母親編


 桃はリビングから二階へと逃げるように上がって行った父の背中を見送ると、テーブルに広げていた中身を財布に戻した。
程なくして、母が二階から降りて来た。
「……」
母は無言で桃の向かいに腰を下ろした、桃も何も言わない。
静まり返った部屋にカッチ、コッチと、時計の音だけが響く。
「戻ったの?」
「うん」
短いやりとりが交わされた。
何が「戻った」のかを聞き返す事はしなかった。母にはそれで充分伝わったようだった。
「そう……」
母は俯く。
「お母さんってさぁ……」
桃は言いながら立ち上がり、母の隣に移動して座った。
母は隣の娘から顔を逸らす。
「本っ当にヘンタイだよね」
するりと桃の手が横から伸び、俯く母の乳房を服の上から無遠慮に鷲掴んだ。
衣服の下からでも主張の激しい膨らみが娘の手によって淫猥に歪み、服に皺を作る。
「んっ……!」
びく、と反応する母の耳元に顔を近付ける。
「今、何を想像したか当ててあげようか」
ゆさゆさと片方の乳房を弄びながら囁く。
「私と一緒にお父さんをレイプする事考えてる」
俯いてこちらを見ようとしない母の耳が赤く染まる。
「私が生まれた時から、ずうっとその事を考えてた」
ぎゅう、と房の根本に指を食い込ませていく。
「くぁ、ぁ」
母が喘ぐ。
それに構わず、桃の手は母の乳房を牛にするようにぎゅぅぅ、と搾り上げていく。
じゅわ、と搾られる乳房の先端に染みが出来る。
「お父さんを悦ばせられる体に育ちますようにって……そんな願いを込めてこんなエッチなミルクで私を育てたんだ」
「わた、しを……」
紅潮し、涙目になった母がこちらを向いた。
「こんなに、したのは……そもそも……貴方が……!」
娘と母の脳裏に同時に浮かぶ記憶。
母が……善治がかつての自分を持ち帰った時の記憶。
そう、転生を目的に昼夜問わずじっくりと善治の身体を仕込んでやった記憶。
そのまま素直に育っていたなら、日本人らしいスレンダーな体形に育っていたであろう善治の肉体。
その気脈を歪め、調教し、より牡を悦ばせるよう作り変えた工程。
「そうだよ」
ぴん、と服の上から胸の先端を弾いてやると、びくんっと大きく反応する。
「でも感謝して欲しいくらいだよ?お陰でお父さん、お母さんでないと満足出来なくなっちゃってる」
ミルクの染みが広がった先端をぐりぐりと指先で苛めながら言う。
「んぅぅっ……」
母は指を噛んで漏れそうになる喘ぎ声を抑え込む。
「そして私も感謝してる、そんなお母さんから生まれたこの体だから、お父さんとの相性は保証付き」
ぐい、と、早熟な膨らみを母の成熟した膨らみに押し付けながら言う。
「ありがとう、こんなにいやらしく育ててくれて、お陰でお父さんの事を死ぬほど気持ちよくしてあげられる」
「雅史、は……」
はぁはぁと荒い息をつきながら、母は涙目で睨み返す。
「私の、夫……」
「知ってる、私は娘だよ、お母さん」
にこ、と、高校に上がってからは滅多に見せなかった子供らしい笑顔を見せた。
「そしてそれ以前に一人の牡に媚びる二人の雌ってだけ……私と、お母さんはね?」
仕上げとばかりにぎゅうっと乳房を搾ると、ぢゅ、という音と共に胸の染みが広がった。
「くぁっ……!」
上がりそうになった嬌声を無理やり押し込めた母は座っている体勢を保てず、ソファーに崩れ落ちる。
胸元に染みを作りながら紅潮した顔ではぁはぁと息を荒げるその姿は、男であれば誰でも襲い掛かりたくなるような色香を発している。
「行こっか、口裏合わせてあげる、でもその前に着替えないとね?」
そう言われて母はのたのたと身を起こし、洗面所に向かう。
微笑を浮かべながらその後ろ姿を見送る桃を一度、振り返った。

「あなたはやはり、悪霊よ」

 強い光を宿した目で、そう言った。
桃は笑みを崩さない。

「だけど、やっぱり大切な娘で……」

 その光が、穏やかに変わる。

「そして、私と同じヘンタイね」

 最後に、とろりとその光が溶け落ちた。

 きょとん、とした顔になる桃に背中を向け、母は洗面所に入って行った。
そして、ものの一分で出て来た。
服は同じ柄のものに着替え、乱れた髪も整えられ、顔にも先程の情欲は欠片も残っていない。
いつも通りの母の姿だった。
「それじゃ……」
「待ちなさい桃」
二階に上がろうとする娘を、母が呼び止めた。
「その前にこの機会だからもう一つ、お話があります」
「ん?何?」
「先月のお小遣い、何に使いましたか?」
ぎく、と桃の肩が跳ね上がる、完全に不意打ちだった。
「えっと……まだ使ってない……」
「財布の中の金額はそんなに潤沢に見えませんでしたけど?」
「そっ……」
「何に使いましたか」
ついー、と桃は視線を逸らす。
「……ゲームの……課金に少々……」
「全額ですね?」
「だったかもしれない…
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