一般に、人に見られる事を意識していない時の顔はあまり他人に見られたくはないものだ、ましてや完全に理性を飛ばし、全てのしがらみから解放されたような表情なら尚更。
扉を開けた瞬間いきなりそんな表情に遭遇してしまったソランはとりあえず。
「あ、し、失礼」
一言謝って扉を閉めた。
しかし数秒の間を置いて再び扉は開かれた。
「いや、部屋間違ってないじゃないですか!昼間っから何してるんですか!居間で!」
「あふぉぉぉう♪」
「ふぅぅうううう・・・」
開けると同時に色々と突っ込んだが、今まさに絶頂のいただきから降りてくる最中の二人が応えられる訳は無かった。
「もう・・・そういうのは寝室以外では控えるって決めてたのに」
「えへへぇ、ごめんごめん、ちょっと盛り上がっちゃってね?」
「・・・すいません、また暴走してしまって・・・」
「それが一番許せないんです!どうして私のいない時に暴走するんですか!私も参加してるときに暴走して下さい!」
「ええ?そっち!?」
三人はあれこれ言い合いながら脱衣所に入った。
あの後、いろんな理由でぷんぷん怒り出したソランをいち早く正気に戻ったコンラッドがなだめ、取りあえず入浴を勧めた。
コンラッドはソランが入浴している間にふにゃふにゃになっているジュカのアフターケアをしようと考えたのだが、ソランは三人で入ることを提案し、ジュカもふにゃふにゃになりながらもそれに賛同した。
実はコンラッドとしては三人で一緒に、というのは魅力的でありながら避けたいシチュエーションだった、何故避けるのかというと度を超えて魅力的過ぎるから、というべきか・・・刺激が強すぎるのである、いい加減慣れろ、と言われそうだがこればっかりは慣れるのは無理としか言いようがない、しかし今回は暴走してしまった負い目がある分断り切れなかったのだ。
脱衣所に入ったコンラッドはパパっと服を脱ぐと。
「それじゃ、俺は先に温まっておくから二人は体を洗いなよ」
と言い残し、素早く浴室に入って掛け湯をして湯船にちゃぽん、と入ってしまった。
二人の脱衣シーンを見て理性を保つ自信がなかったからである。
そんな夫のいつまでも失われない初心さを目の当たりにした二人は顔を見合わせてくすくす笑い合い、焦る事無くその魅惑の肢体を晒していった。
「お邪魔します♪」
「お湯加減どうですか?」
「ああ、丁度いいよ」
浴室に入って来た二人に目を向けずにそっぽを向きながら応えるコンラッド、二人はまた笑いそうになる。
ソランとジュカ、当然それぞれ性癖に違いはあるが、この恥ずかしがりな夫を誘惑し、そのお堅い理性を崩していく工程がとても楽しいというのは共通した見解だ。
「じゃ、私が背中流してあげよっか、ソラン」
「ええ、お願い」
ソランが浴室の椅子に座り、ジュカがその後ろに回る。
コンラッドは相変わらずそっぽを向いて浴室の壁を眺めている。
一人で入る分には余裕だが、三人だと少し窮屈、というくらいの広さの浴室だ、あまり二人から距離を取る事も出来ない。
ジュカは浴室に設置されている棚に手を伸ばす。
棚の中には色々な形をした石鹸や入浴剤の入った瓶が沢山並んでいる、これらはお風呂好きなジュカのコレクションだ、中には巷ではちょっと目にかかれないような珍しい石鹸やジュカ自らが調合した入浴剤などもある。
「今日はど、れ、に、し、よ、う、か・・・ん、これにしよ♪」
ジュカは数ある中から鮮やかな緑色をした石鹸を選び、スポンジで泡立て始めると浴室内に爽やかな香りが漂い始めた。
「あっ、新しい石鹸?」
「うん、新しい配合にチャレンジしてみたんだ」
「これは・・・森の香り?爽やかでいいですね」
「いいでしょー、お肌にもとってもいいんだよー」
お肌にいいって、それ以上どう綺麗になりようがあるんだ、とコンラッドは心の中で突っ込む、今以上何もしなくったってつやつやぷりぷりすべすべな二人の肌には虜にされっぱなしだというのに。
ともあれその石鹸の香りには少しほっとする、実は二人の甘い匂いが浴室内に溶け込み始めて危険だったのだ、この爽やかさで少しは中和された気がする。
しかし安心出来たのはほんの一時だった。
「ソランまた胸おっきくなってない?」
「ええ・・・どうもそのようです、誰かさんのお陰で」
「ねー、誰かさんはコレが大好きだもんねー」
「あっやっこらっちょっ」
「ほーれほれー」
「もおっ変なとこ・・・あっ!?あっはははははっやめてくすぐったい」
「ここがええのんかー」
「やめなさいったらこのっ」
「ひゃっ!?きゃはははははっやめてー」
コンラッドは耳に届く極めてキャッキャウフフな会話から意識を逸らすべく、まじめくさった顔で壁のタイルを眺め、頭の中で複雑な数学の計算式なぞを思い浮かべる。
暫くそうしているとコンラッドの後頭部に声が掛け
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