アカオニたちが漁村で暴れている・・・そう聞いた桃太郎は真相を確かめるべく、その漁村に旅に出た。
道中で狼娘・ワーウルフのラン、猫娘・ワーキャットのリン、青歌鳥娘・セイレーンのレンを仲間にし、件の漁村についた桃太郎が見たものは、楽しそうに宴をしている村人とアカオニたちだった。
事の真相は、アカオニたちがイスパニャから留学してきた緑鬼娘・オーガの歓迎会で酒を飲ませ過ぎ、酔ったオーガが暴れたのをたまたま大陸の教団の僧侶が見かけ、過大に解釈して触れ回っていただけのことだった。
桃太郎は誤解を詫び、アカオニたちと友好な関係を作ろうとした。
「僕たちは誤解したようです、ごめんなさい」
「な〜に、いいってことさね」
桃太郎はアカオニたちの首領・薊と握手した。
だが、件のオーガとも握手しようとしたとき、オーガはその手を何故かとらなかった。
「だがおまえ、『おにたいじ』にきたんダロウ?」
桃太郎を見下ろしながらオーガは低い声で言う。
その目は闘志でギラついている。
「え? いや、でももう退治するとか、争う理由はないし・・・」
「いや〜、せっかくここにきたのになんにもしないでかえるのもつまらないダロウ? アタイとしょうぶしようじゃないカ!」
オーガはニヤリと笑って突然そんなことを言いだした。
「お〜、いいぞ〜!」「力くらべだ〜!」「見ものだぞ!」
宴会に参加していた人たちもアカオニたちも盛り上がる。
「ご主人様〜! ご主人様強さを見せ付けてやってくださ〜い!」
「やっちゃえにゃ〜!」
「きゃーっ! 応援するよ〜っ!」
ランもリンもレンもはやし立てだした。
その頬はすっかり赤くなっている。
相当飲んだようだ。
「よぅし! ではアタイが立ち会おう! 武器をとって真剣一本勝負だ!」
薊も乗り気になり、桃太郎はオーガと勝負することになった。
「理由もなく戦うつもりなんてないのに・・・」
「だが、お前も案外乗り気なんじゃないカ?」
オーガが自分の得物をとりながら桃太郎に笑いかける。
「・・・そうかもね」
最上級の怪力を誇るオーガと手合わせできるということで、少し心が弾んでいるのは否定できない。
彼女が手に取った武器は長さ、太さともに男の脚ほどもある金棒だった。
それを軽々と片手で持ち上げ、その怪力ぶりを見せる。
みんなに囲まれ、桃太郎とオーガはにらみ合った。
「準備はいいか?」
薊が問いかける。
「はい!」
「イツデモ・・・!」
「それでは・・・構え!」
薊の号令とともに桃太郎は腰の刀に手をかけ、オーガも金棒を持って構えた。
『く・・・ちょっとこれはまずいかも・・・』
オーガの構えを見て桃太郎は選択を誤ったことを悟る。
オーガは金棒を片手で立てるように持ち、身体は半身にしてその金棒に隠れるような構えをしている。
比較的防御に適した構えだ。
『この様子だと、力任せに振り回す・・・なんて戦い方はしないだろうな・・・』
力任せに振り回すのなら、間隙を縫って抜刀術で攻撃することができたのにと桃太郎は腹の中で歯ぎしりする。
「はじめ!」
薊が勝負の開始を合図する。
オーガは動かない。
桃太郎の様子をうかがっている。
『・・・駄目だ、居合は通じない』
桃太郎は抜刀術をあきらめ、すばやく刀を抜いて脇に構えた。
強引に抜刀術で攻撃して防がれてしまったら、桃太郎の刀が傷みかねない。
下手をしたら折れてしまうだろう。
『一方で、こっちはオーガの金棒を防御することなんてできそうにないしなぁ・・・』
防御できないとなると、出る結論はひとつだけ。
『押しの一手・・・か』
金棒は、間合いは広いが懐に入られると弱い。
防御もできないだろう。
スッ・・・
桃太郎は身体を少し前傾させ、突進の構えをとる。
結論が出たらもう迷わない。
ダッ・・・!
桃太郎が駆けだす。
「ふっ!」
オーガが金棒を、肘と手首の力だけで小さく縦に振る。
桃太郎はそれを少し横にずれてかわす。
だがそれで終わりではなかった。
縦に振られた金棒がオーガの恐るべき怪力によって今度は横に振り回された。
『・・・読んでた!』
桃太郎はそれをかがんでかわす。
オーガの怪力ならそれくらいできると考えていたし、この二段攻撃は威武先生や若村長との稽古で脳内にしっかりと叩きこまれている。
ごぅ・・・
桃太郎の髪をかすめて金棒が頭上を通り過ぎていく。
『捕った・・・!』
あと一歩でオーガの懐に潜り込める・・・!
そう思ったその時
「うおおおおお!」
オーガが咆哮を上げ、身体をひねった。
『な・・・まずい!』
嫌な予感がして桃太郎はとっさに突進を止め、後ろに跳んだ。
ぶお・・・
桃太郎がいた空間をオーガの脚が空気ごと薙いでいた。
『蹴りか・・・!』
苦し紛れの一撃ではない。
金棒の弱点を知り、その弱点に対処するために編み出され、修
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