第九記 -マンドラゴラ-

…どうぞ、と応えると、玄関戸が大きく開かれた。

「まいどーっ♪」

揉み手揉み手で部屋に入るポコさん。おにぎり握っているみたい。
椅子を引いて促し、コーヒーを出す。ハチミツミルクブレンド。
ふと、窓の方を見ると、来客が気になるのか、ももちゃんとドラちゃんが覗いていた。

「ええお家住んどりますなぁ〜。研究者サンのお家ってだけはありますわ」

どしん、と、家が僅かに揺れる程の大きな道具箱を降ろす。
中身は…武器や食料、薬瓶、おもちゃ、洗濯道具、服、他色々。
見える範囲でも、かなりの量と種類の商品があるのが分かる。
こんなスマートな身体なのに、どうやって持っているんだろう。

「さて、まずは〜…訪問販売についてやね」

ぴらり、と何かが書かれた紙を差し出される。

「今日はサービスですけど、次からは訪問の度にちょーっとだけお金を払ってもらいます〜」

「コースは、3日毎、1週間毎、2週間毎、1ヶ月毎とあるんですけど…」

「間隔が短いほど、その時に払うお金は安くなるんねんね」

「3日毎は、1ヶ月毎と比べて半額以下とすっごいお得!」

「で、どのコースにします?」

一読し…値段や、訪問日、訪問時間等を確認していく。
…そんなに買う予定もないし…額自体も気にならない値段。1ヶ月毎を選ぶ。

「はいはい。それじゃあ次回からは、毎月5日に来させて頂きます〜」

「あ、もし次回の都合が悪い時は、気軽に伝えてくれてかまへんですよ」

その時は料金もナシなんで、と言いながら、さらさらと書類を書き込んでいく。
私も忘れないように、手帳にメモ。

「…よしっ。さぁ、次は商売の話や!」

ずずいっ、と身を乗り出すポコさん。

「ポコ印は他の刑部にも無か商品もあると自負してます〜! 何がご入り用ですか!?」

前掛けからソロバンを取り出して、なんでも来いと言わんばかりのオーラ。
根っからの商売人なんだなぁ…と思って、笑ってしまう。

「おっ! お客さんの笑顔は100万G級やけど、あちきの笑顔は0Gで売りますさかい!」

にこーっ、と満面の笑みで返される。おちゃめさんだ。

「さぁさぁ、何がご入り用ですか!? そや、オススメ見てみますかっ?」

身を屈め、道具箱を漁り…とん、とん、とテーブルに商品が並べられていく。

「こちらは前お客さんにサービスであげた洗剤ですね。もう使いました?」

…洗剤だったんだ。飲まなくてよかった。

「バブルンワカメ配合で、強力な泡が汚れを落とす! 匂いもなかなかええですよ!」

「で、こっちはあの有名なGハンマーシリーズの新作、Gクラッシャー!」

「にっくき黒いアレを一瞬で潰し、魔力に変換するから、後始末も必要ありまへん!」

「前作と比べて打ち洩らしも少ない上、値段もほぼ同じ! こりゃ買うしかない!」

「それで、この隣のは光子力ランプいうて…」

ふと、あることを思い出し、説明を遮る。

「おや、何か心に来るものがありはったんですか?」

ちら、と窓の方を見る。まだ覗いている二人。
…ポコさんに、最近ドラちゃんの身体が小さくなってきていることを話した。
恐らく、土が合わないんじゃないかという、自分の考えも添えて。
前に、うーちゃんが教えてくれたことを覚えている。
我が家の周りには、魔除けの何かが埋められているということ。

「ははぁ〜…。あちきは単なる商人なんで、詳しい原因はさっぱりですけど…」

がさごそと、道具箱。

「こーゆーんは、ありますよ」

がばっ、と置かれる商品達。

「お客さん、マンドラゴラは全埋め? 腰下? 手足だけ?」

答える。手足だけ。

「じゃあ、こっちから全部はナシ」

ごそっ、と寄せられる非該当品。

「この『うぉーたー・わん!』はどないでしょう?」

「ウンディーネの湖の水に、ノームの魔力を混ぜたやつです。ちょい強すぎます?」

謳い文句が書いてある部分を指さしながら、渡してくれるポコさん。
…『あなたのアルラウネが愛Love根を張るでしょう! 股間に。キャッ★』…。
…首を振って、お返しする。

「それなら、こっちのはどないですか? 成長促進剤です」

…効能のところを読むと、しっかりとした説明が書かれており、
植物型の魔物の成長を助けるという旨がとても分かりやすい。
錠剤タイプで、イチゴ味も付いてるので飲みやすいともある。
頷いて、これを買うことを伝える。

「そですか! まいどっ! 80Gになります〜♪」

お財布から100G取り出し、渡す。
20Gのお釣り…と一緒に、何か白いものが詰まった瓶を、2つ、取り出すポコさん。
なんだろう。

「で、お釣りでこちらも買います? 1瓶10Gですけど」

こちら…と呼ばれる、謎の瓶。
中身は何なのか、尋ねる。

「へ? 何って、精液で
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