第四十六記 -サキュバス-

…歪んでいた景色が…何かの形に戻っていく…。

「…わぁ…」

感嘆を漏らすドラちゃん。
それはみんなも一緒で…目の前に広がる風景に、ただただ驚いた。
さっきまで、私達は暗い洞窟の中を進んでいたはずなのに、
その奥にあった…歪みのようなものを通り抜けたら、
大都市に匹敵するような街並みと、大きな宮殿があるなんて…。

「ここが……万魔殿…」

呟き…翼を広げ、ふわりと浮かぶサキュさん。

「……魔物と男で溢れかえってるわね、街の中」

「ほとんどが堕天使達…。ある意味、壮観だわ」

万魔殿。

バフォメットによると、ここは天界から堕落した神様が創り上げた場所で、
常に今という時間を刻み続けている、世界の理に反するところ…らしい。
難しくて、いまいちよくは分からないけれど…簡単に言えば、
ここでは歳を取ることも、飢え死にすることも無い…と、うーちゃん談。

そんな不老不死の場所で、堕落した神様達は何をしているかというと…
やっぱり、昼夜問わずエッチなことを延々としているらしい。
よくよく見れば…街の入口らしきところでも、恥ずかしげもなく、
むさぼるようにエッチしているカップルの姿がちらほら。
サバトの集会もすごかったけれど…ここも凄まじそう…。

「…とりあえず、街に入る。ここで棒立ちしていても始まらん」

あーちゃんの言葉に頷き…、私達は、嬌声の響く街の入口へと向かっていった…。

……………

………



「あぁんっ
#9829; もっとぉっ
#9829; …あら? 外からのお客様なんて、珍しい…
#9829; はぁんっ
#9829;」

「うおぉっ!? あれ、リリムか!? うひー、チョーマブ〜
#9829;」

「やぁぁんっ
#9829; ダーリン…浮気なんてしたら、天罰よぉ…っ
#9829; きゃうんっ
#9829;」

「……うっぷ…」

…早くも、おねえちゃんの気分が悪そう…。
私も村にいた頃だったら、同じ風になっていたと思う。
街中の至る所で、これだもん…。ここの噴水広場は、特に数が多いし…。

「ソラ。街の探索に当たって、グループを分けよう」

方針を提案してくれるあーちゃん。本当に頼りになる指揮者。

「グループは2つ。宿を探すグループと、情報を集めるグループだ」

「宿を探すグループは、10人泊まれる、出来るだけ先々まで空きがある宿を探すこと」

「場所、部屋割りは問わない。宿泊は一先ず今夜のみ。部屋は平均的なものを選択」

「情報を集めるグループは、酒場や道具屋等を訪れ、治療に関わる情報の収集を行う」

「情報交換の際に金銭等を求められた場合は、グループ長と相談すること」

「また、その場で治療が出来るのならば、直ぐにこれを依頼する」

「そのため、こちらのグループには必然的にリムが加わる」

「各グループは、任務達成か指定の時間になり次第、この広場に集合」

「…時計は……普通に動いているな。道具に影響は無いらしい」

「指定の時間は16時丁度に定める。遅刻は理由の無い限り避けろ」

「なお、どちらのグループも、ソラ及びミーファが単独行動にならないよう注意すること」

「…何か質問は?」

確認に……手を上げたのは、ももちゃん。

「グループ分けは、どうするんですか〜?」

「異論が無ければ、次のメンバーで考えている」

「宿を探すグループが、クノ、うー、もも、ドラ、メディ…」

「情報を集めるグループが、私、ソラ、ミーファ、サキュ、リムだ」

それを聞いた途端、メディちゃんの顔色が変わる。

「ちょっと! なんで駄犬がソラと一緒で、わたくしは違うんですの!?」

「貴様に、情報を集めるために必要な交渉術があるか? 阿呆蛇」

「うぐっ…」

そしてあっさりと論破される。…ちょっと可哀想…。

「…各々に護衛役、魔術に長けた者が居る。異論は無い」

「クノ、そちらのグループの長は任せた」

「承知した」

「では、解散。各々の検討を祈る」

……………

………



「ようこそ、教会へ。盛る子羊達よ、如何なさいましたか?」

古い木造りの扉を開くと…煌めくステンドグラスの下で、手を組み私達を迎えるシスター。

「まあ。魔王の娘様がお見えになるなんて、この教会は祝福されていますわ」

リムさんの姿を見るなり、手を胸に当て喜ぶ…ダークプリースト。
ゆさっ…と揺れる胸に、見ちゃいけないと思いつつも、どうしても目が行ってしまう。

「娘様と…お二人は、お連れの方でしょうか。我が教会に、どの様な御用ですか?」

「誰が連れよ。こんなのと一緒にしないで」

「まあ…。では、お友達ですか?」

「違うわよっ!」

……作りは人間の教会と似てるけれど…やっぱり細部は、色々と違う。

例えば、シンボルが…十字架じゃ
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