見つめ合う青春

 私のヒミツは驚くほど簡単にバレた。
 なんで?どうして? あんなに必死で隠してたのに! こんな簡単にバレるなんて!
 私は家に着くと自分の部屋へ行き、鞄をぽいっと捨ててベッドに突っ伏し、枕に顔を埋める。低反発のに変えてて良かった。
 足をバタバタさせながら布団を叩く。ぼすぼす。

「はぁーっ」

 溜息が出た。
 気が付くと私の肌が白くなりかけていて、ああまた成っちゃいそうだな今ならいいかと思ったのでブレザーとシャツとを脱いでおく。ガマンする必要もないし。
 このままだとアタシ、ずっとブラジャーも着けなくていい。……胸が小さいせいとかじゃなくて。

 ――我ながらもう、どっちが本当の私なのか、アタシなのか、分かんないな。

 どうしよう。釘は差しておいたし、ウワサにはなったりしないだろうけど、明日どんなカオして学校行けばいいんだろう。普通にできるかな。
 ……っていうか、最初にバレた時にアタシの力でどうにかすればよかったのか。
 記憶を無くさせるとか、それはアタシじゃなかったとか、いくらでも”暗示”で誤魔化せたのに。
 ああ、そう思い付いたのも今更で、もはや後の祭りだ。
 こうなったら腹を括ろう。
 アタシのヒミツを知っているのは、アタシ以外にはあいつしかいないんだから。
 ……そうだよ、仲良くなっちゃえばいいんだ。
 あいつはアタシのこと見ても大丈夫そうだったんだし。
 あーでも、今まで仲良くなかったのに急に話しかけるのって変かなぁ。でもあんなコトがあったんだから、ちょっとぐらいへーきかな。
 ……メルアドくらい聞いとけばよかった。
 明日聞こっと。










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 僕のクラスメイトの女の子は、一つ目をした魔物だった。

 彼女の名前は亜芽(あめ)、中学生三年生。
 僕が学校で見た彼女の目はもちろん”二つ”あった。
 背は少し低めで、身体もどちらかと言えば細い。
 前髪が長いけれどヘアピンはつけていない。ロングヘアの黒髪をいつも簡素に後ろで縛っている。
 真面目そうな、おとなしそうな雰囲気で、声色も落ち着いている。 たしか美術部だ。

 僕と彼女は何度かクラスメイトになったこと以外に何の接点も無かった。授業で同じ班になった時に話をする程度で、苗字さえつい最近覚えたところだ。
 誰かと話している所はあまり見たことがないけれど、仲が悪いようには見えない。
 ただ、大体の子(特に女の子だ)が色々なグループを作っているのに対して、彼女はどこにも集っていなかった。でもそういう子自体はクラスに他にも何人かいたので、それも気にはならなかった。

 

 十月に入り、肌寒くなってきたころ。
 その日はテスト期間で部活もなく、皆が早めに下校していた。
 僕も亜芽さんもいつものように自転車に乗って学校を出る。
 彼女とは大体の帰る方向が似ていたけれど、今まで一緒に帰ったこともないし、詳しい帰り道も家の場所も勿論知らない。
 一人で帰っていた僕はいつもの通学ルートを外れて、お気に入りのジュースがある自販機に寄っていた。コンビニの少ない田舎町なのでどうしてもこういう場所に来てしまう。
 ジュースの蓋を開けようとした時、下にある道を自転車で走っていく女の子がいた。
 亜芽さんだ。
 その漕ぎ方は慌ててスピードを出しているようにしか見えず、急いでいるように見えた。
 ガードレールから身を乗り出して僕は彼女の行先を確かめる。
 すると彼女は、僕のいる本道の下にある、側道を繋ぐとても小さなトンネルに入っていった。
 どうしてそんな所に入ったのだろう?
 疑問に思った僕は未開封の缶を置き、彼女が何をしているのかをつい確かめに行ってしまった。幸か不幸か、下道に降りる階段がすぐそばにあったせいかもしれない。

 二メートル半ほどの高さしかないトンネルは狭く、暗い。覗こうとしなければその中はまず見えないだろう。
 そっと僕が中を覗くと、スタンドで立てられた自転車の横に誰かがいる。自転車の荷台には僕の学校の制服であるブレザーが掛かっていた。
 そして、僕に背中を向ける形で道に座り込む人影。その誰かは背中から十本のうごめく触手を生やしている。顔は見えないけれどとても異様な姿で、そしてスカートの下からだけ服を着ていた。

 人影の前には黒い何かが置いてある。
 僕は音を立てずにトンネル内に入り、じっとそれを見ていると、その黒い何かが動く。そしてにょきりと四本、足が伸びる。
 黒猫だった。
 その猫はみゃあ、と鳴くと、ゆっくり立ち上がり、ぶるぶると身を震わせる。
 真っ黒い毛でふわふわとした猫の背中に、人影から真っ黒い手がそーっと伸びた。
 しかし猫はそれを慌てて避けると、僕のい
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