グランベリアの探究は図鑑世界の火山より始まる。
そこでグランベリアはここの世界の魔物の印象を決定づける、最初の魔物と遭遇する・・・
「あ! お〜い、そこのリザードマン!」
この世界にやってきたグランベリアが最初にかけられた言葉がこれだった。
「な・・・リザード!?」
ひたすら剣の腕に磨きをかける生活を送っていたグランベリアだが、無知と言うわけではない。
あらゆる知識や教養も身につけていた。
当然、リザードがトカゲを意味する言葉だと知っている。
多少のことでは動じない彼女だが、さすがにリザードと呼ばれたことには龍人としての誇りが許さなかったようだ。
「無礼者・・・誰がリザードマンだ・・・」
「あれ? 違うのかい?」
グランベリアに声をかけてきた人物が拍子ぬけたような声を上げる。
褐色の肌に赤茶けた髪を持つ女性だ。
だが、彼女の四肢は茶色の鱗におおわれており、同じ色の爬虫類の尾を持っていた。
どうやら魔物のようだ。
「私は魔・・・魔剣士グランベリア。龍人族の剣士だ」
魔王軍四天王と名乗ろうとしたが、いたずらに魔王の名を出して調査に支障をきたしたくなかったので、伏せることにした。
「リュウジン? ドラゴンか? その割には角も翼もないけど・・・」
「・・・」
どうも龍人と見なされていないことが癇に障るが、それと同時にこの世界でのドラゴンの外見をグランベリアは脳内にメモする。
「名乗ってくれたからあたしも名乗らないとね。サラマンダーのニクスだ!」
「サラマンダー? お前は精霊なのか?」
グランベリアの言葉にサラマンダーは目をぱちくりさせる。
「何を言っているんだいグランベリア。サラマンダーってリザードマンの亜種だぞ? 炎の精霊はイグニスだぞ?」
ニクスの言葉に今度はグランベリアが驚く。
グランベリアの世界で四大精霊といえば風のシルフ、土のノーム、水のウンディーネ、そして火のサラマンダーだ。
だがここでは火の精霊だけ違い、サラマンダーというと今目の前にいる魔物の種族を差すようだ。
そしてこのサラマンダーという種族は・・・
「最高に燃える戦いができる男を探して自らを鍛える、戦士なのさ」
「ほぅ・・・」
グランベリアの口角が軽くつりあがる。
最初に出会った魔物が自分に近い種族で、それも同じ戦士であると言うことに好感が持てた。
「で、あんたもなかなか強そうじゃないか。いっちょ、試合をしないか!?」
「よかろう・・・炎の魔剣士、グランベリア! 受けて立つ!」
腰の大剣を抜き放ち、グランベリアが声を轟かせる。
「そうこなくっちゃ! いっくぜええぇい!」
ニクスも腰の湾刀、タルワールを抜く。
ここに時空を超えた戦いが始まった。
「でやあああっ!」
先に攻撃を仕掛けたのはニクスだった。
低い姿勢からグランベリアに向かって突進する。
「性格に似た、まっすぐな突進だな・・・!」
迎撃するべくグランベリアは大剣を片手で静かに構える。
だが・・・
「はああっ!」
ニクスがグランベリアの間合いにあと一歩で入ると言うところで、ニクスの突進の速度がさらに上がった。
「何っ!?」
虚を突かれたグランベリアは迎撃を諦め、体を開いてその突撃をかわそうとした。
だがニクスの刃はグランベリアがかわすために動こうとしている方向から襲いかかってきている。
そこまで考えていた襲撃だったようだ。
やむを得ず、グランベリアは自分の剣でニクスのタルワールを弾く。
「私に防御をさせるとは・・・最近の勇者なんかと比べ物にならないくらい強いようだな」
再び構えなおしながらグランベリアは正直に感想を述べる。
「あたしも、あたしの剣を冷静に弾くヤツなんか初めてだよ。それもそんなバカデカい剣で、片手で・・・」
声が弾んでいるのを隠さずにニクスも言う。
よく見ると、彼女の尾に火がついている。
「貴様、その炎は・・・?」
「これかい? これは戦いのテンションのバロメーターってやつさね! さぁ、まだまだ行くよ!」
再びニクスが突進する。
今度は互いの剣先が触れ合う間合いで止まった。
右、左、下、上とニクスの斬撃が連続でグランベリアを襲う。
グランベリアはその連撃を半歩下がったり剣でさばいたりして対処した。
「まだ・・・! はぁ!」
ぐおっ・・・
周囲の空気をえぐって削るかのような音を立てながら、ニクスの左回し蹴りがグランベリアの頭部を目がけて放たれる。
「蹴りか・・・面白い!」
さらにニクスが燃え盛る尾での攻撃を放つのを見てグランベリアの顔に笑みが広がる。
グランベリアがいた世界では勇者を名乗る未熟者が多く、彼女はそのことを非常に憂いていた。
だが、この異世界に彼女を楽しませるような存在がいた・・・楽しくて仕方がない。
「面白いと言うには、あんたは攻撃してこないじゃないか」
「私に攻勢に回ることを
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