歯と舌にびっくりするほど滑らかな感触を感じた次の瞬間、洋二の耳に今まで聞いた事のないようなクロの声が聞こえた。
思わず口を放し、クロを見る。
「ふゃぁ」
首が座っておらずぐらん、と頭が揺れる、耳はぺったりと垂れ下がり、目じりが下がって今まで見た事のないような呆けた表情をしている。
頭が傾いて剥き出しになった首筋には先程付けた自分の歯型がうっすらと赤く浮いている。
洋二は凄まじい興奮を覚えながらそれでも躊躇していた。
いいのか、こんな風になし崩しにこんな事・・・。
「よぉ・・・じぃ・・・」
そんな洋二の腕の中でクロはもぞもぞと抵抗らしき動きをしながら言う。
「たべない・・・でぇ・・・♪」
明らかに恐怖も嫌悪も混じっていないその声にはただただ雄の本能に強烈に訴えかける媚のみがたっぷり含まれている、発した言葉の意味とは真逆に「食べて」と言外に伝える。
洋二の頭の中でまたも枷が吹き飛ぶ。
嵐のような欲情に飲まれながら頭の何処かで思う、この少女は男を、雄を狂わせる天才だ。
洋二は次にクロの口に貪り付く、キスとは呼べないような獣じみたキスだった、獲物の柔らかな内臓を引き摺りだしてやろうとするような。
「んんんむゅんんンンン」
唇の儚い抵抗を突き破り、易々と内部に舌を侵入させる、温かいというより熱くすら感じる他人の口腔内の温度に驚き、そういえばこれ俺のファーストキスじゃん、と一瞬脳裏に浮かぶ。
しかしそんな考えもすぐに吹き飛ばされる、クロの小さな舌がおずおずと洋二の舌に触れて来たからだ。
嫌がられている訳ではないのは気付いていたが、初めて尻尾以外でのクロの能動的な行為に洋二はますます勢い付く。
舌を絡ませようと舌を伸ばすとクロの舌は自分から触れておきながら驚いたように奥に引っ込もうとする、させじと洋二は口腔内を吸い上げる。
「ずずっずっぢゅるるる」
「んんぢゅんぅぅんんぅぅぅ」
二人の口元からはしたない音が響き、クロの耳と尻尾がびいぃんと立ち上がる。
洋二の口腔に不思議と甘く感じられるクロの唾液がどっと流れ込む、それを呑み下しながら引っ張られて出て来たクロの舌を自分の口に引き入れ、棒アイスのようにしゃぶりはじめる。
「ぢゅっずずっずぢゅちゅっ」
「ん゛ん゛っんぢゅるっはっこっっんろぉれろぉ」
ぼたぼたと顎から唾液を滴らせながら二人はキスと言うより口を使った性交と言った方が相応しい交わりを続ける、普通キスをする時には目を閉じる物なのだろうが二人は目を見開き、欲情に狂った瞳と潤んで蕩けた瞳で見つめ合い続ける。
と、唐突にクロがばたばたと腕の中でもがき、唇を外した。
「んんっんんんんんーーーっっぷあっあふあっや、め、ヨウ、ジ、んちゅぅっ」
しかし洋二は離れる事など許さないとばかりにクロの頭を引き寄せ、また深々と口付ける。
「ふぐっ・・・!んぐっ・・・!んんっ・・・!」
しかしそこでクロの反応が先程と違う事に気付く、舌の裏側を、表面をなぞり上げるたびに腕の中のクロの体は本人の意思を離れたようにびくびくと不規則に痙攣し、見開かれた瞳はぱちぱちと忙しなく瞬きながらどこに焦点を合わせていいかわからないとでも言うように視線を彷徨わせている、そして。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ぅ」
今までに無い低く、唸るような声を上げたかと思うとクロの瞳がくるん、と上を向いた。
流石に異変を感じて口を解放するとクロは糸の切れた人形のようにくにゃくにゃと洋二の腕の中で崩れ落ちた。
え・・・まさかイッた?キスで?キスだけでイクもんなの?
洋二には経験がないのでよくわからないが、腕の中にへたりこみ、虚ろな表情で体をびくびくと震わせる様子はそうとしか思えない。
予想外の事態にすっ飛んでいた理性が少し戻ってくる、かといって下半身の臨戦状態が解除されるわけではないので早くなんとかしたいのだが、こんな状態のクロをどうこうしてよいものか、洋二はクロを腕に抱いたまま固まってしまう。
「おーい?もしもーし、クロさーん・・・?」
「・・・みゃあ」
「クロ?」
「みゃぁぁぁぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪」
普段のクロは猫だった頃と変わらず非常に愛想が悪い、喋る時もぼそぼそと聞き取れるぎりぎりの声量でしか話さず、まして猫らしい鳴き声などこの姿になってからは聞いた事がなかった。
なのでふにゃふにゃに蕩けた笑顔で発情期全開の鳴き声を上げるクロに一瞬あっけにとられてしまう、その一瞬を突かれた。
「みゃふっ」
「ぅわっ!?」
さっきまで軟体動物のごとくへたっていたとは思えない俊敏な動作で逆に押し倒される、洋二のほうが大柄とはいえ元々運動神経や力ではクロの方が圧倒的に勝っている、本気で抵抗されたらこんなものである。
「みぃぃぃ・・・♪」
洋二に馬乗りになったクロは鋭い八重歯を見せつけるようににまぁっと笑って見せる。
「んみ
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