完全堕落


 この街に防衛軍として派遣され、先日教団の軍隊を退けたイェンダが腕利きの戦士である事は間違いない。
しかし今目の前で自らの精霊に拘束される姿はその儚げな容姿も相まってどこからどう見ても捕われのお姫様といった風情だ、実際に高貴な血筋なので間違いでもないのだが。
「う……ルフューイ、離し……」
困惑した様子で粘液に吊り下げられた腕を揺するイェンダ、先程の反応から察するにルフューイの変化は付き合いの長いイェンダの知識にも無い事らしい。
タイミングからしてコペルの精を摂取したのが切っ掛けという事は間違いないがそれ以外は何も分からない。
「うふふ……いいですよマスター……コペルさん、マスターのその姿に興奮しちゃってるみたいです」
言われてイェンダの視線がコペルの方を向く、咄嗟に股間を手で覆い隠すコペル、しかしその反応で白状したようなものだ。
仕方のない事だ、粘度を増したルフューイの水が染みて体に張り付くネグリジェはイェンダのしなやかな身体のラインを浮き立たせてしまっている、それだけではない。
ぞろり
「ひ……ぃぁっ……」
やにわにイェンダが艶めいた声を上げて身をくねらせた、コペルには何が起こったかわからない。
「る、るふゅ、ぃやっぁっ」
何か言おうとするが言葉が紡げない、よく見てみると粘液濡れになったネグリジェが生き物のように蠢いているように見える。
どうやらイェンダの肌に纏わりついたルフューイが愛撫しているらしい、コペルはその様子から目が離せなくなる。
「あははァ……マスターの弱いところはわかってるんですよぉ……ついこの間も慰めてあげましたしね……?」
「えっ」
「!?」
ルフューイの言葉にコペルは目を丸くし、イェンダはがばっと顔を上げる、思わずその目を見たコペルにイェンダはふるふると涙目で首を振る。
「嘘ついちゃ駄目ですよ♪可愛い声でコペルさんの名前呼びながら「やーーーーーー!」」
今までにないくらいに大きな声を上げてイェンダがもがく、ここまで感情を露わにする所は初めて見る。
拘束された手をがくがくと揺するが半透明の粘液は見た目以上に丈夫なようでびくともしない。
「……!」
その有様を見てコペルは咄嗟にイェンダを抱き締める、落ち付かせたくて取った行動だったが思いのほか効果があったらしくイェンダはぴたりと動きを止める。
ぐず、と鼻を鳴らして泣き顔をコペルに向ける、それ以上頭に血が上ったら倒れるんじゃないかというほどに顔を赤くしている様はいつもの落ち着いた様子からは想像できない。
どう言っていいか分からないので態度で示すことにした。
「んっう?」
コペルは大きな手でイェンダの顔を引き寄せると強引に唇を合わせる、不器用で全く慣れない動きだが初めてのコペルからのキスだ。
力んでいたイェンダの両手から急にくたん、と力が抜け、粘液にぶら下がるような形になってしまう、コペルは急に体重を掛けられて慌てて支える。
「イ、イェンダさ……?」
「あっ……いっちゃいました……ね」
唇を離して見てみるとイェンダはぽやん、と焦点の合わない目をしている。こうして見ると整い過ぎているがために感じられる普段の無機質さが抜けてまるで夢見る少女のようだ。
「キスだけでこんなになっちゃうなんて……繋がった時はどうなっちゃうんでしょうね?」
わくわくした様子で言うルフューイ。
「ルフューイ」
「はい?んむぁ!?」
と、唐突にコペルはイェンダの肩越しに顔を出していたルフューイの唇にも口付ける。
コペルにしてみるとイェンダだけにしてあげるのは不公平だという思いからの行動だったが、これが不意打ちになった。
たちまちにイェンダを拘束していた粘液が崩れ落ち、人間形態に戻ったルフューイがイェンダの背にもたれかかるようにして現れる。
支えを失ったイェンダ共々浴槽の中で夢見心地の表情でふにゃふにゃになる二人。
「だ、大丈夫か二人とも」
まさかそんな風になるとは思っていなかった事態の張本人はどうしていいかわからずおろおろする。
「う、う、う……」
「?」
「うりゃーーーーー!」
「うわっ!?」
突然ルフューイがコペルに飛びかかって来る、驚くコペルをそのまま押し倒してしまう。
「このぉ!大丈夫かじゃないですよこのぅ!仕返ししてやるぅ!」
コペルからのキスで異様なテンションになったルフューイはコペルの唇に吸い付く。
「し、しかえし……」
こちらは腰がまだ抜けているようで力のない動きだがイェンダも押し倒されたコペルの下半身に擦り寄ってくる。
「……たくましい」
「んっぐっ」
イェンダは目を輝かせてコペルの剛直に見入る、整ったイェンダの顔の側に自らの醜い肉塊があるという光景はそれだけで神聖なものを汚すような背徳感を覚える。
「……」
イェンダは学習する、どうやらコペルは自分に対して「汚してはいけな
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