ゲイザー村へ行こう

「私達の村では、まず一日に一人ずつ、つきっきりで”歓迎”する決まりです」

 静まりかえった暗い部屋の中。
 アルビノよりも白肌の少女は私の右側で私と腕を組んで、密やかな声でそう言った。
 くすぐるような吐息が私の耳元に当たる。
 私よりかなり背が低いが、それでも息が耳に触れるのは彼女が宙に浮いているからだ。
 彼女の顔にある大きな橙(だいだい)色の一つ目が、彼女が人間ではない異質な生物であると教えてくる。
 けれど、その真っ白な肢体は魔物というにはあまりに人間らしく、整っていた。

「だが勿論、”最初”はトクベツでございます。
 もっとも縁近く、功労者である者がそれを貰う」

 私の目前に立っていた二人目の女性が口を開く。彼女もまた白肌で青色の瞳を持つ一つ目をしていて、背は私と同じ程度だがどこか大人びた声をしている。
 道を私に譲るかのように彼女は横へ歩く。

「あの子はもうベッドの中ですよぅ。あまり焦らさないであげてください〜」

 さらにもう一人、私の左側に立っている、黄色の瞳をした一つ目の、とても背が高い女性が言う。彼女もまた私の腕を手に取りながら私に囁いた。
 巨大なベッドが私の目前にある。

「お兄ちゃん、心の準備ができたらお布団をめくってあげてね」

 ベッドの隣に立っていた、緑色の一つ目をした少女がわたしに囁く。
 ゆっくりと四人の少女たちは私から離れ「さあ」と合図をする。
 その言葉に従うまま、私はベッドに近づく。三人は横になって寝れるほどの大きさだ。

 ふわふわした柔らかい布団をめくると、赤い一つ目の幼い少女が裸で寝転んでいた。
 私をここに呼び、今日ずっと寄り添ってくれていたあの子。

「……っ」

 癖のついた長い黒髪と黒い手足、すべすべした白い肌が織りなすコントラスト。
 幼いながらもわずかに膨らんだ乳房の形、柔らかそうなお腹、しなやかで細い手足。
 黒いゲルのようなもので股間と乳首こそ隠されているが、かえってそれが扇情的だ。

「あ、あんまりじろじろ……見んなよぉっ……」

 恥ずかしそうに顔を赤らめ、私から目を逸らす様がいじらしくて堪らない。 
 情欲を掻き立てられて、興奮が高まっていく。

 後ろで扉が開く音がして、四人の少女達がこの部屋から静かに出ていくのが見えた。

「まずは二人きりで。それではしばしの間、失礼します」






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 事のきっかけは七月の終わり頃、勤める会社に掛かってきた私宛ての電話だった。
 ウチのようなさして有名でもない出版社に女性が、それもライターを名指しで電話を掛けてくる事自体珍しく、印象に残っている。
 相手の女性が語ったのは、K県のある山中に「目が一つしかない者達が住む」村がある、という噂話だった。一分野としてオカルト関係も扱う以上こういったリークはままあるが、その殆どはイタズラである。
 しかし相手は「調べてみてくれ」の一点張りで「裏付けとなる情報を渡したいので、直接会って話がしたい」とまで言い出した。
 本来ならこんな胡散くさい話を信用する事自体が間違っている。
 だが、オカルトといえば同業者から焼き増ししたようなネタばかりの昨今。
 丁度予定も空いていた時期なので、藁にすがる思いで彼女の話を聞いてみる事にした。
 件の女性と会う約束をしたのはその三日後である。



 まだ知る人のない貴重なネタなので人目に触れる場所は避けたいと彼女が言って、地下の駐車場で会いたいと提案された。
 念の為に監視カメラが付いている所を選んでおいたので、迂闊な事はされまい。
 エンジンを掛けたまま車を停め、冷房を効かせて車内に座ったまま待つ。
 午後一時が約束の時間だ。

 約束の五分前になると、コンコンと窓を叩く音が聞こえた。

 ウィンドウを開ける前に私は相手の外見を確かめる。
 肩まである癖のついた黒髪に、茶色のロングコート。地下で薄暗いのと長い前髪のせいで、顔は下半分しか見えない。その顔もあまりよくは見えないが、とにかく肌が白い。
 しかしこの夏盛りにコートを着てくるのは一体どういう了見なのか?
 日の当たらないこの駐車場の中でさえ冷房が欠かせないのに。
 不審な事この上ないが、ここまで来てそんな事を理由に追い返す気にもならない。

「こんにちは。あなたが先日の情報提供者ですか?」

 ウィンドウをほんの少しだけ開けて、外に立つ女性に話しかける
 コートの厚みを差し置いても身体は細く、背は私より低いようだ。女性というよりは少女である。
 彼女が「ああ、」と返事したので、助手席に座ってもらうように私は声を掛けた。

「失礼するぜ」

 車のドアが開いて、密やかな彼女の声が車内に響く。声は電
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