《15日目》
僕が住む街の中心にある小学校。
そこは市内の他の小学校と比較して数倍の人数を誇る、いわゆるマンモス校だ。
全体生徒人数にして1200人といえば、その規模が伝わるだろうか。
『アンチ・サバト』のメンバー6人は今回、その小学校に訪れていた。
現在は待機中だが、もうそろそろ出番のはずだ。
「イズミ、あまり気負うなよ」
「大丈夫です……というか先輩、表情見えないのに分かるものなんですか?」
そう言うと、近くにいた僕の妹やフタバ姉妹がブフッと噴き出していた。
少しは緊張ほぐしの役に立てただろうか?
「いいぞイズミ、その意気だ」
「はい!」
サバトは『幼い少女の背徳的な魅力』を伝える集団だ。
そんな彼女らが、小学校というロリータ存在の集積地を見逃すことなんてあり得ない。
現にヤツらは他の小学校で少女の誘拐・誘拐未遂を数件起こしている。
連れ去られた少女たちは当日に帰宅していたために大事には至らなかったとされているが、それこそがサバトのやり方だ。
その子たちは十中八九、サバトに裏で布教を受けているだろう。
そのターゲットは女子だけに限らない。
青田刈りのように見込みのある男子がサバトに目をつけられ、もう少し時間を置くことで彼女らにふさわしい『おにいちゃん』になるのを待っているというのは、まさに僕の周りで起きていた実体験だ。
石丸くんだってそうやって、彼が小学校6年の時に隣に引っ越して来たというお隣さんの幼女に、中学生活のある日『収穫』されてしまったのだから。
憎きサバトには、小学校がまるで甘いお菓子の家にでも見えているに違いない。
これらから分かることは1つ。
ヤツらの力を削ぐためには、この小学校という同じ土俵に立った上で、彼女らの幼女的支配からいたいけな小学生を解放する必要があるということだ。
しかし、大学が我々のホームグラウンドであったのに対して、小学校は彼女らの勢力圏である。
こちらにとって小学校はアウェイなのだ。
サバトであれば易々と侵入できる放課後の小学校のグラウンドなども、大学生が入るには辛いものがある。
もし今の状態のマミヤマを素のまま向かわせたりしようものなら、市の掲示に出るのはサバトの被害報告ではなく、おしゃぶりを咥えたマミヤマの目線隠し付き顔写真になってしまうだろう。
だから、『アンチ・サバト』は一計を案じた。
まずはボランティア部。
彼らに頼み、毎週の昼休みと放課後に行なっていた小学校へのボランティアを、我々が代役として引き受けた。
そして、服飾部。
こちらにも依頼し、必要な物を揃えてもらった。
揃えたというか既存のものがあったため、それを借り受ける形となった。
「兄さん、そろそろだよ!」
「おわっ! い、行ってくる!」
妹からの呼びかけで、出番が来たことを知る。
『今日は近くの大学から〜? かわいいマスコットさんとおねえさん達が来てくれました〜!』
そんな声がスピーカーからノイズ混じりに響いたのに合わせて、小学校の体育館の舞台袖から僕とアネサキ先輩、そしてネクリが飛び出した。
舞台の下で集まっているのはもちろん、昼休みの全校集会のために整列していた小学生たちだ。
僕らは今、いつものそれぞれの私服姿ではなく、服飾部から借り受けた着ぐるみを装着していた。
『うめぼし三兄弟』と名付けられた3頭身ほどのやたら渋い男顔の着ぐるみたちが、ジェットストリームアタックの如き勢いで体育館の舞台中央に突進。
背丈の関係でネクリ、僕、先輩の順番で縦列になったのち、後ろ2人がババッと左右に側転してキレよく展開していく。
そのままネクリを中心にアネサキ先輩と息を合わせてバク転で周回し、再び真ん中に寄ってからネクリを2人で跳ね上げると、ネクリは横スピンをかけて舞台に着地をキメた。
『…………………………へ?』
困ったことに、放送マイクを手に取ったキキーモラの女性教員が自分のセリフを忘れていた。
なぜボケっとこっちを見てるんだ。
さっきまで騒がしかったちびっ子たちも静まりかえってるし、進めるなら今だろうに。
仕方なく、舞台袖に視線を送る。
「み、みんなー! こんにちはー!!」
すると合図を受けた僕の妹が、良く通る声をマイクにのせて袖から双子の姉妹とともに走り出てきた。
最初つっかえたが、それはご愛嬌だ。
彼女たち3人はあまりクドくない程度のお揃いのコスチュームを身につけており、並んで立つと中々に華がある。
3体と2人の間に立ったイマリが、昨日の夜まであわあわしながら猛練習していたスマイルを振りまきつつちびっ子たちに話しかける。
ちなみにマミヤマは留守番だ。
「今日から6日
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