翼をください

 ぞぞぞぞ……
しゅるるるる……
部屋の中には異様な音が響いていた。
植物達が美香の目の前で蔦状になり、部屋の中央で何かを編み上げるように組み合わさっていく。
やがてそれは大木の幹のような柱状の形を作り、中に人が入れるくらいの洞を作った。
「さ、中にどうぞー」
森が美香を促す。
常人ならば足がすくむ状況だろう。
植物の作り上げた空洞は全体が生き物のようドクン、ドクンと鼓動を刻み、所々が緑色にチカチカと発光したりしている。
正直、かなり不気味だ。
「……」
美香は全く迷いのない足取りでそれに近付くと羽織っていたバスローブを解き、地面に落とした。
「モナカちゃんはー……綺麗ですねー……」
美香を後ろから見ていた森が言う。
仕事上世辞を言う事もあるが、これは森の本心からの言葉だった。
美香の体は美しい。マッサージで触れさせてもらっていた時からわかっていたがそうして一糸纏わぬ姿になるとより際立ってわかる。
雪のように白い肌に均整の採れた体つき、確かな女性を誇示する膨らみ、大人と子供の中間にある少女の危うい魅力。
そしてその表情、全てを捨てる覚悟を固めた表情は怜悧ささえ感じさせる。
その少女が背景のグロテスクな緑の大樹とコントラストを成して奇妙に美しい絵画になる。
森はうずうずと腰を震えさせる。
この美しい少女を今からより美しく、そして淫らな存在へと生まれ変わらせてあげるのだ。
たった一人の愛する者を貪り、啜り、虜にして、愛し尽くす、そんな存在へと……。
「ここに、入ればいいんですね?」
空洞の淵に手をかけて美香が言う。
「そうですー……いつもと同じようにリラックスしてーその中にで横になって下さいねー」
美香はそっとその木の手触りを確かめる。
見た目から木の肌のように硬いのかと思いきや手触り自体は柔らかな……
(……ウォーターベッド?)
そんな感想を抱きながらぐっと体を薄暗い洞の中に押し込む。
(あ……すごい、宇宙みたい)
中で横になってみると暗闇の中で緑の光がちかちがと瞬くのが見えてちょっとしたプラネタリウムのようだ。
そして濃密な蜜のような匂い。
「はーい、リラックス〜」
「わっ」
突然頭上から森の声が聞こえてきて流石にびっくりする。
見上げてみると幹の内部から森の上半身がにょっきりと生えて美香を見下ろしているのだ。改めて森が人間でない事がわかる。
しかしその浮かべる表情はいつもと変わらぬのんびりしたものなのであまり恐怖感は湧いてこない。
というか……。
「やっぱりおっきいですね……」
森の上半身は裸だ、服の上からでもわかっていたが非常に豊かな房の持ち主である。
「モナカちゃんも素敵ですよー?……きっとお兄さんもめろめろですね〜」
「そう、ですか?」
美香にとって一番重要なのは人と比べてどうかではなく、兄の目にいかに魅力的に映るかなのでそう言われると悪い気はしない。
「……体型とか体質とか、変わるんでしょうか……」
「んふふー緊張するのは当然ですけれどもー、人間の頃よりも色々と便利になりますよー、それに変わるのはとおっても気持ちがいいですからー安心してくださいねー」
「……ありがたいです」
どんな激痛にでも耐える覚悟だったが痛くないならそれに越したことはない、美香は胸を撫で下ろす。
とろ……
「あっ……」
何か温かいものが身体に触れた。天井から流れ出て降ってきたのだ。
いつもの香油よりももっと粘度の高い感触。琥珀色のそれは……。
「……ローション……はちみつ?」
「うふふー、実はー普段使っているオイルもーそれが原料なんですよー」
「そうなんですか……」
言われてみれば濃密なその匂いはあの香油と似ている。
ぬち……
「んっ……」
上から森が手を伸ばして美香の滑らかな肌にそれを塗り込んでいく、肌に付ける物の違いを除けばいつものエステと変わらない。
ぬちゃっ
「きゃっ」
予想外の部分に手の感触を感じて思わず声が出る。
見てみると地面から触手のような蔦が伸びて足に蜜が塗りこみ始めている。
一組だけではない、ぞろぞろと体の周囲から蔦が生えて全身に伸び、天井から垂れてくる蜜を体の隅々に丹念に塗り込みはじめる。
見る間に少女の体は淫猥なぬめりに覆われ、てらてらと光沢を放ち始める。
「あぅ……んっ……あくっ……」
思わず声が漏れそうになって口元を抑えようとしたが、既に両手も蔦に捉えられて指の間にまで蜜を塗られていっている。
「我慢しないでー、声を出していいんですよ〜」
羞恥で真っ赤になる美香の顔を覗き込みならが森が言う。
そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「あっ……やっ……」
更に両足に蔦が絡むとぐい、と両足を開かせようとする。
思わず抵抗しようとするが変わるためならばと羞恥に耐えて力を抜き、蔦の動きに任せる。
ぬちゃ……ねち……にち
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