ここはとある山おくのお寺……ではなく、海ぞいの教会。
海の神さまである『ぽせいどん』のねっしんな信徒である、たいそうべっぴんさんなクラーケンの神官さまが住んでおったそうな。
「……って出だしで掴みはオーケー?」
「どこもかしこも大丈夫じゃないですよ。なにべっぴんさんとか自分で言っちゃってるんですか」
「そうしてべっぴんなクラーケンさんは、わかく気だてのよいだんなさまと教会でしあわせにくらしたそうな……。めでたしめでた」
「やめろ! その語り口調やめろ! というか、あなた独り身じゃないですか!! あと話を速攻で終えようとするなッ!!」
「うるさいわね! 少しくらい夢見させなさいよ! この独身シー・ビショップ!!」
「く、独身に独身とバカにされる理不尽……!」
「やーい独身! 独身! 足も一本しかないくせに!」
「これ足じゃないですから! 尾ビレですから! あなたみたいにウジャウジャと触手生えてるのと一緒にしないでください!」
「なにを、こっちのが便利でしょ! 夜寂しいときとかセルフ触手ヌメヌメプレイとかできんのよコレ! …………そう、セルフでね」
「う、突然自分の発言でヘコみだしてる……! もう、しっかりしてくださいよ? 一応クラーケンさんには、これからこの教会の管理をお任せするんですからね?」
「えー」
「えー、じゃないッ!! 今まで信徒のクセにぐーたらぐーたらして仕事サボってたのが悪いんでしょーが!」
「と言っても、大して仕事もないんだけどねぇ。前任者さんもオトコ作って逃げちゃったんでしょ?」
「……これまでサボってたぶん、この教会の普段の掃除、参拝者の対応、そして何より結婚式の儀式がある際には必ず私を呼び出すのを忘れないように。いいですね?」
「スルー!! ……はいはい、わかりましたよっと。私に任せなさい、新婦ひがんでイカスミぶっかけたり、新郎さらおうとか考えてないから」
「魔物は人を傷つけられない。しかし魔物同士であれば」
「発言怖ッ!?」
「ちゃんと、してくださいね?」
「う、うっす! シー・ビショップさん、お疲れさまっす!」
「ではクラーケンさん、私はこれで帰ります。あなたによき出会いがありますよう……」
「はいはい。……あー、かわいいショタっ子でもお悩み相談に来たりしないものかしらねぇ」
「クラーケンさん、うまくやってますか?」
「やっべ。あれマジやっべ」
「どうしたんですかいきなり」
「あかんて、ショタっ子あへぇとか妄想してる場合じゃないって」
「いつにもまして頭が悪そうな発言を……。やめてください、すがりつかないでください」
「助けて! シー・ビショップちゃん、助けて!」
「えーと、何をですか?」
「なんか変なのが来た!!」
「なんか変なの」
「ウブで姉好きな弟系ショタを集めようとして教会の入り口に『魔界の食物の出入りを禁ずる。ここ絶対安全』って立て看板置いてたんだけど」
「またワケのわからないことを……」
「そしたらカメが来た」
「……え?」
「ショタっ子じゃなくて、なんか問答したいってカメが来た」
「私、帰ってもいいです?」
「ダメー!! 行っちゃらめぇぇぇ!!」
「うわこら、触手で掴むなっ」
「会うだけ会ってみて! 見るだけ、先っちょだけでいいから!!」
「こら引っぱるな、このヒワイ触手!!」
「……それで、あなたがこの教会のクラーケンにご用がおありで?」
「いかにも」
「あ、私はあの変態触し……いや、クラーケンの上司のシー・ビショップです」
「海和尚と申す。今日はクラーケン殿に問答に参った次第」
「も、問答とは……?」
「こちらの寺の木板を拝見、魔界産の物に頼ることなく、純な愛を求めるお姿に感銘を受けた。そこで、こちの和尚にじかに御心をお聞きしたく」
「……そ、そうですか。問答の内容はどのような?」
「私が三題出し、クラーケン殿に三答いただこう」
「もしその答えがダメだったら……」
「この地の決まりは知らず、だが郷のジパングでは不可であった場合、寺からは甲羅一つで放逐される取り決めとなっておる」
「な、なーるほどー……。じゃ、じゃあ私は退出して、クラーケンを呼んでまいりますねー」
「どーだった!? どーだった!?」
「やっべ。あれマジやっべ」
「うわ全く同じ反応」
「もう頑張ってくださいとしか言えません。クラーケンさん問答に失敗するとこの教会追い出されちゃうらしいですよ、甲羅一つで」
「甲羅なんてないけど!?」
「しかも、失敗と成功の基準すら不明っぽいですよ。海和尚さんの胸先三寸で決まる可能性すらあります。端的に言っておしまいですね」
「えぇぇえ!?
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