二章 ドタバタ日和

進学先が決まったからと言ってダラダラとニートや引きこもりみたいな生活をしているわけにはいかない。
高校の卒業式までにいろいろやらなければ……
車の免許はちょっと時間的に辛そうだから、それはあきらめて原付の免許を取る。
そのために今日は家を出て近くの自動車学校に予約をしてきた。
ちなみに斉田は留守番だ。
おとなしくしていれば家族にバレたりして面倒なことになったりはしないだろう。

そう思っていた。

たしかに家族にバレたりはしなかった。

だが……

「お前、なんてことをしてくれたんだ……」
「だって暇だったから」
ベッドの上でぷかぷかと浮きながら悪びれもせずに斉田は言う。
帰ってきてみたら俺の部屋は酷い有様だった。
確かに退屈だったのだろう。
床にはゲームソフトが散らばっており、机の上にはいくつか漫画が無造作に積み重なっていた。
うん、戻してくれたら嬉しかったけど、まぁこれに関して俺はとやかく言うつもりはない。
だが……
「どーしてエロ本を引っ張り出してきた!?」
そう、斉田は俺が持っていたエロ本も見ていたのだ!
ベッドの上にはずらりとそれらが並んでいる。
「いや、男子の部屋に来たらそれを調べるのが礼儀ってものでしょう?」
「どういう礼儀だよ、それって」
「魔物娘的礼儀……」
そうか、そう言えば斉田は魔物娘、ゴーストになったんだったな……
だからと言ってエロ本などを引っ掻き回されて見られたのはやはり恥ずかしい。
「それにしてもエロ本ってこんな感じなのねぇ……いやらしい。男の人ってみんなエッチなことしか考えていないんだから……!」
「魔物のお前が言うなよ」
ぼそりと俺はつぶやく。
現に口ではそう言いながらお前は嬉々とした表情でエロ本を見ているじゃないか……そんな表情、今まで見たことないぞ。
「ふ〜ん、ふ〜ん……こんなこともするのかぁ……」
ダメだ、斉田はエロ本に没頭してしまっている。
俺は首を振った。
とりあえず斉田が出したままの、机の上の漫画を片付ける。
「……?」
そのとき、ふと俺は違和感を覚えた。
机の上には漫画しか乗っていない。
教科書や参考書の類は一切乗っていなかった。
ガリ勉の斉田のことだから参考書でも見そうな気だが……
『……まぁ、死んで復活してまで斉田も勉強はしたくはないか。入試もある意味終わっている状況なんだし、羽を伸ばせばいい』
そう思って俺は漫画をしまった。
「ねぇ」
最後の一冊をしまおうとしたところで斉田が俺に声をかけた。
「男の人ってこんなのを見てオナニーとかしているの? その……ペニスをシコシコって……佐々木君も?」
「なっ!?」
斉田の質問の内容に俺は思わず漫画を落としそうになった。
あの真面目の塊とも言える斉田の口からそんな卑猥な言葉が飛び出すとは……
クソ真面目に「ペニス」と言っているのが余計に卑猥に感じる。
「どうなのよ?」
驚いている俺の前に斉田がにゅっと現れた。
ゴーストだから瞬間移動とかも出来るのだろう。
「ま……まぁ、したことあるさ」
「ふ〜ん……やっぱりそうなんだ。ねっ、ねっ。今それを見せてくれない?」
「はぁ!?」
思わず間抜けで大きな声が出る。
「なんでそんなことしなくちゃいけないんだよ!」
「いいじゃない別に。興味あるし、私は精が必要だし……」
そう言えば魔物娘は食料や魔力のために人間の精液が必要だったんだな。
目の前の斉田も姿がおぼろげだ。
「だからと言ってなんでお前にオナニーを公開しなきゃならないんだよ! んなことするか!」
俺は部屋から出ていこうとした。
今の斉田にはそんなに魔力がない。
金縛りとか俺の精神を操るとか、そんなことはできないはずだ。
だから俺を止めたりオナニーを強制したりすることは
「できないと思った?」
背後から声をかけられる。
「なっ!?」
俺は思わず脚を止めた。
金縛りなどの類ではない。
動こうと思えば動ける。
「確かに、今の私には高度な魔法とかは使えない。でも、佐々木君の脳に妄想を流し込むことはできる」
言葉のとおり、斉田の妄想が俺の頭の中に流れ込んできている。
そしてそれは俺の足を止めるのに十分な効果を持つ内容だった。
俺が持っているエロ本に出ているエロい格好やポーズをした女が脳内に映し出される。
しかもその女の顔はすべて……斉田だった。
いや、顔だけじゃない。
良く見れば、身体も全て同じだ。
写真の中の女の格好やポーズを全て斉田がやって、見せつけているのだ。
『さ、斉田ってそこそこ胸が大きかったんだ?』
そう言えば確かに生前の斉田は、制服姿では分からないが、ジャージ姿になったりすると胸元にくっきりと丸い膨らみが確認できた。
あの真面目な斉田が、彼女の妄想のヴィジョンとはいえ、こんなにエロい姿を見せつけてくる……
その妄想の内容に、不覚にも俺は勃起
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