チャイムが放課後を告げる。明日が土曜日と言う事もあって、教室はそれなりに騒がしい。
明日使う教科書を机に入れておこうとしたその時、僕は机の中で見覚えのない紙を見つけた。
折りたたまれたその紙の中を見ると、『三階の視聴覚室の隣にある、空き教室に来て』と書かれている。
一見ぎこちない、癖のあるその文字を見ただけで、僕は誰がそれを書いたのか簡単に分かった。
紙で指定された空き教室に着くと、ほんの少しだけ扉が空いていて、教室の中に誰かが立っているのがその隙間から見えた。
雪のように白い肌、真っ黒で長い髪の毛、背中から伸びる黒い触手。背は僕より少し低くて、小さめのブレザー。
それは僕が予想していた通りの相手。
僕が教室の引き戸を開くと、教室の中に居た彼女はそっとこちらを振り向いた。
顔の半分を埋めそうなほどに大きな、赤い瞳の一つ眼が僕を見つめる。
「わざわざこんな所に呼び出すなんて、まだ立場が分かってないのかな」
僕が気怠そうに言うと、彼女は困ったように下を向く。
彼女の身体は近くで見ると小刻みに震えていて、背中の触手は犬が尻尾を丸めるみたいに縮こまっている。
「……も、もう、限界なの。お願い……」
僕の身体に、彼女のか細い体がすがりついてくる。絞り出したようなその声は弱々しくて、彼女の息は荒く、小刻みだった。
「こんな所で欲しがるんだ? 思ったより節操がないんだね」
体勢を崩しながら僕の肩に手を載せ、上目遣いで彼女が僕の目を覗き込む。
その表情に余裕はほとんどなく、僕の嗜虐心をこれ以上ないぐらいくすぐってくれる。
じっと僕を睨むその大きな一つ眼は、何度も瞬きをして、瞳を潤ませながらも僕と目線を絡ませていた。
「せ、セイエキ……、君の、じゃないと……っ」
「……どれだけ『暗示』を掛けようとしても駄目だよ。僕には意味がないんだって」
僕は彼女の顔を見下ろしながら、更に続ける。
「いくら力の強いゲイザーでも『暗示』が効かなくなったら、もうただの小さな女の子だね。
だから、こんなに余裕を持って君を手懐けられるワケだけど」
「あ……うぅ、」
荒い吐息を続ける彼女の黒髪に指を這わせ、僕はその触り心地を楽しむ。
それでも彼女は僕を睨む事を止めない。
窓から差しこむ夕暮れの光に反射して、彼女の赤い一つ目は綺麗に光っていた。
「でも、せっかく頼んできてくれたんだし、突き離すわけにもいかないなあ」
「……! じゃ、じゃあっ」
僕が言い終わる前に、彼女はその言葉に反応した。
肩を掴んでくる手に力が入って、僕の制服がきゅっと歪む。
「ほら、早く服脱いで。全部」
「――え、こ、ここで……?」
「当たり前だよ。君が言い出した事なんだから」
「け、ど……」
彼女はそれ以上抗議することなく、静かに制服のリボンを外し始めた。
元々、ゲイザーという種族は服を着る必要がなく、したがって肌を晒す事自体にも抵抗はない。
だが、こちらの世界で共存する内に性質が変わっていったのか、個体差なのか、ともかく彼女は人前で服を脱ぐのをためらう。
それに普通のゲイザーは、胸や秘部などの繊細な部分を黒いゲル状の物質(魔力の固まりらしい)で保護しているのだが、それもほとんど見当たらない。
身体越しにちょろっと見える尻尾のような毛も大した大きさは無く、臀部を少し隠している程度だ。
なので彼女が服を脱ぐのは、真っ白な肌の少女が、公共の場で裸体になるのとほぼ同じと言える。
「……っ」
制服とカッターシャツは脱いだけれど、流石に下着を脱ぐのは躊躇っている。
放課後とはいえ学校には人が残っているし、偶然誰かが通りすがって見られてしまうかもしれない。
いくら『魔物娘』の通う学校とはいえ、彼女たちにも羞恥心というものがある。
「靴はそのままでもいいけど……下着は脱いでもらわないと」
「わ、わかってる……」
薄いピンク色のブラジャーとショーツは少し子供っぽいデザインで、服に隠されていた彼女の体型は服の上から見るより更に細く、幼く見えた。
左手で小さな胸の膨らみを隠しつつ、彼女は右手でブラジャーを少しずつ外す。それが終わると、今度はぎこちない動きでショーツをずらしていく。
生まれたままの姿に近づくほど、彼女の白い頬が赤く染まっていく。僕は微笑みながらその光景を見ていた。
「ぬ、脱いだ……よ」
机の上には脱いだ服が置かれている。下着をよく見ると少し濡れているのが分かった。
「うん、素直でいいね。
じゃあ、これ。僕からのプレゼント」
僕はそう言って、通学鞄の中から白い袋を出す。
そしてその袋の中から、大きな黒い首輪を取り出して、彼女に見せた。
首輪の端からは丈夫な縄が伸びている
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