「殺せ」
突きつけた剣先から凛々しい声が聞こえた。
「断る」
返答と同時に剣を引き、その場から去ろうと踵を返す。
「情けのつもりか人間、ここを何処だと思っている? 戦場で情けなど・・・無用だ」
嘲笑を含んだ問いではあるが、やはり凛々しく美しい声に戦闘の熱が冷めていく。
声の主に振り向くことなく答える。
「手負いを相手にした挙句、止めまで刺しちまったら男が廃るってもんだ」
まあ、反撃ができなくなるぐらい痛めつけたからすでにアウトな気もするが。
だがそうせざるをえなかった。
なんせ相手は魔王軍の先鋭たるデュラハン。
運悪くばったり出くわしたとき、強烈な魔法を受けたのか右手に深手を負っていたので何とか撃退できた。
左手一本の上、かなり疲弊している筈だろうに、苦戦を強いられた辺り流石というべきか。
「貴様の身なりからして教団の正規兵ではあるまい
傭兵ならば私の首を持っていけばきっと大金が手に入るぞ?」
アンタの場合、首だけでも生きてるじゃん。
と思ったが相手のシリアスな口調に揚げ足を取るのは控えておこう。
それにしても魔王軍先鋭のプライドなのだろうか、やけに死にたがるなぁ。
生き恥より死を選ぶ高尚さには頭が下がるが、あまりここに長居はできない。
「残念ながら、今回の戦争は教団側の完敗だ。
もう本隊も本国まで撤退済みだろうからな・・・
いくらデュラハンの首を持ち帰った所で報奨金の当ては薄いね。」
俺も所属した傭兵部隊と撤退をしていたが、魔王軍の追撃を受けて部隊は壊滅。
一人で逃げたほうが追撃の手を撒けると踏んで逃げてきたんだ。
まあ結果がこの状況なので当ては思いっきり外れたけど。
おそらくこのデュラハンは教団の本隊を追撃していたのだろう。
本隊なら強力な魔法使いも居るだろうし、退路に仕掛けたトラップ魔法にでも掛かったのだろうな。
ドジめ、だけどそのドジのおかげで俺助かった、ナイスドジ。
「だ!誰がドジだと!!!貴様!!!」
しまった、声に出してたか。
後ろからガシャガシャと鎧が擦れる音と共に殺気を感じた俺は全力で走り出す。
「ま、まて!人間!!!!
やはり勝負はまだついていない!たたっ切るからそこに直れ!!!!」
走りながら振り返ると顔を真っ赤にしてデュラハンが追ってきている。
負傷のために追いつかれることはなさそうだが、左手であの仰々しい剣を振りかざしてる。
こいつぁ待つわけにはいかねぇぜ。
しかし・・・あの剣さえなけりゃ、あの美貌だ。わざと捕まってもいいんdドゴォッッ!!
って、おお!!?ボケてる場合じゃない!
何今の衝撃波みたいなの!デュラハンってこんな事もできんのかよ!?
「避けるな貴様!おとなしく死ね!!」
「死ねと言われて死んでたら命がいくつあっても足りねーよ!
あと『人間』だの『貴様』だのやかましいわ!俺はロザドという立派な名前があんだよ!!
勝負したけりゃ怪我が治ってから来な!正々堂々相手してやらぁ!!!!」
はったりをかましつつ全力で逃げ回る間、もう傭兵家業は廃業したほうが身のためかな・・・と俺は思っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・
・・・逃げられたか・・・
『ロザド』・・・・必ず・・・」
敗戦から半年後
俺ことロザドは路頭に困ってた。
知り合いの傭兵の殆どをあの戦争で失なった事と。
教団が魔物だけでなく親魔物派の人間も襲撃しているとの噂を聞いたため、傭兵家業から身を引くことにした。
そこで新規一新、中立派とされる町の郊外に住まいを構え細々と農業生活を行うことにしたのだが・・・。
「・・・枯れてる、見事に枯れてる」
小麦、大麦、その他野菜の苗を育てたのだが見事に全て枯れてしまった。
どうやら土壌が農作にむいて無かったらしい、断じて俺がヘタクソなんじゃない。断じてだ!
・・・やばい、どうしよう。
傭兵時代に稼いだ金はこの住まいのために殆ど使ってしまった。
折角、密かに夢見てた静かな郊外でやさしい妻と子供と大型犬に囲まれて、農作スローライフを送る第一歩を踏み出したと言うのに。
「結局これしかないよなぁ・・・」
ぼやきながら、壁にかけてあるものに手をかける。
数ヶ月ではあるが全く触れることの無くなった愛剣、抜き払ってみるとまだその刀身は眩いばかりだ。
壁にかける時は、《・・・もうこいつに頼ることもあるまい。》とか格好つけてたのに。
だけどまあ、しょうがない。どうしようもない。しかたがない。
とりあえず町へいってギルドを尋ねよう。
家を建てるとき懐の侘しさに不安を覚えて、一応いつでも稼げるようにギルドに登録はしてあるんだ。
傭兵みたいな依頼は御免だが、何かおつかい的な依頼で小金稼ぎをして当面を凌ごう。
そう決めるとさっ
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