そのゲイザーは極度の人見知りだった。
目を合わせることが彼女たちの本分であるにもかかわらず、平常ではそれができないぐらいに。
名前はレティナ。
いつもレティナはぱっつんの前髪で顔(と赤い目玉)を隠している。
それに普通のゲイザーは背中から触手を出しているけれど、彼女はどうやってか引込めている。
曰く人に見られるのも見せるのも恥ずかしい、とのことだ。
そんな彼女だから外交的な趣味もなく、読書が趣味である。
僕と彼女が知り合い始めたのもそういう縁だった。
「その本……面白いの?」
これが僕と彼女とをつなげた、か細い僕の一言だった。
「……ぇ、あ……」
図書室で突然話しかけられた彼女はその時言葉も出ず、僕も上手く答えてあげることができなかったのだけれど。
それでも、彼女と話をしたいことだけは伝わったようで。
「お、面白い……よ」
レティナは簡潔に、そう答えた。
僕とレティナが仲良くなるのに、意外と時間は掛からなかった。
彼女は臆病で人見知りではあるけれど、人付き合いが嫌いというわけではないらしい。
気が付けば彼女と会うのが日課になり、図書室以外の別の場所でも逢うようになっていた。
元々同じクラスであったのも、丁度良かったというところだ。
皆が帰った後の放課後の空き教室。
彼女は一人、椅子に座って本を読んでいた。
「ねぇ」
「ひゃっ! ……び、びっくりした……」
僕が声を掛けると、彼女は驚いて声を上げた。
よほど本に夢中になっていたのだろう、僕がいることも気付いていたかどうか怪しい。
「帰らないの?」
「うん……図書室で借りた本、もうちょっとだから、読んでいこうと思って」
そう言って彼女はページを捲る。確かにもう少しで終わりそうな分量だった。
――言うなら今かもしれない、と思った。
彼女が本を読み終えて閉じるその瞬間、僕は言う。
「付き合ってほしいんだ」
僕がそう言った瞬間、時間が止まったような気がした。
「……ぇ」
彼女のつぶやきは言葉にならなかった。
本に夢中になっていたはずの彼女が、ぱたん、と本を倒す。
「ごめん、いきなりこんな事言って。
でも、僕、君のことが好きで、もっと一緒になれたらなって思って――」
きっと僕の顔は真っ赤になっていただろう。
しどろもどろになりながら、僕は言葉を続ける。
彼女は髪の下にある赤い一つ目をごろりと転がして、僕を見た。
なにかを言いあぐねる様子で。
「……うれ、しい……でも……」
その表情は上手く読み取れないけど、どこか悲しそうな声色。
「私……その……ずっと隠してたことがあって……」
「隠してたこと?」
思わず僕は聞き返す。
「私のこと……知ったら、きっと……幻滅しちゃうと思うから……」
声でそう続ける彼女は、本当に泣き出してしまいそうだった。
「そんな。幻滅だなんて」
「……たしの……」
彼女の言った言葉が信じられず、僕は聞き返す。
なぜか、いつもの臆病な彼女の姿が、どこか神秘的に見えた。
そして彼女はとんでもないことを言いはじめる。
「私の、裸の姿……見てくれる?」
その言葉に思わず僕は驚いた。
元々ゲイザーは裸を基本とする種族だと聞いたことがあるけれど、彼女は制服を着ている。
それを僕は普通だと思っていたし、気にすることもなかった。
なにより、今は彼女の言葉の印象が強すぎて何も言えなかった。
「え……」
「見てくれたら、分かるの……きっと幻滅するって」
そう言いながら彼女は制服を少しずつ脱いでいく。
止める暇もなければ、止めたいとも思わなかった。
まだヒトが戻ってくるかもしれない放課後の教室で、ゆっくり彼女は服を脱いでゆく。
制服の上着、スカート、小さなブラジャー……。
そして、簡素な白いショーツ。
「で……でも……」
「大丈夫。元々、私たちは服なんて着ないから。
私が服を着てたのは――これを隠してたせいなの」
彼女はそれを脱ぎ捨てると、僕をじっと見つめる。
「見て……くれてる……?」
僕は真っ赤になりながらも彼女を見る。
黒いゲルのようなものでレティナの股間は隠されているけれど、そこはぷっくりと膨らんでいる。
それは確かに、女の子にしては少々異様な姿だ。
「わたし……女の子なのに…… その……」
股間が膨らんだその形は、僕にも見覚えがあるようなものだった。
それは女性には決して付いていないはずの性器。
睾丸は付いていないが、それは確かに――
「おちん、ちんが……付いてるの……」
彼女は僕から目線を逸らし、赤い一つ目をどこか他所へ向ける。
恥ずかしさのせいか、彼女も顔は赤らんでいた。
「こ
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