰好をして頂くのが最善と思いますが…」
あの恰好が最善…? 四つん這いが?
どうにも納得のいかない僕は、彼女を問い詰めた。
なぜ、四つん這いが最善と思うのか。その理由は何か。
「…では、座ったままやるとして…」
ちらりと、横目でももを見るミーファさん。
「ソラ様は、もも様の胸をどのように搾るおつもりですか?」
…どのように、って…。
それは……その、前から…。
「向かい合った状態で、なさるのですか?」
ゔ…。そ、それはちょっと恥ずかしい…。
なら、互いの表情が見えないように、後ろから…。
「後ろからですと、身体を密着させなければ手が届きません」
彼女の返答に、言葉に詰まる僕。
確かにその通りだ。座ったままで搾るのは、色々と問題がある。
ミーファさんは、その辺りをちゃんと考えて、あのようにしてくれたのだ。
僕は少し、頭に血が上っていたのかもしれない。
ももを四つん這いにさせた彼女に対し、侮辱していると思って。
筋違いもいいところだ。僕は俯き、心の中で彼女に謝った…。
「ご…、ご主人様〜…」
不意に、ももが僕を呼ぶ。
なんだろうと思い、そちらへと振り返ると…。
「この体勢、疲れますぅ〜…。胸が重いです〜…」
額に汗を流しながら、細い腕をプルプル震わせるもも。
どうやら、あの恰好は彼女にとって、相当疲れるらしい。
僕は慌てて彼女の元に駆け寄り、大きな身体を支えた。
近付くことで強く香る、彼女の匂い。甘ったるい香り。
ふと、脳裏を過ぎる欲情。密やかに振り払いながら。
僕は彼女へ、辛いなら無理をしなくてもいいと伝えた。
「で、でもぉ〜…」
支える僕の腰に、腕を回しながら。
彼女は声を震わせながら、小さく告げる。
「ご主人様に…お乳、搾ってほしいんです〜
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録