「ん・・・あっ・・・はああっ・・・!」
月明かりが差し込む寝室、なまめかしい女の声が上がる。
声を上げているのは私自身、声を上げさせているのも私自身だ。
「う・・・うぅん・・・あっ・・・ふあっ・・・」
年に数回迎える繁殖期・・・昔、中世ではこうなったら有無を言わさず男を押し倒し、この鋭い鎌で相手の服を切り裂いて交わったものだ。
だが今は、恋愛や結婚は真剣に考えなければいけない時代・・・生きていくためにも考えなければならない時代だ。
情欲に任せて男を襲うなんてことは出来ない(だいたい今の時代、相手の同意もなしに襲って性行為に及ぶのは魔物娘と言えど立派な犯罪だ)
だから、自分で慰めて仮初の平穏を保ち、発情期をやりすごす。
「ん・・・はぅ・・・ん・・・いやぁ・・・」
左手で胸を揉み、右手で自分の股間をまさぐる。
くちゅくちゅと卑猥な水音が私の耳に響く。
その音がより私の情欲をかき立てる。
『晋太・・・』
高校生の時に交わった初めての相手のぬくもりを思い出しながら指を膣内に潜り込ませていく・・・
マンティスは誰かと交わるまで「好き」という気持ちは分からない・・・ただ生きることだけに集中する種族だ。
私も例外なく、何となく席が隣だったからという理由で彼を押し倒すまで、好きという気持ちを知らなかった。
始めて交わり、それまで経験したことのない正体不明の快感を味わう・・・そしてその時初めて私は人を好きになる気持ちを知り、男のぬくもりを知った。
以来、私は繁殖期に入るたびに彼と激しいセックスを繰り返した(繁殖期と言っても避妊はしていたが・・・)
世界が中世であったら私はそのまま彼と結ばれることになっただろう。
だが今は自由に恋愛ができる現代・・・大学に行くと私たちは疎遠になり、ほどなく彼には別に好きな人ができた。
エッチが上手そうなサキュバスだった。
「ん・・・はっ・・・くぅう・・・」
嫌な記憶を思い出してしまい、それを振り払うかのように私は膣内にもう一本指を挿し入れ、ぐねぐねと動かした。
しとどに濡れ、解れている肉壁は私の指を受け入れ、もっと激しく動くことを要求する。
「はああああっ!」
快感が下腹部から脊髄を通って脳に駆け上がった。
もうこうなったら自分を止めることはできない。
胸を愛撫していた左手を下腹部に這わせ、敏感な陰核を愛撫する。
だんだん頭が快感で白く塗りつぶされていく・・・
・・・自慰を始めたのは晋太にフラれた時からだった。
男はやはりエッチな女のほうがいいのか・・・そう思ってそういう情報誌に手を伸ばしてもみた。
そこにあったのは、自慰で自分が感じるところを開発してみるというものだった。
確かにそうやって自分のことを知るのは大事だと分かった。
すぐにイクことも知った。
今もそろそろ限界が近い。
「ん・・・はぅ・・・あっ・・・あああ・・・!」
イクことを知ると私はしばらくの間、自慰に夢中になった。
自らにとどめを刺すべく、昔と変わらない方法で、陰核を左の人差し指と中指で、キュっと挟むようにして刺激する。
「くっ・・・あっ! ああああ!」
身体が弓なりに反り、けだるくも激しい快感の海に放り込まれた。
この間は何も考えず、快感をむさぼる。
この間だけは・・・
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
絶頂が過ぎ去り、ベッドの上で荒い呼吸をする。
そう、絶頂の間だけは何も考えずに済む、いろんなことを忘れられる。
自慰に夢中になったのは、単に気持ちいいからというのではなく、初めての男を忘れようと必死になっていたからなのかもしれない。
右手を引き抜き、目の前にかざしてみる。
自分の愛液でてらてらと光っていた。
それを私は(多分)無表情で見る。
『いつまでこんなことを続けるのかしらね・・・?』
私たち魔物娘は普通の人間より寿命が長く、生殖に特化しているため、女盛りである期間は長い。
だが、仕事が忙しいから、周りに良い男がいないから、生きるのに必死だから・・・そう言い訳して男と付き合うことから遠ざかって、初めての人を忘れようとして、仮初の安定を得るために自分を慰める生活をどれくらい続けるのだろうか?
そんなことをしていたら、いくら魔物娘でもあっという間に女盛りを過ぎてしまう。
ジュン・・・
繁殖期ゆえか、一度イッただけでは身体は納まらなかったようだ。
火がついた身体は、今はそんな生きることや女ざかりの期間のことを考えるよりも、さらに燃え上がることを、さらなる快楽を求める。
今はすべてを忘れ、一度イッて全身が敏感になっている自分の体を再び自分で愛撫し始めた・・・・
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