第八章 桃太郎と鬼

桃太郎と三人は仲良く旅して、とうとう鬼が島に近い村、アカオニたちが暴れたという村にたどり着きました。
あたりはもうすっかり暗くなっています。
「ねぇ、村の真ん中に火が焚かれているけど、火事かな?」
遠いところまで目が効くレンが指差しました。
「・・・多分違うと思う。大きいとは思うけど、焚き火じゃないかな?」
桃太郎が答えます。
とりあえず、桃太郎たちは村に入りました。
「やぁやぁ、ようこそ旅人さんたち! 今日はアカオニさんたちと宴会だぜ!」
「『今日も』だろう! うわっはっはっは!」
村に入ると二人の村人が出迎えてくれました。
二人とも酒臭いです。
「え・・・ええ!?」
桃太郎が驚いた声を上げました。
彼の後ろで三人もひそひそと話し合います。
「アカオニたちと宴会?」
「暴れて村を荒らしているんじゃなかったのかニャ?」
「いや、ご主人様は『そうかもしれないし、違うかもしれない』とは言っていたけど・・・」
「ところでどうだ旅人さん、せっかくここに着たんだ。一緒に飲まねぇか?」
村人が誘ってきたので、桃太郎たちは宴会の輪に入りました。


「おう、良く来たな! ゆっくりしていけよ」
宴会場で上座に座っていたアカオニが豪快に言いました。
レンが火事ではないかといっていた炎は桃太郎の言うとおり、焚き火でした。
「アタイが鬼が島のアカオニたちを束ねている薊(アザミ)だ。とりあえず、まぁ飲めよ!」
「あ、はぁどうも」
桃太郎は勧められるままアザミが差し出した日本酒を飲み干しました。
ランもリンもレンも他のアカオニたちが注いだ酒を飲んでいます。
「ところで、ここにはなんで寄ったんだい?」
空になった杯にあらたに酒を注ぎながら薊が訊ねます。
「え〜っと・・・大陸の僧侶から、この村で暴れていたと聞いて、本当かどうか確かめに来たんだけど・・・」
「かーっ! それかーっ!」
桃太郎の言葉を聞いて困ったように薊は頭を掻きました。
「それはだな・・・おい、ちょっとお前、ちょっとこっちにこい!」
薊が誰かを呼びました。
するとオニの一人がやってきました。
彼女はアカオニではありませんでした。
頭から角が二本生えていて魔物、特にオニの仲間とは分かるのですが、その肌は赤色ではなく緑色でした。
「紹介しよう。イスパニャから来た留学生のオーガだ」
「どウモ、はじめましテ」
少し片言の日本語で緑鬼、西洋名・オーガは言いました。
「ジパングの文化を勉強したいってんでやってきたから、とりあえず宴会をやったんだけど、そのときちぃとばかり飲ませすぎてな・・・」
「あの酒はつらかっタ〜」
オーガは苦笑します。
「そん時に酔っちまったコイツがちょいと暴れちまったんだよな〜」
「やりすぎタ、はんせいしてル」
ペコリとオーガは頭を下げました。
結局のところ、酔いすぎたオーガが暴れたのをたまたま大陸の教団の僧侶が見かけ、過大に解釈して触れ回っていただけのようです。
ちなみに暴れて壊してしまった家や物は責任を持ってきちんと修復したそうです。
「僕たちは誤解したようです、ごめんなさい」
「な〜に、いいってことさね」
桃太郎は薊と握手しました。
オーガとも握手しようとしましたが、オーガはその手を何故かとりません。
「だがおまえ、『おにたいじ』にきたんダロウ?」
「え? いや、でももう退治するとか、争う理由はないし・・・」
「いや〜、せっかくここにきたのになんにもしないでかえるのもつまらないダロウ? アタイとしょうぶしようじゃないカ!」
オーガはニヤリと笑って突然そんなことを言いました。
「お〜、いいぞ〜!」「力くらべだ〜!」「見ものだぞ!」
宴会に参加していた人たちもアカオニたちも盛り上がります。
「ご主人様〜! ご主人様強さを見せ付けてやってくださ〜い!」
「やっちゃえにゃ〜!」
「きゃーっ! 応援するよ〜っ!」
ランもリンもレンもはやし立てました。
その頬はすっかり赤くなっています。
「よぅし! ではアタイが立ち会おう! 相撲で一本勝負だ!」
薊も乗り気になったので、桃太郎はオーガと相撲で勝負することになりました。
みんなに囲まれ、桃太郎とオーガはにらみ合います。
「見合って見合って・・・はっけよ〜い・・・のこった!!」
薊の合図と共に二人はがっぷりと組み合います。
オーガはとても力が強いですが、桃太郎も負けていません。
二人はビクとも動きません。
オーガが桃太郎より六寸ほど高い身長を生かして、上から押さえ込むような形に攻め方を変えました。
ガボッ・・・
桃太郎の両足が地面に埋まりますが、それでも桃太郎の身体はビクともしません。
桃太郎がにぃっと笑いました。
『・・・好機!』
桃太郎がオーガの腰に回していた左手を下にグンと引きます。
「くっ・・・!」
上から体重をかけていたため、たた
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