第四十一記 -マンドラゴラ-

「リムの身体を治すぅ?」

私の提案に、サキュバス…サキュさんが、とても嫌そうな声を上げる。

…帰ってきて早々、皆への謝罪やお礼をたくさんした後に、作戦会議。
久々の我が家、その客間に集まる12人。はじめての2桁。
そこそこ広い部屋だけれど、この数だとかなり狭く感じる。

「身体を治すって、つまり…ペニスを消すってことでしょう?」

身体のことについて、ちゃんと本人からも、言っていいかの許可は貰ってある。
あれはリムさんにとって、自分自身では治すことのできないコンプレックス。
それをずっと抱えていくのは、とても辛いこと。どうにかして治してあげたい。

「私は反対よ。それにソラ、貴女、何をされたか本当に分かっているの?」

「そいつと友達になったって言った時も、面食らったけれど…」

「いくらなんでも御人好しすぎるわ、ソラ。やめておきなさい」

…何をされたか。もちろん、分かってる。
白い髪。赤い瞳。背中には羽の紋様。耳も少し尖った。
性格も、ちょっと…我ながら、大胆になったような気がする。

身体が魔物に近付いた証拠。

「…私も、その人は信用したくない」

サキュさんの言葉に続く、おねえちゃん。

…帰り道、お姉さん、って呼んでたら…昔の呼び方のほうがいいな、って言われた。
だから、また戻して、おねえちゃんって呼んでる。私も、こっちのほうが好き。

「でも、ソラちゃんがそこまでしてあげたいって思う相手なのなら…」

「私の誤解かもしれない。信用してみたいって意味でも、私は、賛成」

「ご主人様〜、私も賛成です〜」

「ごしゅじんさま…」

「私も賛成します。ソラ様が信じる方なのなら…」

「うーもサンセーだよーっ♪」

「ソラの望みなら、何であろうと賛成ですわ」

おねえちゃんの賛成を皮切りに、怒涛の賛成ラッシュ。
この時点で、決定権を持つ10人中6人が賛成。過半数越え。

…ちら、と……まだどちらの意思も示していない、3人を見る。

「…私はソラと主従の関係だ。ソラに従う」

むすっ、とした表情のあーちゃん。
私が帰った時には、一番喜んでくれたんだけれどなぁ…。
尻尾をすごい振ったり、頬擦りをしたり、顔を舐めてきたり、って。

「甲乙、多勢に従う」

クノさんは…つまり、意見が多い方でいい、ってことかな?

「アタシはどっちでも。そろそろ帰るし」

ぶっきらぼうに答えるのは、オーガ…ガオさん。

ついその場で聞いちゃったけれど、よく考えてみれば、
ガオさんや他の何人かは、この作戦会議にあまり関係が無い。
関係するのは、一緒に旅に付いてきてもらうか、お留守番を頼む、我が家の3人だけ。
他の人達は、皆それぞれの家があって、生活がある。
勝手に巻き込むことはできない。

「アタシも牡探ししなきゃね。まっ、ソラ、頑張りな。元妻として応援してるよ」

「誰が元妻ですかっ! ソラは永遠の乙女なのですわ!」

「ソラ、こいつもついでに連れて帰ってやってもいいぞ?」

「ムキーッ! さっさと帰りなさい! この筋肉ダルマ!」

「はははっ。じゃあな、ソラ」

怒るメディさんを背中に、玄関までガオさんを送って……席に戻り、会議続行。
採決の結果は…ガオさんをぬいて、8対1。賛成多数。

…ちらりと、サキュさんへ視線。

「…何よ。まるで私だけが悪者みたいじゃない」

「誰もそんなこと…」

「あぁ、もう、分かってるわよ! そんな困った顔しないで!」

ユニさんのフォローに、荒れるサキュさん。

…リムさんとは旧知らしいサキュさんだけれど、そんなにリムさんが苦手なのかな?
昔からの友達なら、こういう場面では真っ先に賛成するものだと思うけれど…。
いまいち、よく分からない。昔、何かあったのかな?

「ご主人様〜、誰と一緒に行くんですか〜?」

ももちゃんの言葉に、いの一番に手を上げるメディさん。

「勿論わたくしですわ! ソラの行く先、何処へでもっ!」

そこに続けて、手を上げるうーちゃんとクノさん。

「うー、治せそうなヒトが魔界にいるの、知ってるよっ♪」

「私も、心当たりがある。ハクの屋敷近くに住む御方だ」

またまた続けて、手を上げるユニさんとあーちゃんとサキュさん。

「遠出なら、私の脚がお役に立てると思います」

「大人数になるのならば、私が旅中の様々な管理を請け負う」

「魔界は人間にとって危険よ。ソラは私が守るわ」

更に続けて、手を上げるももちゃんとドラちゃんとおねえちゃん。

「皆で行くなら、私も〜」

「…わたしも…」

「ソラちゃんが危険なところに行くなら、私も付き添うよ」

…気付いてみれば、全員挙手。

「…ちょっと。留守番はどうするのよ?」

「唯一反対だった、貴女が留守番すればいいのですわ」

「何よ! その前に
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