「…稲荷神社へようこそ。旅の御方」
紅白の衣装…巫女装束を纏った黒髪の女性が、襖の影より静々と現れる。
稲荷神社に身を置く巫女の一人、名を紀伊 津祢月。
病避けの呪符作りや除霊術に長け、信者らの相談役を主な務めとしている。
「夜分に申し訳ございません…」
「九尾様は沈みゆく月もまた美しいとお考えです。…御用件は?」
暗がりの部屋に映える、白を纏った人獣…。
その腕の中から下ろされる…一人の少女。
蝋燭のぼんやりとした灯が、うなされた寝顔を照らす。
「狐火に憑依されたらしいのですが…」
「狐火に、ですか」
「本人がそうとおっしゃていました。7、8時間前のお話です」
「7、8時間前」
「はい」
「その間は何を?」
「……それは…」
目を伏せ、言葉に詰まるユニコーン。
その様子から、巫女、ふたつ小さく頷き、尋ねる。
「身体を交じらせましたか?」
「っ!? ど、どうして…!?」
目を閉じ、巫女は流暢に語る。
「九尾様は倒錯した愛もまた美しいとお考えです」
「更に言えば、ここジパングでは、倒錯した性癖の方が溢れています」
「少年が好きな男性もいれば、筆と半紙に愛を見出す女性もいます」
「そのような土地にて、貴女は何を恥じる必要がありますか?」
「……は、はい…」
紅白の説教じみた問い掛けに、白は気圧され相槌をひとつ。
「…当ててみせましょう」
「えっ?」
「そちらの少女には…男根があります。そうですね?」
…返らぬ答え。ただ、呆気に。
「どうして…などと、細かい詮索は致しません」
「ただ、これは稀ながらも、いくつか前例のあるケースです」
「例えば、息子が稲荷を娶った夫婦のお話ですが…」
「夫婦共に特殊な性癖で、妻が張り型を付け、夫を愛でていたのです」
「ある日、妻が息子のお嫁さんに対し、男根を生やせないかと尋ね…」
「幻術に長けていたその稲荷は、申し出を受け入れ、叶えました」
「それから毎夜、夫婦は新婚当時のような熱い夜を過ごしました」
「ところがある晩に、その熱気に誘われたのか、一匹の狐火が…」
「腰を打ちつける妻の身体に憑依したのです」
「普通ならば、そのまま妻は狐憑きへと変わるのですが…」
「いつも以上に熱帯夜にはなったものの、何故か、身体は変化しませんでした」
「それは狐火にとって想定外な、『女性の悦び』がとても薄かったことが原因です」
「つまり、いくら男根を刺激しても、それは『男性の悦び』であり…」
「『女性の悦び』を得られない狐火は、宿主の身体にうまく癒着できないのです」
「なお、先程の妻については、稲荷が解呪したところ、狐憑きになったそうです」
「…どうでしょう? 心当たりはありませんか?」
しばらくの沈黙の後…、白い肌が、夕日に染まる海以上に紅潮する。
「それが悪いと申してはおりません。ですが…これはお節介とは思いますが」
「この子は、まだ『女性の悦び』を知ることが必要な年齢と思います」
「狐火がなくとも…。九尾様も、きっとそうおっしゃるのではないでしょうか」
「………」
「…お二人の関係を思うのならば、除霊がよろしいのでしょうか」
「……お願いします…」
「わかりました。では、おひとつだけ伺います」
「除霊をする場合、身体から狐火を出すために男根を消すのですが…」
「術で生やしたものならば解呪、薬ならば解毒が必要です」
「どちらの手段で生やしたものですか?」
「えっ…」
「恥ずかしがらずに」
「………その…」
「はい」
「ソラ様のは…元々です……」
「…はい?」
「生まれた頃から…だそうです…」
「………」
「………」
「…冗談ですよね?」
「いえ…」
「確認してもよろしいですか?」
「そ、それは…ソラ様に聞いてみないことには…」
「御本人はお話できる状況ではないようなので、確認させて頂きます」
「えっ!?」
「失礼します」
たくし上げられるスカート。
「もうひとつ」
ずり下ろされるパンティ。
「……生やしたにしては……可愛い大きさですね」
「………」
「信じましょう」
「あ…ありがとうございます…」
「こうなってしまうと…除霊の方法を変えなくてはいけません」
「どの様にするのですか?」
「『女性の悦び』を与え、一度癒着させます」
「えぇっ!?」
「そうしてから、狐火が唯一コントロールできない男根を刺激し…」
「『精』と共に放出される狐火の魔力を、私の体内にまとめ、解放します」
「つ…つまり、それって……貴女が…ソラ様と…」
「稲荷の巫女である以上、狐火をただ消滅させるようなことは出来ません」
「貴女では狐火の魔力を集めることはできないのです。御理解くだ
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録