第四十記 -リリム-

…思い出した。

全部。全部、思いだした。
私のこと。村のこと。今までのこと。みんなのこと。

……でも………あの人は、誰…?

「はじめまして、ソラ
#9829; 御機嫌いかが?」

妖しく艶めかしく、身体のラインを強調した黒い服と、
そこかしこにさらけ出された、対照的なまでに白い肌。
それを彩る、角と、翼と、尻尾。そしてたくさんのハート模様。
どこをどう取っても、色っぽさが隠せない魔性の姿。

魔王の娘、リリム。

「……あぁ…もうっ…
#9829;
#9829;
#9829;」

腰を屈めて、私の首に細い腕が絡まる。

むわっ…と香る……大人の女性の匂い。すごく濃い。ううん…濃すぎる。
ドラちゃんの花の匂いよりも濃い。今まで出会った、どの魔物とも比にならない。
それを一番…私の身体が、証明してる。正直過ぎるほど…なにもできないまま…。

「ソラッ
#9829;
#9829;
#9829; あぁ、ソラッ
#9829;
#9829;
#9829; 私の大切な人っ
#9829;
#9829;
#9829;」

不意に、ぎゅうっ…と、やわらかい胸の中に…強く抱きしめられる。

ほほに感じる、ふにゅっとしたあたたかいもの。
もちもちしてて、肌に吸い付いてくるみたいな…。
吸う息は、全部リリムの匂い。あまいにおい。いいにおい。
くんくん…ってしたくなる。くんくん。くんくん。

触覚と嗅覚が…しあわせ……。

……………。

………でちゃい……そう……。

「ふふっ…
#9829; とろけた顔しちゃって
#9829; かーわいいっ
#9829;」

……………ぁぅ……っ。

「…? ………あっ
#9829; ……ふふっ
#9829; うふふふふっ
#9829;」

「…もう、ソラったら…
#9829; いくら私が魅力的だからって…
#9829;」

囁き、くすぐる声…。聴覚までしあわせになりそう…。
声って、こんなにきもちよく感じるものなんだ…。

「うわー…。俺、リリムって初めて見たよ」

たくさんの声が、周りから聞こえる…。

「やべっ…。な、おいっ、ちょっとそこの路地入ろうぜ」

「えっ? ダーリン、どうしたの急に? コンサート行くんでしょ?」

「いいから早くっ。今はコンサートよか、お前の歌だ。足コキ付きでなっ」

「きゃっ! もぉ…ダーリン、急に興奮しすぎぃ〜っ
#9829; このスケベーッ
#9829;」

私達を、見てる…。

「うおぉ〜。オッパイでけぇぇ〜っ」

「………」

「…痛っ!? ちょ、ティスちゃん!? 鎌! 鎌刺さってる!」

「………」

「いや、ティスちゃんの胸もおっきいよ!? でもさ、ほら、アレはさすがに…」

「………」

「痛い痛い痛い痛いッ!!! 違うんだって! 羨ましいとか思ってないってば!」

………そう、だ……。
ここ……外だ…。

私…何して…。こんなところで……知らない人に…。
急に頭が、ぼぅってして………そこから……。

「…ソラ
#9829;」

あ…。

「我慢しないで、もっと出していいから…ね
#9829;」

あっ…
#9829;

「でも、周りにはバレないようにね
#9829;」

あぁっ…
#9829;
#9829;
#9829;

消えていく…。
周りの人達も、恥ずかしさも、何もかも…。
あるのは……目の前の誰かと…きもちよさだけ…。
白い世界。白い世界に、ふたりきり。

………おぼれそうなほど……まっしろ………。

「ソラ様っ!」

…はぅ……ん……
#9829;

「良かったっ…! 御無事で、本当に……本当にっ…!」

…はぁっ……はぁ…
#9829;

「…ソラ様…?」

「ユニコーンちゃんも、ソラのお友達?
#9829;」

「あ、はいっ…。……あの…、貴女は…?」

「私はリム
#9829; …そっちの、人間の子も?」

「………」

「…? ミーファ様?」

リム…さん……
#9829; んぅ…っ
#9829;

「…そっか」

「ミーファさ…」

「ソラちゃんから、離れろ」

「えっ?」

「あら
#9829;」

「ソラちゃんから離れろっ!!」

はっ…
#9829; ………ふとももで……しちゃお…っ
#9829;

「そんなに怒鳴らなくて…んっ
#9829; …怒鳴らなくても、いいじゃない
#9829;」

「あんたが…教団のお偉いさんと同じ顔が…魔物だった時点でっ!」

「それが、ソラちゃんを狙っている時点でっ!!」

「えっ? えっ?」

「…ユニさん」

「そいつ、敵だ。理由は分からないけれど…」

「ソラちゃんを…悲しませた奴だ」

「ッ!」

…ぅぁ…っ…
#9829; おっぱい…みたい…
#9829; ふかふか…
#9829;

「ふふっ…
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