レア★ドロップ


インテリアに詳しくない荻須から見ても部屋の内装はセンスがよく、高級感がある。
明らかに高所得者しか住むことを許されない場所。安アパートの荻須の一室とは比べるべくもない。
そんな一室にどうして荻須とゲーム仲間がいるのかと言うと……
「それにしても、意外……巴さんがゲーム機持ってるなんて……しかも最新の」
荻須も思っていた事をアリストレイが呟く。
そう、今日は「ダークネスロード」のコンシューマー版の発売日。PC版からデータを引き継いだプレイヤーには様々な特典が付くと言うので是非欲しいところだったが、生憎と持っていない最新機種でしか発売されなかったため諦めようと思っていた所。
「あ、私、持ってます」
と言う巴の一言からトントン拍子に話が進み、二回目のオフ会を巴の自宅で開催することが決定してしまったのだ。
流石に自宅にお邪魔する訳には……と、荻須は難色を示したのだが他二人の強い勧めもあって押しきられる形で荻須も参加する事になった。
「むむう、テリチキがいーの!」
「いいや、期間限定のがいいね」
「それでしたら二枚とも頼んでしまいましょうか?」
いつまでもああだこうだと結論の出ないピザ選びを見かねた巴が言う。
「あ、いーの?さっすが太っ腹ー!」
「それは、流石に……」
「ぼ、僕も出しますよ」
「いいんですよ、私の家にいるんですからもてなしさせて下さいな」
呑気に賛同するるい子と遠慮する二人に笑って巴は言う。
電話で注文を済ませた巴はいそいそとゲーム機の電源を入れる。
「それじゃ、始めましょうか♪」







 「おおー、いつものロゴも印象違うねー」
「ですねー」
「すごい綺麗……殆どPC版と遜色ないくらい、最新機種すげえ」
皆で画面の前にコントローラーを持ってスタンバイし、大画面に映る映像に感想を付ける。
先陣を切って荻須がログインを試みる。画面上にいつものオギスの姿が出てひと安心する
「よっしゃ、新たなステージに降臨っと……」
「普段パソコンに記憶させてるからパスが合ってるかどうか不安ですよねー」
「あるある……」
と、オギスの前に軽快な効果音と共に宝箱が出現する。
「あ、来た!これが目当てだったんだ」
「特典ってランダムでしたっけ」
「そうそう、開けてのお楽しみってやつ」
「来い来い来い、できれば水属性の防具……!」
宝箱が開かれ、煌びやかな光と共に装備品が現れる。

火トカゲの篭手
レア度★★★★

「あーっ……!火属性また被ったっ……!」
「あ、でも現装備よりもランク高いですよ」
「そうっすねー、それで良しとするかぁー……」
ハズレでなかっただけマシと考える事にした。
「よし、ぼくだ」
アリストレイがコントローラーをぐっと握って気合を入れてログインする。
画面上に現れる金髪碧眼の少女騎士。
「ふふふ、新たなステージでもぼくの美貌は変わらないな……最新機種万歳」
ほくそ笑むアリストレイ、そして少女騎士の前に出現する宝箱。
「オープンセサミ」
輝く宝箱が開かれ……。
「お……」
「まあまあ……」
「これはーっ!」
「ほほう」
荻須は失念していた、このゲームがいわゆる「お色気」もウリの一つであるゲームである事を……。
(うわちゃぁ……これって……)

「女神の肢体」
レア度★★★★★

光属性の鎧だ。
かなりいい部類に入る装備品なのだが問題はその外観。
神々しい装飾が施された重厚な篭手と具足、そこまではいい。
問題はその手足とはあまりにアンバランスな無防備極まる胴体部分。
そこは一番守るべき所じゃないのかという腹部や胸部がほぼむき出しになる構造になっており。
極薄のレザーのような謎の素材が辛うじて乳首と陰部を覆っているが、ぴっちりと密着するそれはボディラインを隠す役割を完全に放棄している。
無論、現装備よりも格段にステータスは上なのだが、女の子が好んで装備するデザインでは断じてない。
(よりによって「エロ装備」が……!空気読めよ宝箱!)
と、荻須が心の中で叫ぶ横でアリストレイは微笑んだ。
「ふふふ、素敵……」
(ええ!?)
「最高の収穫じゃないか、ねえ、オギス?」
「あー……そ、装備すんのこれ?」
「するとも、何を言うのさ」
「あ、いや、まあ……いいって言うならいいけど……」
「問題ある?」
「ななななな何も、何もないとも、うん!」
どうやらアリストレイは少々常人と感性がズレているらしい。
荻須としてもそれを装備したアストレイは是非見てみたいので異論はない。
「いいなー」
「当たりですねえ」
(二人ともマジ?……い、いや、ゲーム内の事に俺が過敏になりすぎか……)
ゲーム内のキャラが装備するものであって別にリアルに自分が着る訳ではない、そう考えるとステータスの高さに素直に喜ぶ二人が普通で自分が意識しすぎなのかもしれない。
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