「以上が旅のお話です」
村に帰ってきて、寄り合いで旅の話をした桃太郎はそう言って話を終えました。
「ふむ、そういうことだったのか」
腕組みをして黙って聞いていた威武先生が深く頷きました。
「桃太郎は旅で真実を見、そして・・・大切な仲間にもめぐり合えたようだな」
「はい!」
にっこり笑って桃太郎は視線を自分の背後に転じます。
そこにはワーウルフのラン、ワーキャットのリン、セイレーンのレン、そしてオーガのルンがおとなしく並んで座っていました。
「ご苦労だった、桃太郎。そして戦い以外でもいろんなことを学んだようだな」
今度は若村長が口を開きました。
「はい」
「桃太郎が持ち帰った知識でこの村も発展するだろう。明日の寄り合いでこれからどうするか話し合おう!」
「お〜!」
若村長の言葉に村の若者が声を上げます。
「あの〜・・・」
しかし桃太郎は声を上げず、おずおずと手をあげました。
「どうした、桃太郎?」
「僕はしばらくしたらまた旅に出たいです」
「な・・・またか!?」
「そう言うと思っていたわい」
驚いた声を上げた若村長の横から、春三郎が口を挟みました。
「旅に出るときのお前の目はキラキラしておった。そして帰ってきたときはその輝きは増していた。さぞ楽しい旅だったのじゃろう。もうおぬしは旅の魅力に取り付かれておる。そしておぬしはこの村で納まるような器ではないじゃろう。また外の世界に出て、いろんなことを吸収しておくれ」
「ランさん、リンさん、レンさん、ルンさん」
今度はトメが口を開きました。
「今回の旅では桃太郎の仲間になってくれたそうじゃの・・・礼を言う。これからも桃太郎をどうか支えてやって欲しい」
「はい! ランにお任せを!」
「頑張るにゃん!」
「明るい旅にします!」
「ちからしごとでバッチリはたらくゾ!」
桃太郎の仲間たちは力強く返事をしました。
一月後、桃太郎たちは再び村を出ることになりました。
今度は鬼が島とは逆の方向に進み、ここから遠く離れた大きな市に向かうことになりました。
「では桃太郎や、気をつけて行って来るんじゃぞ」
旅立ちの朝、親の春三郎やトメを初め、村のみんなに見送られて桃太郎は出発することになりました。
「桃太郎や、このきびだんごを持って行きなさい」
トメは前と同じように桃太郎にきびだんごを、それもたくさん渡してくれました。
「わしが渡せるものはこんなものくらい・・・許してくれ」
春三郎は桃太郎と四人に新しい編み笠と白鉢巻をくれました。
「餞別としては少々味気ないが必要なものだろう・・・路銀の足しにするが良い」
威武先生と若村長はお金が詰まった皮袋を渡してくれました。
「みんな・・・ありがとう! 行ってきます!」
桃太郎は深々と頭を下げ、村を出ました。
こうして桃太郎とランとリンとレンとルンの新たな旅が始まりました。
桃太郎たちは旅で得た知識と技術を村に持ち帰りそれをもとに村はどんどん発展していきました。
村が発展したおかげで村人は暮らしが豊かになり、桃太郎たちも帰った時は温かく迎え入れられました。
こうして桃太郎たちは幸せな時を過ごしましたとさ、めでたしめでたし。
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