第十五記 -ウシオニ-

ある日、一匹のウニオニが山から下りてきた。

あぁ 腹が空いたねぇ ニンゲンはどこかねぇ

人里離れた山の裾。しかして香る牡の匂い。
鋭い八つの足を地に、手繰り手繰られ魅惑の下へ。

濃い匂いだねぇ こりゃあ溜まってるねぇ

足取り軽く、地を抉る。
後に残るは無数の穴凹。

あれかねぇ あれみたいだねぇ

しばし歩けば、拝むは藁葺き。
街道沿いに、ぽつんとひとつ。

ごめんよぉ ごめんくださいよぉ

扉は空けぬ。たたっ壊す。がらんがしゃんと崩れ落ちる。
中には初老の男が一人。囲炉裏であんぐり、ただ呆気。

老けてるねぇ でも喰えればいいさぁ

ぐっと尻上げ、狙うは生餌。先から迸るは蜘蛛の糸。
逃げる暇もなく、雁字搦め。慌てふためき、暴れる男。

ひゃあ 妖怪だぁ おたすけぇ

身体を倒し、芋虫の如く。這って逃げねばと身体をくねらせ。
そんな餌の動きをウニオニ、滑稽滑稽と笑うばかり。

山まで帰るは面倒臭い 今ここで喰おうかぁ

糸を更に吹き掛け纏わせ、壁に張り付く男の繭。
鼻穴だけをさらけ出し、呻き嘆きは言葉にならず。

さぁさぁ 見せておくれよ お前さん

一番前の短い脚が、男の股間の縛りを破る。
太さ長さ山芋のような、へたれた男根、表に出でる。

怖がらせたねぇ 悪かったねぇ

破いた糸をひょいとすくい、前足四本、これを解く。
それを男根に絡めては、またぐるぐると縛り上げる。

ほうれ ほうれ 我が油の滲みた糸の味 ほうれ

音だけ聞くは、水飴を弄ぶ子供と同じ。
糸が雁首に引っ掛かり、いやよ、いやよもそそり立つ。

あぁ 大きいねぇ 臭いねぇ

牡の香りがぷんぷんと、六畳一間に香り立つ。
股間の獣は涎を垂らし、頭膨らませ威嚇する。

お前さん こんなもので果てるのかい

再び尻より糸を出し、手で編み作るは一本の縄。
それを男の首目掛け、縛りて引っ張り、呼吸を制す。

そぅら 我慢だ 死は怖かろう

声にならぬ声を上げ、しかして、のたうてぬ初老の男。
ぐい、ぐいと手繰り上げ、二つの首を絞めるウニオニ。

精が果てるか 命が果てるか どちらも極楽浄土だねぇ

下首をぎゅうっと絞め上げれば、上口からこぼれる情けぬ涎。
上首をぎゅうっと絞め上げれば、下口からこぼれる情けぬ涎。

まだだ まだ 地獄は先に

大きな爪が前に出で、男の玉袋を引っ掻き上げる。
子種を溜めて膨らむ其れを、玩具のように引っ掻き上げる。

苦しいねぇ 苦しいねぇ

けたけたと笑う牛蜘蛛の鬼。
強まる刺激と苦痛の絡み。

出るか 出るか 精が出るか

男は、恐怖と絶望と、恥辱と背徳と快楽と。
混じり混じりて、訳が分からぬ。何が何かが、もう分からぬ。

出せ 出せ 出せ 出せ

分からぬならば、従うしかなく。
叫び声を上げ、白く果てる。

あぁ 出た 出たねぇ 濃いのが出たねぇ

降り掛かる男の子種を浴びて、幼子のように輝く瞳。
しかしてどろりと濁りたるは、妖美艶やかに輝く瞳。

ごくり ごくり おいしいねぇ ごくり

身体を濡らす白い濁りを、美味よ美味よと飲み上げる。
しかしそれでは全く足りぬと、山芋に口付け吸い上げる。

ごくり ごくり ごくり ごくり

吸い、吸い、吸い尽くす。根元の奥まで吸い尽くす。
次に出そうと控えた分も、それは許さぬと吸い尽くす。

あぁ 御馳走様 待たせたねぇ

それでもウシオニは満足せず。身を翻して尻を出す。
股間の髑髏を取りて見せるは、熟れに熟れたる女の蜜壺。

さぁ 入るよぉ 入るよぉ

男の亀を根より縛りて、蜜壺の誘いから少しも逃がさぬ。
ずぶり、ずぶりと亀は喰われ、首を引く間もありはせぬ。

大きいねぇ 素敵だねぇ 気持ち良くしてやるからねぇ

八つの足の膝を立て、山芋の汁をどくりと擦り出す。
八つの足の膝を伏せ、山芋の汁をずるりと飲み込む。

いいよぉ いいよぉ 良い具合だよぉ

下品な音を打ち鳴らし、獣が男を貪り食う。
しかして、そんなの獣の瞳に、とある一つの姿が映る。

おや おや 見世物じゃないよぉ

崩れた玄関の影に見るは、牝にしか見えぬ牡子の覗き。
顔を赤らめ目を見開くは、なんとも初々しき稚児の性。

そぅら お前もだ お前も一緒さぁ

尻を向けると、察した幼子。振り返りて走り出す。
糸が風切り、服にひっつき、破りてその身を転ばせる。

逃げたか 良いさぁ しっかり届いた

その身は既に届かぬ所。しかして繋がる糸ひとつ。
肌に付きしまま走りたるが、伸びて離さぬ縄となる。

そこに付くとは 運が無いねぇ

幼子の股にふたつの粘り。一つは自前、一つは抱え。
恥部を押さえる諸手の中で、蠢く糸は悦を誘う。

そぅら 被りか 剥いてやろう そぅら

お天道の下にて曝け出でたる、小さな小さな亀頭。
短き指が悦楽に耐え、糸をむ
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