盲目夢精

…僕の世界は、暗闇だった。

生まれつき、目が見えない身体。
パパの姿も、ママの姿も、お姉ちゃんの姿も知らない。

分かるのは…その形だけ。
手で触れ、なぞれば分かる、形だけ。
色も分からない。綺麗なのか、格好良いのかも分からない。
そもそも、どうなっていれば綺麗で、格好良いのかも。
形だけ。丸や、三角や、四角を、少し変えたような、形だけ。

触れた場所だけが、僕の中で形作られている、世界。

「…おやすみなさい、ソラ」

お姉ちゃんが、僕に優しく毛布を掛けてくれる。

誰かが教えてくれた。夜は眠る時間だから、ベッドに入るのだと。
だからきっと、今は夜。どんな形かも分からない、夜。
これも、誰かが教えてくれた。夜は暗いのだと。

それでも、夜の世界は、僕が見ているものとは違うはず。
明かりがあるから、夜の世界が暗いって分かる。
僕は、誰かに教えられるまで、この世界が暗闇ということも分からなかった。

僕の世界に、明かりは無い。

……………。

…他の人は、僕が分からないことを、どれくらい知っているんだろう。

僕が分かることは。
例えば、男というのは、僕みたいな身体の人のことで、パパもそう。
おへその下、2本ある足の内側のところ。オチンチンが生えている。
柔らかい、指に似ているけれど、自由には動かせないところ。それが男。

逆に、女というのは、お姉ちゃんみたいな身体の人のことで、ママもそう。
胸が男より膨らんでいて、柔らかい。男は平べったいのに、女は丸い。
柔らかいと言えば、パパの身体は固いけれど、お姉ちゃんやママの身体は柔らかい。
僕のも柔らかいけれど、男は大人になると身体が固くなるって、パパが教えてくれた。

それも不思議だけれど、もう一つ不思議なのが、女にはオチンチンがないこと。
初めは嘘だと思ったけれど、お姉ちゃんが教えてくれた。本当だった。
お姉ちゃんは、他の誰にも聞いちゃだめだよ、って言っていた。
それは恥ずかしいことなんだよ、とも。声を潜めながら。

……………。

…僕は、恥ずかしいということはどういうことか、少し分かる。
お姉ちゃんが僕に、恥ずかしさといものを教えてくれたから。

その一番最初は、用を足すとき。
これはなんとなくだけれど、既に恥ずかしいものだと分かっていた。
ママが、トイレのドアは閉めるように、付き添ってくれていた時、いつも言っていたから。
用を足すときっていうのは、見られちゃいけないものなんだって思った。

ある日、僕は…お姉ちゃんがトイレの中にいるのに、入ってしまった。
ノックはしたけれど、気が付かなかったみたいで、誰もいないと思って…。
一歩、中へ足を踏み入れた時、お姉ちゃんの小さな悲鳴で気付いた。
謝って、慌てて出ようとしたけれど、僕の腕を誰かが掴んだ。

―…先に、していいよ。ソラ…。

…僕の背中に回り、少し前に押して……ズボンとパンツを下ろす、お姉ちゃん。
そして…オチンチンを掴んで…たぶん、トイレがある方に向けてくれた。
僕がまだ、一人で何もできない頃…ママがしてくれたやり方と同じ。
でも、何故か、すごく…変な気分だった。初めての、恥ずかしいという気分。
一人のはずの空間で、誰にも見られず用を足すというルールが、破られている。

……最初は、恥ずかしかったせいか、全然出なかったけれど……
しばらくしたら…いつものように、おしっこがオチンチンを通る感触とともに、
ちょろちょろと……水が跳ねる音が、僕の耳に届いた。用を足す音。

……………。

…でも、それもすごく恥ずかしかったけれど…、
一番恥ずかしいと感じたのは、3ヶ月前の夜の事。

あの日、もう僕は眠っていたのだけれど、誰かに身体を揺すられて、目が覚めた。

―…ソラ。

声で、お姉ちゃんだとすぐに分かった。
でも同時に、どうしたんだろう、という疑問も浮かんだ。
夜は眠る時間。僕も、パパも、ママも、お姉ちゃんも。

…お姉ちゃんは、何も言わず、僕のベッドに入ってきた。
僕はお姉ちゃんが好きだし、前は一緒に寝ていたこともあった。
だから、今日は一緒に寝てくれるのかな…と思って、嬉しくなった。

―…いいこと、教えてあげる…。

でも、そうじゃなかった。
お姉ちゃんは、トイレでもないのに、僕の下を全部脱がした。
お風呂やトイレ以外で裸になるのは…恥ずかしいこと…。
その時の僕は、既にそれが分かっていたから、すごくびっくりした。

―気持ち良いこと、してあげる…。他の人には、ナイショだよ?

…今でも守っている、そのナイショのこと。
お姉ちゃんは僕のオチンチンを…指で、くにくにと弄りだした。
おしっこをするときの、掴むそれとは違う、奇妙な触れ方…。

それだけでなく、お姉ちゃんは僕の上も脱がして、裸にした。
そして、僕のおっぱい
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