色調調整

「ぬぬ……」
「……どうしたんすか?」
灯子はキャンバスの山を前にして考え込んでいた。
腰の羽とゆらゆら揺れる尻尾を目で追いながら麻人が聞くと灯子は恨みがましい目で振り返った。
「い、一枚には絞り切れないんだ、候補がいくつかあって……」
「じゃ、その候補全部」
「ぜ、全部か」
「全部です」
麻人はいつものつっけんどんな態度からは想像もつかない灯子の頼りない態度が楽しくてしょうがないといった様子でにやにやしている。
しかし実はかなり無理もしていた。裸の灯子から漂ってくる香りや身動きするたびにゆらゆら揺れる乳房は「早く食べて」と麻人に訴えかけて来るようだ。
麻人は灯子が背を向けてキャンバスをごそごそやっている時にちら、と自分の下半身を見やってぎょっとした。
先程から下腹部に何かやたら熱い物が当たると思っていたら猛り狂う自分の陰茎だったのだ。いや、驚く必要は無い筈なのだが……。
(……お前、そんな所に届く程でっかくなれたっけ?)
麻人の記憶では最大限にやる気を出した状態でもへその下に届くくらいのものだったのだが、今はへそに届いている。自分でちょっと引くくらいだ。
「……このあたりだ」
「ああ、うん」
声を掛けられて慌てて視線を戻すと、二枚のキャンバスを抱えて灯子が立っていた。すごい仏頂面だ。
もはや睨みつけていると言っても過言でない目付きだが、涙目で顔真っ赤っかではひたすら可愛いばかりだ。そして全裸だ。
「どれどれ」
その目線をニヤニヤしながら受け流し、キャンバスを受け取る。
どんなものかと一つに目を通してみると予想外な事に上半身だけが映っている絵だった。
灯子の上半身を麻人が後から抱きすくめ、灯子は振り返って舌を絡めている。
麻人の両手は裸の灯子の胸を掬い上げるように捧げ持ち、指は乳首を摘まみ上げている。
「あれ、乳首……」
思わず口に出した瞬間、灯子の両手が上がって両乳首をガードした。
「へ、平常時はこうだが、頑張れば出て来るんだ!」
「なるほど、そうして出て来たのを苛めてもらいたいんすね」
「い、いじ……」
思わずといった感じで灯子の胸のガードが固くなる、しかしその分二の腕が乳房にむにゅりと沈んでより扇情的な光景になるのが皮肉だ。
そんな灯子に構わず二枚目に目を通した麻人は少し驚いた顔になる。
後ろから覆い被さる麻人に責め立てらる灯子の絵、偶然にも最初に見た絵だ。
「乱暴なのが好み、と」
「好みって訳では……」
「でもこの絵、乱暴にされてますよね?」
「そっ……」
ぎりりと歯を食い縛って悔しそうな顔になる灯子、可愛い。
二枚の絵を見た麻人はその絵を下に置くと、灯子の背後に回り込む。びく、と反応するがじっとしている灯子。
「偶然っすね……俺の想像したシチュエーションと似てるや」
背後から乳房を責めるという構図は麻人も思い浮かべていたものだ。
灯子は何も言わずにそっと腕を降ろした、背後からも伺える豊かな盛り上がりが麻人の目に晒される。
降ろされた手は強く握られていて羞恥を訴えているが、我慢している様子だ。どうぞ、というところだ。
そんな健気な様子を見せられた麻人は震え上がるような興奮と欲望を覚える。そしてやっぱり悪戯心が頭をもたげるのだった。
「……ちゅっ」
「きゃっ!?」
唐突に首筋に口付ける麻人、てっきり胸を触られるものだと思い込んでいた灯子は思わず声を上げる。イメージにそぐわない程に女の子らしい声だった。
「あー……俺のだ、もうこれ、俺のだ……」
「〜〜〜〜っっ!!??」
冷静を装ってはいるが、麻人の方も灯子の魅力でかなり理性が怪しい状態だ。酔っ払ったように本音が口から漏れ出す。
びっくりしたのは耳元でそんな事を囁かれた灯子だ。真っ赤になって振り向こうとするが、顎に手を添えられてくいっと前を向かされる。
そうしてうなじに繰り返しキスを落とす。キスをされながら灯子は気付く、そこは麻人の名前が刻まれている箇所だ。
「絶対無理だって思ってた……夢みたいだ、あー……先輩、先輩、先輩、高校の時からずーっと好きだったんです、もう、大好きです、好き過ぎて死にそうです先輩かわいいよ先輩、もう俺だけのもんですからね、誰にも渡さないっすからね」
「ひっ……ひぃアっ……」
そうしてだだ漏れの告白を耳に流し込みながら灯子自身が刻んだ所有の証に口付け、手首のルーンもすりすりと握る。
直接的な感覚で言うなら大したことは無い。うなじも手首も性感帯とも言えないような箇所の筈だ。
にも関わらず灯子は陸に上げられた魚の如く口をぱくぱくさせながら身も世も無いといった様子である。
「へ、へんあこと、いふ、なぁ、ばかものっ……」
「あー……舌回ってない先輩かわいい、超かわいい」
「ひぃぃっっ……」
腰から下が軟体動物になったようにくにゃくにゃと崩れ落ちるのを手首を掴
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