魔物娘流・ビジネスマナー講座

 大学四年生になったばかりの彼は今、就職活動前線の真っただ中。
 しかし、この前の面接では「もっと礼儀やマナーを学びなさい」と暗に言われてしまいました。
 真面目な彼は大学に戻ったとき、受講者を募集するポスターを見たのがきっかけで、すぐさま『社会人としてのマナー研修』を受講予約したのです。

  ”本社は、この講習を受けた際に生じる、利用者または第三者が被ったいかなる不利益、損害について、理由を問わず一切の責任を負わないものとします”

 ”契約書”に書かれた受講規約の、この一文を見落として。





(※いうまでもなく魔物娘流のマナーなので、よい子のみんなは魔物娘のいない場所でマネしちゃだめですよ!デーモンさんとの約束です!)



【デーモンさんと学ぶ:挨拶・言葉遣いのマナー】


『本日は弊社のオフィスまでご足労いただき、ありがとうございます。
 それではよろしくお願いしますね、佐藤さん』

「は、はい。よろしくお願いします、出門さん。
 (一対一とは聞いてたけど、こんな美人な方が講師だなんて……緊張するなあ)」

『では、最初は上司との……特に付き合いの深い上司との、挨拶や言葉遣いについてです』

「上司と、ですか?」

『そうですよ。相手がわ……上司であるからといって、気を遣いすぎるのもマナー違反ですし、もちろん親しき仲にも礼儀あり、とも申します。
 塩梅が難しいものではありますが、覚えていきましょう』

「はい、ではどういうふうに……?」

『対応に関しては、接客七大用語に「いかもおおあし」というのがあります。
 これは基本的にはお客様との対話で使うものですが、言葉遣いとしても様々に応用していけるので、それを学んでいきましょう』

「わかりました。 「いかもおおあし」……というのは、もしかして頭文字をとった感じのものですかね?」

『ええ! ご明察の通りですよ、佐藤さん。
 では一つずつ挙げていきますね。メモと復唱の準備はよいですか?』

「えっと……はい、大丈夫です」

『では最初の”い”。「イカせてください」の”い”です』

「いかせてくださ…………え?」

『わた……上司との間柄では、ちゃんと希望をはっきり口に出すのが大事です。
 曖昧な言い方では自分がどう思っているのか、どう「感じている」のか伝わりませんからね』

「も、もっともらしい事を言ってますけど、なんかおかしくないですか?!
 語句が!語句だけが!」

『次は”か”です。これは「かしこまりました」ですね』

「え、ああ……(あれ?いきなり普通になった……)」

『わたs……上司の命令はほぼ絶対なので、基本的には素直に聞き入れましょう。
 どうしても苦手なことや、手が離せない場合は除きますが、そのあともしっかりフォローが必要です』

「は、はい」

『そのフォロ―によく使うのが”も”の「もうしわけありません」です。
 断る場合こそ、丁寧な対応が必要ということですね』

「なるほど……(さすがに最初のは聞き間違いだったのかな)」

『次は”お”ですね、まあ”お”は二つ続くので順番はどちらでもよいのですが。
 「おっぱい」と「おしり」。とても大事なものです』

「いや聞き間違いじゃなかった!絶対聞き間違いじゃなかったよこれ!!」

『わたs……上司にどちらを要望するか、両方とも希望するかは自由です』

「いやどう考えてもおかしいでしょう色々と?!」

『あっ、何か説明に不手際がありましたか?』

「それは……どこから突っ込んでいいのか分かりません……」

『じゃあ次に行きましょう。ガマンができな……いえ、時間が無くなってしまう前に。
 次は”あ”ですね、これは……』

「(まあ、ここはやっぱり「ありがとうございます」かな……)」

『お分かりとは思いますが、”あ”は「愛してます」ですね♪』

「なんで上司に愛の告白をするんですか!?」

『えっ……? ああ、そういうのはもっと大事に取っておくべきだということですね。
 その気持ちはとってもよく分かります……うふふ
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 でも、ちゃんと口に出してこそ意味がある言葉というのはたくさんあるんですよ?』

「そ、そういう事じゃなくて……」

『では最後の”し”ですね。もちろん「シャセイさせてください」です』

「いやまたそんな……しかも最初とほぼ同じで――」

『あら、似ているようで違いますよ。
 男性の方はどうしても女性より短い周期で性欲が溜まりがちなので、セックス以外で発散をしておきたい状況も芳しくはありませんが、ままあります。
 そういう時には希望を相手にちゃんと伝えること、また丁寧に懇願する態度が大事なのです! これは社会では常識ですね♪
 さて、「いかのおおあし」は頭に入りましたか?』


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