皆様、本日は当ツアーに御参加頂き、ありがとうございます。
目の前の門を抜ければ、いよいよ目的地『ファラリカ』の城下街です。
市街に入ると、住人の方々が皆さんを歓迎してくれると思われますが、
車外に身を乗り出しますと大変危険なため、充分に御注意くださいませ。
それではここで、今一度、本日のツアー概要等を説明させて頂きます。
創造と愛の国『ファラリカ』。
人間と魔物が共存する親魔物領として、五百余年の歴史を持つ、古都のひとつです。
創作王ナンシー・R・トォンの統治の下、103万9801人が暮らす大都市であり、
街は、商業区、娯楽区、居住区、練兵区の、大きく四区画に分かれています。
人口比は、人魔比が3:7、男女比が2:8。親魔物領としては、人間の比率が高めです。
主な収入源は観光業関連。ですが、チチコンニャクの名産地としても有名です。
この『ファラリカ』を、本日案内させて頂きますのが、私、ガイドのマータです。
種族はダークマター。駆る車は、空飛ぶ魔力塊『テンタクルス・スカイハイ』。
柔らかなクッションと世話好きな触手達が、皆さんの旅路に安らぎを御約束致します。
もし、お客様の中に触手アレルギーの方がいらっしゃいましたら、御声掛けくださいませ。
同伴のスライム達が、触手に代わって、お客様へ快適な空間を提供させて頂きます。
また、触手のひとつひとつは、私の魔力により生成したもの…感覚を共有していますので、
男性のお客様は、婚約を前提としたものでなければ、どうか悪戯なきようお願い致します。
さて、本日の日程ですが、現在の時刻は…10時28分。
このまま予定通り、10時30分には城下街に入り、街中を案内させて頂きます。
ルートは、商業区、居住区、練兵区、娯楽区の順に巡り、
最後にファラリカ城を上空から見下ろして、ツアー終了となります。
また、途中に何度か、食事やトイレ休憩ができる場所にて停車致します。
停車時間内に戻られなかったお客様は、触手がお迎えに向かいますので、
もし迷子になったとしても、慌てず騒がず、その場にてお待ちくださいませ。
触手は、乗車前にお配りした魔水晶の魔力を頼りに探索を行いますので、
下車される際には、車内に魔水晶を置き忘れることのないようお願い致します。
以上です。何か御質問等はございますでしょうか。
はい、そちらの窓際の席の方。
…ああ、いえ。歓迎と言いましても、そのようなものではありません。
道行く人達が、手を振ったり、笑顔を向けてくれたりする、ささやかなものです。
ただ、中には、車両の近くまで飛んできて、性的なアピールをされる方もいるので、
その際に、身を乗り出して抱きついたりしないように…という注意喚起です。
稀に、『襲う』と表現しても過言ではないアピールをされる方もいらっしゃいますので…。
他にどなたか、御質問はありますでしょうか。
…無いようですので、それでは、案内を始めさせて頂きます。
皆様、上を御覧ください。
私達が今くぐっているこの門ですが、名を『ランブレィラ』といいます。
大きな柱を真ん中に据え、半球状の屋根が特徴的な、この街の出入り口ですが、
実はこちら、遠目から見ると、傘のような形をしていることが分かります。
それもそのはず。『ランブレィラ』とは、別名『相合傘』。
こちらの門は、相合傘をモチーフとして作られたものなのです。
柱を挟んで、両壁に絵が彫られていますが、西側が人間、東側が魔物となっており、
この門をくぐる時、それぞれが自分の種族の側を通ると、一緒に門を抜けた相手と、
永遠かつ情熱的な愛を約束してくれると云われています。ロマンチックですね。
また、告白・デートスポットとしても非常に人気が高く、
柱や壁面のあちこちに、カップルの相合傘が彫られています。
実は、ナンシー王と、その夫ソラ様の相合傘もこの中にあるのですが、
皆さん、どこに彼女達の傘が彫られているか、見つけられましたか?
そう、そちらのインプさん、正解です。
あそこです。あそこの…見えますでしょうか。天井の、柱の付け根のところです。
最も高いところに、ナンシー王は、自分達の相合傘を彫ったのです。
もしかすると、『自分達の愛こそ一番!』というアピールなのかもしれません。
そんな愛の門『ランブレィラ』を抜けまして。
まず私達をお出迎えしてくれますのが、『ファラリカ』の誇る商業区です。
すごい人だかりに、驚かれた方も多いでしょう。
ですが、商品を見ている方々は、実は半数以上が外の人です。
皆さんと同じ観光客の方もいれば、近隣の国から仕入れに来た商人さん、
旅の途中に寄った冒険者さん、お忍びで来られた貴族様等々…。
観光業を生業としている『ファラリカ』にとって、この商業区は、
街の原動力であり、最も活気に満ち
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