『魔物に捕まると、エッチなことをしてくれる』
そんな噂が、僕達の間では広がっていた。
もちろん、誰もが疑った。信じられない話だけれど、もし本当なら…と期待が湧いた。
信じられない理由は、学校で習ったことと違うからだ。先生が言うことと違うから。
先生が言うには、魔物は人を殺して食べる、って。教科書にもそう書いてある。
でも、先生が言うことは100%本当でもない。嘘を吐いた前例がある。
赤ちゃんはコウノトリが運んでくる…なんて嘘に、僕は10歳まで騙されていた。
本当のことを知った時、大恥をかいた。皆も、そんな経験があるはずだ。
だからこそ、もし本当なら…って期待が生まれてくる。また嘘じゃないかって。
期待してしまう理由はそれだけじゃあない。
僕達が今まで、実際に見た魔物は…美人なお姉さんしかいなかった。
これも皆、そう思ってるはずだ。少なくとも、僕にはストライクだった。
僕が見たことがあるのは、町の近くに出て騒ぎになったスライムと、
3日間だけ町内でいくつか露店を開いていた、キャラバンのゴブリン達。
スライムは、遠目でしか見れなかったけれど、とってもオッパイが大きかった。
僕のお母さんのオッパイも結構大きい方だけれど、それより大きかった。
服も、何も着ていないように見えたし、9歳の頃の僕はすごく興奮した。
それから2週間、毎晩のオナニーは、いつもとは桁違いなきもちよさだった。
あの大きなオッパイを、何度も身体に押し付けてもらう妄想をした。
僕の中の『魔物』というイメージを、大きく変えた思い出の一つだ。
ゴブリンが町に来たのは、12歳の時。
10人くらいの数で、商店通りの近くに工芸品の露店を出していた。
最初は、魔物ってことも知らず、あんまり興味がなかったけれど、
見に行ってきた友達があまりにも、すごい、すごい、って言うものだから、
僕達はサッカーを中止してまで、各々一旦家に帰り、それからお店へと向かった。
その友達が言っていたことは、間違いなかった。皆可愛い子ばかりだった。
僕はすぐさま家に引き返し、漫画を買ったばかりで軽くなった貯金箱を逆さまに、
なけなしのお金を全部引っ掴んで、階段を駆け下り、ドアも閉めずに飛び出した。
息を荒げながらお店に着き、陳列された商品の値札を見ると………一つだけ。
一つだけ、僕の今持つお金で買える、キレイな石を丸く結んだ紐に通した、
普段なら絶対買わないようなそれを持ち…「これください!」と叫んだ。
すぐにゴブリンの一人が僕の目の前に来て、手の中の商品を見、
「はい、40Gだよっ」と可愛い声で話し掛けてきてくれた。
僕は焦りながらもお金を数えて、ぴったり渡した。アホだった。
多めに渡しておけば、お釣りのやりとりもあったのに、本当にアホだった。
そんなアホな僕の手が、ゴブリンの柔らかい手に包まれた。どきっ、てした。
もうそこから、気が気じゃない。お釣りを貰って、何度も振り返りながら帰って。
家に着いて、自分の部屋に入ったら、買った物を机の上に、身体はベッドに飛び込んで、
まだ日も沈んでいないうちから、さっきのゴブリンを思い出し、激しく扱いた。
1日4回も出したのは、それが初めてだった。めっちゃくちゃ興奮した。
その時に買った石は、今でも引き出しの中に大切に保管してある。着けるのももったいない。
…そんな思い出達が、僕に、この嘘のような噂への期待を抱かせている。
あんな美人な…あんな可愛い人達と、エッチなことができるなんて…。
もうそれを想像しただけでも、興奮してくる。今夜も、いつもより激しくなりそう。
が、僕の予想は外れた。
月が高いところに昇るまで、天井を見ながら、考え事をしていた。
悪だくみともいう。僕は、町からこっそり出ようと考えていた。しかも、今夜。
町の近くにだって、魔物はいる。噂の真意は簡単に確かめることができる。
守衛さんが知らない、外への抜け穴だって知っているんだ。難しくない。
エッチなことがしたい…という強い思いが、僕の心を突き動かした。
パジャマのまま、家を出て、夜の町を静かに駆ける。
家の中をこっそり歩いたのも、明りのない町を見るのも、これが初めて。
見回りの守衛さんに出会わないように、裏道を駆使しながら進む。
そして…目的の抜け穴に着き……つばを飲み込んで………身体を、その中に入れた。
………外に出ると……月明かりに照らされる、広々とした草原。
奥には森が広がっていて、どこか不気味な印象が漂っている。
そして、点々と映る…人間じゃない、と分かる程度の、うごめく影。
魔物だ。3,4人程度の魔物が、僕の見える範囲にいる。
…もう一度、僕はつばを飲み込んで……影の中のひとつに、そろり、そろりと近付いた。
身を隠せるような物が何もなく、近付くに連れ、恐怖が湧き上がっ
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