訪問

「ご、ごめんなさい!私、他に好きな人いるの。」
と、これでオレの恋は終わった。
二年時から同じサークルにいる楓さんに俺は恋を抱いていた。
しかし、その恋は今こうして終わったのだ。
バイトで忙しく、たまにしかサークルに顔を出さない俺なんかより、もっとなかよくなった男が彼女にはいっぱいいるのだろう。
でも、これで踏ん切りがついた。
俺はもう大学4年になったのだ。ちゃんと就活しなければならない。
(よし!これから就活に集中するぞ!)
と、自分に言い聞かす。
だが、やはり好きな子にふられるのは悲しいことだ。



俺の名前は佐川竜也。大学4年になったばかりだ。
生憎、さっき好きな子に思いを伝えたが、その思いは散ってしまった。
気を落としながらも、下宿のアパートへ帰ってきた。
そして、玄関の棚に飾ってある家族写真に「ただいま」と声をかける。
写真には俺と両親が笑顔で写っている。

母さんは俺が大学入学する直前に癌で亡くなった。
俺は母さんになにもしてやれなかった。小さい頃は自分勝手に遊びほうけ、思春期には日に一度も話さない日があるようになった。
しかし、高校3年の時に母さんが癌で入院してからは目が覚めたようで、毎日お見舞いに行き、今まで話してなかった分を取り戻すくらいに話をした。
その時間はとても心地よい時間だった。
だが、母さんの容態はどんどん悪化していき・・・
亡くなってしまった。
俺は母さんがこの世からいなくなって、やっと愛情を感じることができた。あまりにも遅かった。もっともっと早く、母さんのこの優しさに気付いてあげれば、自分でもなにかできたはずなのに!
そう悔みに悔んでも止まらない涙を流す俺の肩に父さんの手がおかれる。
「竜也、母さんは死ぬ間際でもこんな家族をもてて幸せだったって言ってくれてたんだ。そんなに泣くな。俺だってホントは悲しくて悲しくて仕方ない。だがな、母さんが言ってたろ?幸せに生きてくれって。そんな母さんの最後の願いを俺たちで叶えてやろうじゃないか。」
「う、うぅぅ」

父さんは町の工場で働いている。
けっして給料がよいわけでもなかったため、母さんもパートで家を支えてくれていた。
しかし、その母さんを失ったとき、家計を支えるため俺は大学へ行くのをあきらめ就職しようとしたが父さんが反対した。
「ど、どうしてだよ!?俺も働けば、家も父さんも助かるじゃんか!!?」
父さんはそんな俺の言い分も聞かず、
「お前は本当にそれが望みなのか?ずっといきたかった大学に受かった時、あんなに喜んでたじゃないか。」
「あ、あれは母さんがまだ生きていて、家計的にもぜんぜん安心できてたからだよ。今はちがう!母さんはもういない・・・。だから、俺がその母さんの穴埋めを」
そう言いきる前に、父さんは
「ばかやろう!!お前はほんとに母さんの気持ちがわかってるのか!?母さんの代わりとなってお前の人生が変わってしまうことを彼女が望んでいると思うのか!!?」
「そ、それはもちろん、母さんはそうなってほしくないと望んでると思うけど・・・
やっぱ経済的に・・」
また、俺が言いきる前に父さんが
「俺が全部がんばってやる。」
「えっ、そんなの母さんは望んでないんじゃ・・」
「バカだなぁ。母さんの穴埋めなんかじゃね〜よ。もっと俺の体が働きたいってゾクゾクしてるからだ。俺の欲求を満たせられて金が手に入るなんて、一石二鳥じゃないか」
そういって、笑いを見せる。それに付け加え、
「もうすこしだけ親に甘えてろ。母さんから授かった大事な体なんだからな。親孝行はもっと後でいいから・・・」
「と、父さんっ!!・・・」
俺は父さんが見栄を張ってるは承知していたが、真剣な目で言ってきたため言い返せず、自分の道を選ぶことにした。
ま、といっても奨学金とバイト代でこっそり学費は自分で賄っているけど。

そう昔を顧みながら、写真をしばらく眺めて、部屋へいった。
俺の部屋は1LDKと下宿する学生にとって、十分なほどだ。
それに、大学や駅から離れているということもあり、人気がないわけか家賃もそれなりに安い。
夕日も沈み、小腹を満たすためカップ麺の湯を沸かし始める。
湯が沸くまで、今日のことを思い返す。
(はぁ〜、やっぱ告白するのって身にしみるなぁ。しかも、ふられたとなると、なおさら心に響く。いっそ、しなかったほうが良かったのかな・・・。いいや、これでいいんだ!これで俺は就活まっしぐ・・・ら・・。)
と思うも、やっぱり気が乗らない。
プシュゥーーッ!!
そう考え込んでいるうちに、湯が沸いた。
俺はカップ麺に湯を注ぎ、出来上がる時間までダイニングの椅子に座る。
一人暮らしだが、たまに父さんや友人が来るため向かい合うように椅子をもう一つ置いてある。
だが、そこが空席のままで飯を食うのはやはりさびしくか
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